第288回 鉄道総研月例発表会

日時 2015年04月15日(水) 13:30〜16:55
場所 ベルサール神保町 3F Room 3+4+5
主題 防災技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:30~13:45
気象災害に対する安全性向上の成果概要と今後の取り組み ※

鉄道総研ではプロジェクト型課題として「気象災害に対する安全性向上」について取り組んできたので、その成果全体について外力、耐力、危険度評価およびハザードマッピングの相互の関係を中心に概要を紹介する。また、平成27年度から取り組む「鉄道の減災技術の高度化」、特に局所的短時間強雨に対する減災技術の開発について、その必要性と方針を紹介する。

発表者
防災技術研究部 部長  太田 岳洋

13:45~14:10
数値シミュレーションを用いた面的な気象情報の取得方法 ※

鉄道沿線に設置されている風速計や雨量計から得られる気象データは「点」のデータである。しかしながら、鉄道の気象災害がこれら観測機器の設置箇所やその付近で発生するとは限らない。また、河川の増水など線路から離れた箇所の雨量が多いために生じる災害もある。そこで、鉄道の気象災害をもたらすような強風や大雨について、風速計や雨量計のデータを補間し鉄道防災に必要な時間・空間スケールでの面的な気象情報を得るためのツールの構築を行った。本発表では、この方法の概要について紹介する。

発表者
防災技術研究部 気象防災研究室 副主任研究員  福原 隆彰

14:10~14:35
地形情報を用いた斜面の降雨時危険性の評価手法 ※

鉄道沿線では、降雨により切土や自然斜面表層の崩壊、土石流、盛土崩壊など様々な斜面崩壊が発生することがある。こうした斜面崩壊には斜面表層や表層土内における水の移動現象に大きく依存する。そこで、地形情報を用いて鉄道沿線の比較的広範囲の斜面における三次元的な地形の起伏を考慮し、簡易な計算方法により斜面における水の移動現象を予測したうえで斜面の危険性を評価する方法を構築した。本発表では、この方法の概要について紹介する。

発表者
防災技術研究部 地盤防災研究室 主任研究員  布川 修

14:35~15:00
災害ハザードマッピング技術の開発 ※

鉄道沿線での気象災害等(土砂災害、強風災害、雪崩災害、落石災害)を対象としたハザードマッピング技術を開発した。本手法によって異なる気象災害等に関する素因、外力、危険度を同一のプラットフォーム上で統一的に表示することが可能となり、防災計画策定に資することが期待される。本発表では、本手法に用いるデータおよび入出力データ間の関係、危険度評価方法の概要、表示例について紹介する。

発表者
防災技術研究部 地質研究室 副主任研究員  浦越 拓野

15:00~15:15
休 憩

15:15~15:40
遠隔非接触計測による岩塊の形状と支持状態の推定

落石となる可能性がある斜面上の不安定な岩盤ブロックの崩落危険度を、遠隔非接触計測によって評価する手法を検討している。ブロック模型実験で得た基礎的な知見を数値解析検討で深度化して岩塊の崩落危険度評価指標を改良し、非接触測定で得た岩塊の卓越周波数から崩落危険度を推定可能にした。また、ステレオカメラ搭載ラジコン模型ヘリで岩塊の形状データを取得して3次元FEM解析モデル化するシステムを開発し、岩塊の支持状態や地震動の影響などをより詳細に分析する手法を提案した。本発表ではそれらの概要について紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 構造力学研究室 室長  上半 文昭

15:40~16:05
変状した石積み壁およびモルタル吹付工の補強工法

はらみ出しが発生した石積み壁の対策工として形鋼と鉄筋を組み合わせた簡易な補強工法を考案し、模型実験によりその効果を確認した。実験の結果、想定する土圧以下では、提案した補強工は高い変位抑制効果を発揮することを確認した。また、亀裂などの変状が生じたモルタル吹付工の対策として繊維補強モルタル吹付工と地山補強土工法を組み合わせた補修・補強工法を考案し、その効果を遠心模型実験で確認した。実験の結果、従来工法より少ない施工数量で補強が可能となることを明らかにした。本発表ではそれらの概要について紹介する。

発表者
防災技術研究部 地盤防災研究室 副主任研究員  高柳 剛

16:05~16:30
地吹雪を考慮した降雪分布の推定手法

線路沿線の積雪状況を把握するために、気象数値シミュレーションモデル(WRF)の出力値やレーダアメダス解析雨量などを入力値とし、気流モデルから求めた地上付近の風向風速分布を用いて地上に降った雪の移動(地吹雪)を考慮した降雪分布を推定する手法の開発に取り組んでいる。また、種々の数値モデルを用いて鉄道沿線の積雪や融雪状況を推定するための研究に取り組んでいる。本発表ではこれらの研究の概要について紹介する。

発表者
防災技術研究部 気象防災研究室 副主任研究員  宍戸 真也

16:30~16:55
早期地震警報のための地震諸元推定とノイズ識別の性能向上 ※

地震発生時において、検知した地震の位置と規模を早く正しく推定することを目的として、鉄道の地震防災システムなどに導入されている地震諸元推定アルゴリズムの改良を行った。また、鉄道沿線に設置される地震計に関し、列車走行に伴う振動により不要な地震諸元推定を行うことが無いように、それらの識別性能を高めるアルゴリズムを検討した。本発表では、新しく開発した手法は地震諸元推定において従来よりも精度が高く即時性に優れ、列車振動の識別性能も優位であることが確認されたので紹介する。

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震解析研究室 主任研究員  岩田 直泰

司会:川越 健 (防災技術研究部 地質研究室 室長)

都合により、プログラムを変更することがあります。

※第289回月例発表会(2015年5月22日大阪開催)で同じ内容の発表を行う予定です。