土井 久代

-先輩職員インタビュー-

「乗り上がり脱線」の現象解明など 走行安全性向上に取り組む

プロフィール
土井 久代
車両力学研究室 主任研究員
平成12年入社

異なる領域、異なる国の研究者とも連携し
車両と軌道の「境界問題」に挑む

車両(車輪)と軌道(レール)との相互作用の観点から、脱線等、車両の走行安全性の評価などを行う研究に携わっています。特に重点的に取り組んでいるのは、車輪とレールの接触点で起こる「境界問題」です。実験棟の実験装置での実物を用いた試験やシミュレーションの構築を通じ、多様な状況下での車両と軌道との相互作用に起因する、乗り上がり脱線現象に関する課題や対策、走行安全性評価の構築などに取り組んでいます。実際の車両、軌道での走行試験も行います。このような研究環境は、鉄道総研ならではの強みと言えるでしょう。

車両と軌道の相互作用には、軌道や車両の構造や、車輪・レール間の問題(例えば、形状や作用力、潤滑状況など)、材料特性など、さまざまなパラメーターが関わってきますので、他の分野の研究室と共同で研究に取り組むケースが多くあります。鉄道総研には鉄道に関わる多くの領域をカバーする多様な研究室があり、かつ、互いの顔が見える規模なので連携がしやすく、チームワークで成果を上げていると言っていいでしょう。また、私が取り組んでいる「境界問題」は、まだまだ研究の余地がたくさんある分野であり、研究を進めていく上では、国境などを越えて幅広く情報交換、情報共有をすることがきわめて重要です。私自身もフランス国鉄などとの海外との共同研究にも取り組んでいます。異なる専門領域の人、異なる国の人と交流し合うことで、新たな視点やアプローチを見出すことができ研究者として成長ができると思いますし、何より、刺激となります。

大学時代の専攻とは異なる分野での研究
やってこられたのはオープンな組織文化のおかげ

今の目標は、さまざまな人と情報交換しながら、車両の走行安全性を的確に評価できる仕組みを洗練させて、多くの鉄道事業者に役立てていただくことです。財政面などで制約のある地方の鉄道事業者にも使ってもらえるような仕組みを作れたらと思っています。

現在、私は車両系の研究室に所属しています。車両系では、工学系、特に、機械系を専攻としてきた人が大勢で、私自身は、学生時代の勉強とはかなり分野の違う領域で研究を行っています。大学での専攻は基礎物理で机上の研究でしたので、実験棟や現場などでヘルメットをかぶって作業をする自分を想像できませんでした。そんな私が研究職として頑張ってこられたのは、周囲のサポートのおかげ、研究室間の垣根が低いオープンな組織文化のおかげだと思っています。職場実習の経験が豊富な、海外からの実習生を研究室で受け入れた際、「日本では随分とコミュニケーションをとって仕事をするのですね」と言われたことがあります。研究室ごとに雰囲気や流儀に異なる部分はありますが、「協力し合って1プラス1を2以上にする」という文化があると思います。ですから、学生の皆さんには、大学の専攻とは多少違う分野であってもがんばれる、とお伝えしたいです。必要なのは、自ら問題点を見つけ、それに向き合う意欲とオープンな姿勢です。そういう姿勢さえあれば、前に進むためのヒントや周囲の人からのサポートは無限にあると思います。

コラム:海外共同研究について

鉄道総研では、海外の大学や研究機関との共同研究を推し進めています。継続的に実施している大きな枠組みとしては、例えば、1995年からのフランス国鉄との共同研究、2000年からの中国鉄道科学研究院と韓国鉄道研究院との3者の共同研究があります。私は、現在、車両と軌道の相互作用に関する走行安全性のテーマでフランス国鉄と共同研究に取り組んでいます。ヨーロッパ各国は走行安全性評価の規格づくりに精力的に取り組んでおり、走行安全性に関するデータの処理や評価の仕方において、学ぶべきことが多くあります。もちろん、日本からも発信すべきこともたくさんあり、情報交換・情報共有することで、共に成果を向上させていきたいと思っています。

昨今は、海外の研究機関との共同研究が多く立ち上がり、海外の組織に出向する研究者も多くなってきました。今後は、分野の差異に関わらず、鉄道技術の研究における“国境”は、さらになくなるでしょう。

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