7. 貨車状態監視用の無線通信ネットワーク

駅出発前に貨車編成後の手ブレーキの緩解状態を確実に確認することが安全上重要です。現在、その確認は目視によって行われているため、全貨車の確認に時間を要しています。これに対し車両間に無線センサーネットワークを構築して機関車や指令所で状態を確認する方法が考えられますが、貨車の増解結に柔軟に対応でき、かつ隣接する別列車の貨車と区別できる通信手段が必要となります。また、電波環境や他の無線の干渉を考慮する必要もあります。

そこで、車両内の伝送に2.45GHz帯、車両間の伝送に920MHz帯を利用した無線通信ネットワークシステムを提案し、貨車の増解結などに対応できる車両間ネットワークの構成手法を開発しました(図1)。開発した手法では、車両の床下空間を伝搬路として利用し、列車の編成情報と各中継装置間の通信品質を確認しながら自動的に無線通信ネットワークを構成することにより、データを収集します。また、各中継装置の伝送回数を最小限にできる経路を自動的に選択するような手順で伝送することにより、車両間ネットワークにおけるバッテリー消費も抑制しています。

開発したプロトタイプを機関車と貨車に設置して伝搬距離等の確認を行い(図2)、約100mまでは直接伝搬すること、また貨車20両を想定した試験の結果、約6分半でネットワーク構成からデータ収集まで実施できることを確認しました。本システムにより、目視に比べて約半分程度の時間で手ブレーキの状態を運転台で確認でき、かつ不緩解状態の見落しを防ぐことが期待できます。

本システムは貨車以外の鉄道車両にも適用でき、さらに走行中の車両間のデータ伝送にも利用できるため、車両の状態を集約するための伝送手段として活用できます。