信号機柱の強度評価

1.はじめに

信号機を支持するために用いられるコンクリート信号機柱は、国内では1930年代に開発されて以降、現在まで広く用いられています。1950年代から80年代にかけて行われた信号設備の改良にともなって多数の信号機柱が建植されました。信号機柱の取替には労力を必要とするため、多くが現在も使用されて40年以上の経年のものも多数存在しています。設備更新時期を決める方法として経年に基づく方法がありますが、同一経年の設備がまとまって存在する信号機柱に対して適用することは困難です。この課題を解決するため、コンクリート信号機柱の外観上の状態から強度を評価する手法を開発しました。開発した評価法は、柱のひび割れなどの変状の種類や大きさから推定した残存強度と柱に加わる風荷重の大きさから更新要否を判断します。また、この手法の開発にあたって実施した、製造年がわからない柱の経年推定法についても紹介します。

2.コンクリート信号機柱の変状と強度評価

コンクリート信号機柱は、内部の鉄筋とコンクリートがそれぞれ引っ張りと圧縮に対して強度を持つことで柱全体の強度を確保しています。鉄筋はアルカリ性のコンクリートの内部にあるため、長い間錆びずに健全性を保つといわれています。しかし、塩化物イオンの浸透や物理的な損傷などをきっかけとして、鉄筋が錆びはじめて膨張することにより、柱表面に縦ひび割れなどの変状が認められることがあります。

コンクリート信号柱の強度試験結果から、鉄筋の切断本数や、錆を模擬した断面積が減少した鉄筋の本数の増加により信号機柱の強度が低下することを明らかにしました。外観検査で確認されるコンクリート信号機柱の変状(図1)に対して、更新の要否を判断するためのフロー(図2)と、残存強度を推定するための強度評価の考え方(図3)を開発しました。

本手法は、鉄道事業者がコンクリート信号機柱の検査手順や評価基準を定める際に用いることができます。詳細な強度評価が難しい場合は、変状の種類に注目した更新や補修の優先順位付けのための目安としても用いる事ができます。

3.コンクリート信号機柱の製造年代推定

コンクリート信号機柱は1950年代後半以降に本格的に普及しましたが、製造年代の表記が消失しやすいため経年による管理が困難である課題を有していました。そこで、コンクリート信号機柱の形状や内部の鉄筋本数から大まかな製造年代を推定する手法を開発しました(図4)。本手法は、鉄道事業者がコンクリート信号機柱の経年管理を行う際に用いる事ができます。

参考文献

  1. 潮見俊輔、常本瑞樹、飯島亨、押味良和、大森達也、沼田紘司、以倉慶子:コンクリート信号機柱の強度評価法の開発、鉄道総研報告、第33巻、第7号、pp.47-52、2019.7
  2. 潮見俊輔、常本瑞樹、飯島亨、押味良和、以倉慶子、大森達也、沼田紘司:コンクリート信号機柱の状態から更新時期を評価する、RRR、第76巻、第10号、pp.16-19、2019.10