6. 耐雪ブレーキを用いた車輪温度管理による降雪時のブレーキ特性向上

 降雪時、踏面ブレーキの効きが安定せず駅での停止位置精度が低下する場合があります。この原
因である制輪子の摩擦係数低下の発生条件やメカニズムを把握するため台上試験を実施し、一部の
材質の制輪子について、押付力が小さい場合に車輪温度が高いほど冷水介在時の摩擦係数が増加す
ること(図1)、介在する水に生じる圧力の変化がその原因であることを明らかにしました。

 一方、車輪と制輪子の間に雪が介在してブレーキ力が低下するのを防ぐため、制輪子を車輪に弱
く接触させたまま走行する機能である耐雪ブレーキが装備されていますが、これによる車輪温度へ
の影響は考慮されていません。耐雪ブレーキによって車輪を適度に加熱させることができれば、制
輪子の摩擦係数が増加し、ブレーキ特性の向上が期待できますが、その反面、車輪温度が150 ℃を
超えると、踏面凹摩耗などの悪影響が生じる可能性があります。

 そこで、耐雪ブレーキ使用時の車輪温度をFEM で高精度に推定する手法を開発し、実測により
その精度を確認しました(図2)。このFEM モデルを用いて、車輪に悪影響が生じない適切な車輪
温度を実現する耐雪ブレーキの空気圧を設定することで、制輪子の摩擦係数を増加し、降雪時のブ
レーキ特性を向上できます。