テルミット溶接を用いたレール頭部補修方法

レール交換を必要とせず、損傷箇所のみを補修できる手段として、テルミット溶接を利用したレール頭部補修方法を開発しました。

1.はじめに

近年、シェリングきず等のレール頭部損傷が増加しており、その効率的な対策が求められています。現状では、損傷箇所を中心に数mのレールを交換することで対処していますが、これには多くの手間とコストを要します。そこで、レール交換を必要とせず、損傷箇所のみを補修できる手段として、現行のテルミット溶接法と同様の手順で施工可能なテルミット頭部補修(THR)溶接法を選定し、JIS60kgレールおよびJIS 50kgNレールへの適用に向けて検討を行いました。

2.施工手順

図1にTHR溶接法の施工手順を示します。まず、頭部損傷箇所をガス切断で切取り、切断面をグラインダー研削した後、浸透探傷検査で残存したき裂がないかを確認します。次に、切取り箇所にモールドを設置し、余熱を実施した後、モールド内にテルミット溶鋼を注入します。溶鋼が凝固した後に余肉を押抜き、頭頂面の硬さを調整するための強制空冷を実施します。最後に、グラインダーで補修部の形状を整え、補修が完了となります。施工手順は切取りと強制空冷を除くと、ゴールドサミット溶接と同様となります。

図1 THR溶接法の施工手順

3.検討事項

溶接材料メーカーが推奨する施工条件では、レールへの溶込みが不十分であること、頭頂面硬度分布が不均一となることなどの問題点が存在したため、予熱条件および注湯方式の適正化、頭頂面硬度分布の改善に取組みました。図2に示すようにモールドのライザーへとつながる穴を広げると共に、予熱条件を変更した結果、予熱温度を十分なレベルまで増加させることが可能となりました。図3に改良した予熱条件による断面マクロ組織を示しますが、当該方法を用いて作製した試験体の断面マクロ組織では、全体的に溶け込み量が増加しているのが分かります。頭頂面硬度分布の改善については、ガス圧接部の後熱処理作業等で使用されている冷却装置によって押し抜き直後に強制空冷を実施しました。図4に強制空冷装置の外観を、図5に強制空冷後の頭頂面ショア硬さ分布を示します。空冷範囲を75mmに絞ることで、溶接金属中心の軟化域のみ硬度が回復することが確認されました。

図2 モールドの改良状況(a 改良前、b 改良後)
図3 改良予熱条件による断面マクロ組織
(a 横断面、b 縦断面(ライザー側15mm位置))
図4 強制空冷装置(a 外観、b 吹出口)
図5 強制空冷による頭頂面ショア硬さ分布の改善

また、レール頭部に対して局所的に熱を加える当工法では、熱収縮に伴いレール頭頂面の落込みが生じるため、鉄道総研構内試験線における施工試験において落ち込み量の評価を行いました。図6(a)に示すように、上げ越しせずに施工を行った溶接部では施工後、落込みが生じました。そこで図6(b)に示すように施工前に0.75mm程度の上げ越し(逆ひずみ量1.5mm)を施して溶接施工を行った結果、仕上り精度の基準値内に収まり、落込みを回避できることを確認しました。

図6 補修部の頭頂面形状
(a 上げ越し無し、b 上げ越し量0.75mm)

参考文献

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