第297回 鉄道総研月例発表会

日時 2016年02月17日(水) 13:30〜16:55
場所 ベルサール神保町 3F Room 3+4+5
主題 人間科学に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:30~13:45
人間科学分野における最近の研究開発

鉄道総研では、鉄道システムに関わる人の視点から安全で、便利で、快適な鉄道を考えるヒューマンファクター研究を行っている。最近では鉄道従業員に関する研究としてヒューマンエラー防止や異常時対応教育、事故の聞き取り調査手法、運転台設計支援などに取り組んでいる。また、利用者に関する研究として車内の温熱環境評価や旅客設備の臭気解明など快適性向上や列車衝撃時の乗客挙動シミュレーション解析などに取り組んでおり、その概要を報告する。

発表者
人間科学研究部 部長  小美濃 幸司

13:45~14:10
安全報告の促進要因とその活用手法

運転士からの自主的な報告は安全に関する重要な情報源である。本研究では自らの過失について自主的に報告した事例(安全報告)の実態を把握し、安全報告を促進している個人要因を抽出した。得られた結果をヒアリング、web調査、心理実験を実施して妥当性を検証した結果、他者への共感性や職業的自尊心などの促進要因が明らかになった。さらに安全報告を行う意識を向上させる教育訓練用教材を作成し、その活用手法を提案したので報告する。

発表者
人間科学研究部 安全心理研究室 副主任研究員  北村 康宏

14:10~14:35
エラー防止策の有効性評価

鉄道現場では、ヒューマンエラーを防ぐための対策が数多く行われている。本研究の目的は、それらのエラー防止策について実験的に検討し、そのエラー防止効果を検証したり、より有効な使用方を提案したりするための基礎データを提供することである。まず、現場独自の対策を調査し、その中からダブルチェック、マニュアル、安全パトロールを取り上げた。そして、それらの効果を検証するための実験手法を考案し、エラー防止策の有効性評価を行ったので、その検証手法と結果について紹介する。

発表者
人間科学研究部 安全心理研究室 副主任研究員  佐藤 文紀

14:35~15:00
鹿接触事故の実態把握と対策の評価

鹿衝撃事故対策の検討に先立ち、実態の把握と既存対策の効果検証を実施した。衝撃事故発生頻度は路線全体で均一ではなく多発する場所が存在していた。列車より沿線の鹿の行動を観察し、事故に関連する鹿の行動を絞り込んだ。既存対策の効果検証では、柵の事故防止効果、余裕時分による列車遅延の抑制効果を確認した。また、鹿警戒声や警笛音が衝撃事故防止に利用できる可能性を示したので報告する。

発表者
人間科学研究部 生物工学研究室 主任研究員  志村 稔

15:00~15:15
休 憩

15:15~15:40
旅客心理を踏まえた輸送障害時の情報提供手法

鉄道の輸送障害は年々増加傾向にあり、鉄道事業者は輸送障害に遭遇した利用者の不安や不満を低減するためにさまざまな対策を進めている。その一つに駅係員や車掌の案内放送があり、輸送障害に遭遇した旅客の多くは案内放送で得られる情報を信頼している。そこで、駅係員や車掌が旅客心理を理解し、基本を踏まえた上で臨機応変な情報提供を実現するために提案した案内方針の概要とその方針を反映した情報提供手法を紹介する。

発表者
人間科学研究部 人間工学研究室 副主任研究員  菊地 史倫

15:40~16:05
振り返り支援システムを用いた運転シミュレータ訓練手法

鉄道の運転士は様々な異常時に的確に対応することが求められている。鉄道総研では、この対応力の向上を支援するために、シミュレータ運転中に撮影された自らの映像を見ながら異常時の対応を振り返るシステム(振り返り支援システム)を開発してきた。このシステムを鉄道事業者が導入する際に、映像を効果的に活用し、異常時の対応で注意するべき点やその理由等を的確に指導できるよう「指導ポイント集」を作成したので、その効果について紹介する。

発表者
人間科学研究部 人間工学研究室 副主任研究員  鈴木 大輔

16:05~16:30
指令業務におけるリスクコミュニケーション訓練手法

指令業務では、異常時に列車の運転状況を管理する担当者や、乗務員や車両の運用を手配する担当者が相互にコミュニケーションを通して、正確かつ円滑に情報を共有することが重要である。そこで、現場で容易に実施可能なコミュニケーション技術習得のための訓練手法を開発した。また、本訓練を受けることにより、コミュニケーション技術の重要性の認識が向上し、ふだんの業務における実行度も向上することを確認した。本発表では、開発した手法とその有効性の検証結果について紹介する。

発表者
人間科学研究部 安全性解析研究室 副主任研究員  畠山 直

16:30~16:55
事故の背景要因に対する聞き取り調査手法

事故やトラブルの防止には、関係者の行動や発生状況等の十分な情報収集が必要であるため、現場では事象の関係者を対象に聞き取り調査を実施しているが、従来は標準となる手法がなく、情報不足により調査や報告の手戻りが発生しやすくなっていた。そこで、事故の背景要因に関する情報を収集するための聞き取り調査手法と手法の導入を支援するための教育プログラムを開発した。本発表では、開発した手法とその有効性の検証結果について紹介する。

発表者
人間科学研究部 安全性解析研究室 室長  宮地 由芽子

司会:池畑 政輝 (人間科学研究部 生物工学研究室 室長)

都合により、プログラムを変更することがあります。