4. 降雨で被災した盛土での運行再開可否判断手法

 近年頻発する豪雨により鉄道盛土の被災が多発しています。被災後の列車の早期運行再開のため
に徐行を前提として大型土のう等を用いた応急復旧を行う場合がありますが、その具体的な構造の
選定基準がないため、小規模な崩壊であっても大がかりな構造となりがちです。

 そこで、被災盛土や土のうによる応急復旧盛土の列車運行再開時の性能を降雨実験や載荷試験に
より確認し、降雨で盛土が被災した際の、運行再開可否や応急復旧構造をフローにより判断する手
法を提案しました(図1)。本手法では、まず盛土の被災形状(崩壊角、崩壊広さ)に応じてノモグ
ラム(図2)により応急復旧工事を行うことなく運行再開が可能か否かを判断し、続いて復旧が必
要となった場合には選定表(図3)により盛土の応急復旧構造を決定します。これらのノモグラム
や選定表は、被災盛土・応急復旧盛土に対し、安全側(下限値)の条件での安定計算により作成し
たものを用います(図1 青矢印)。一方、現地で簡易な調査・試験等を行うことができ、盛土の強
度や地下水の情報が得られた場合には、その結果に基づくノモグラムや選定表の活用により、一度
不安定となった場合でも応急復旧が不要という判断や復旧構造の簡略化も可能です(図1 赤矢印)。

 本手法により、盛土が降雨で被災した際の応急復旧工事の要否や応急復旧構造を迅速に決定でき
るようになり、早期の運行再開や従来よりも土のうの数量を削減した応急復旧が可能となります。