粒子法を用いた津波遡上解析手法の開発
1.はじめに
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、巨大な津波が発生し、鉄道構造物も大きな被害にみまわれました。
この地震による被害は、地震の揺れによる直接的な被害よりも津波による被害の方が深刻でした。
このような背景から、大地震により発生した津波が鉄道構造へ及ぼす影響を解析する手法を開発しました。
2.本解析手法の特長
津波波源から鉄道構造物までを、3段階に分けて大きな解析領域から小さな解析領域に順次に境界条件を渡す3段階のズームアップ解析手法を開発しました。
第1の解析では、計算コストの低い浅水長波モデルを用いて、津波波源から沿岸部までの津波伝播解析を行います。
第2の解析および第3の解析では、3次元の粒子法(MPS法)を用いて、沿岸部に押し寄せた津波が地上へ遡上し、市街地に押し寄せる様子を再現し、流体圧力による鉄道構造物の挙動を評価しました。
3.沿岸部への津波の遡上の様子
動画1に、沿岸部に押し寄せた津波が地上へ遡上する様子(第2の解析の結果)を示します。動画1から気仙沼湾に侵入してきた津波が、鹿折川を最初に遡上していき、それを追うように気仙沼市街地内の構造物の間を縫うようにして津波が遡上していく様子が見てとれます。
動画2に、市街地に押し寄せる様子と駅舎モデルが浸水していく様子(第3の解析の結果)を示します。津波が駅舎モデルに押し寄せてくるにしたがい、ドアや窓などの空いている部分から駅舎モデル内に津波が侵入し、海水に満たされていく様子が確認できます。
このズームアップ解析から求められる津波波圧を用いて、駅舎などの構造物について構造解析を行うことで、鉄道構造物に対する津波波圧による構造健全性評価を行うことが可能になりました。
本研究の一部は、独立行政法人日本学術振興会の科学研究費助成事業の助成を受けて実施しました。
※上記の動画は外部の動画サイトの埋め込みリンクです。
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