第295回 鉄道総研月例発表会

日時 2015年12月16日(水) 13:30〜16:55
場所 ベルサール神保町 3F Room 3+4+5
主題 車両技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:30~13:45
車両技術に関する最近の研究開発

平成27年度、鉄道総研では300件程度の研究開発テーマを実施している。これらのうち、車両に関するものは概ね50件あり、列車の速達化や車内快適性の向上に資する実用的な課題から、車輪/レールの接触問題のような基礎研究課題が幅広く含まれている。ここでは、車両分野において昨年度まで実施した研究開発テーマで得られた成果の中から、「輪重減少を抑制する台車」、「踏切衝突事故における乗客被害を軽減する車体の安全性評価手法」、「小型で低コストな車体傾斜車両用空気圧式センタリングシリンダー」などについて紹介する。

発表者
車両構造技術研究部 部長  早勢 剛

13:45~14:10
横風による輪重・横圧変化が乗り上がり脱線に及ぼす影響

急曲線を走行中の車両に外軌側から横風が作用すると、外軌側の輪重が減少することにより脱線係数が増加する可能性が考えられるが、このとき同時に外軌側の横圧も減少する可能性があるため、乗り上がり脱線に及ぼす影響を一概に評価することはできない。そこで、横風が乗り上がり脱線に及ぼす影響を検討するために、実車および縮尺1/10車両模型を用いた横風下走行試験を実施したので、それらの結果について報告する。

発表者
車両構造技術研究部 車両運動研究室 室長  日比野 有

14:10~14:35
機械式空気圧操舵システムの開発

曲線走行中の車体-台車間の幾何学的な相対運動から機械的にボギー角を検出する機構および空気圧制御バルブによって操舵アクチュエータを制御する”機械式空気圧操舵システム”を開発した。本システムによって、R160(m)の円曲線中で80%以上の定常横圧低減効果が得られた。また、システムの総合的な性能評価として、逆操舵防止機能、フランジきしり音の抑制、走行抵抗の軽減、車輪摩耗量の低減に関して性能評価を実施したので、その結果について報告する。

発表者
車両構造技術研究部 車両振動研究室 主任研究員(上級)  鴨下 庄吾

14:35~15:00
一本リンク牽引力を用いたブレーキ性能の評価手法

鉄道車両は雨天時のレール湿潤条件下において、車輪・制輪子間の摩擦係数やレール・車輪間の粘着係数が低下し、ブレーキ性能が低下することがある。その性能は速度を演算して得られる停止距離や減速度で評価するが、性能低下の要因には摩擦係数や粘着係数が複雑に影響するため、速度から要因を特定することは困難である。そこで、台車牽引装置である一本リンクに働く力を用いてブレーキ力を測定する手法を開発し、現車でその有効性を確認したので、それらの結果について報告する。

発表者
車両制御技術研究部 ブレーキ制御研究室 主任研究員  嵯峨 信一

15:00~15:15
休 憩 (※1)

15:15~15:40
インバータとモータの組み合わせ試験による直達ノイズ確認手法

現車試験でしか実施できない直達ノイズ試験で、モータケーブルと信号地上子との関係を定量的にモデル化し、組み合わせ試験、現車試験において有効であることを確認した。このモデルを用いて、直達ノイズの事前確認試験手法を構築した。この事前確認試験手法はインバータとモータの組み合わせ試験時に容易に実施可能であり、現車で実施する誘導障害試験の期間を短縮させることが期待できる。 これらの結果について報告する。

発表者
車両制御技術研究部 駆動制御研究室 主任研究員  廿日出 悟

15:40~16:05
振動のオクターブバンド分析を用いた駆動用機器の状態監視手法

気動車のディーゼル機関等の機器は、走行状態に応じて運転状態が複雑に変化することに加え、走行に伴う振動も発生するため、単純に振動の大きさで異常検知を行うことが難しい。そこで、鉄道総研では振動のオクターブバンド分析を用いることで、複雑な振動の変化にも対応できる状態監視手法を提案し、その有効性について現車試験で検証を行った。本発表ではその結果と状態監視結果の診断方法について発表する。

発表者
車両制御技術研究部 動力システム研究室 主任研究員  近藤 稔

16:05~16:30
樹脂製窓ガラスの黄変挙動と劣化評価への応用

近年、鉄道車両の軽量化、破損の防止等を目的として樹脂ガラスの鉄道車両への適用が拡大しているが、樹脂ガラスには有効な劣化評価方法が示されていない。そこで、新幹線用の窓ガラスとしても使用実績のあるポリカーボネート樹脂(PC)を主な対象として耐候性条件下における劣化変化を測定した。測定結果を通じて、劣化評価指標として黄色度の変化に着目し、樹脂ガラスへの黄色度測定の適用性について検討した結果について報告する。

発表者
材料技術研究部 防振材料研究室 研究員  山中 翔

16:30~16:55
アンチローリング装置を活用した車体傾斜機構の開発

振子車両よりもシンプルな構造で、空気ばね車体傾斜車両よりも大きな傾斜角度を実現する車体傾斜機構として、アンチローリング装置に電動式ロータリーアクチュエータを組み合わせた機構を考案した。試作した傾斜機構を用いて定置傾斜試験を行い、目標傾斜角への高い追従性能を持つことを実証した。さらに、車体重心位置のずれの影響や制御フェール時の挙動を考慮の上、車体支持装置のシステム構成を構築した。これらの結果について報告する。

発表者
車両構造技術研究部 走り装置研究室 主任研究員  風戸 昭人

司会:長谷川 均 (車両制御技術研究部 水素・エネルギー研究室 室長)

都合により、プログラムを変更することがあります。

※1 休憩時間中に、3の発表に関連する「操舵システム」、4の発表に関連する「一本リンク」を展示します。