第304回 鉄道総研月例発表会

日時 2016年10月28日(金) 13:30〜16:40
場所 日本工業倶楽部 大会堂
主題 防災技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:30~13:45
防災技術に関する最近の主な研究開発

気候変動による短時間強雨の増加や近年の地震活動の活発化、あるいは地震活動との関連性が議論されている火山噴火の頻発など、我国を取り巻く災害事象は益々深刻化する様相を呈している。このような状況の下、列車の安全かつ安定した輸送を維持するために、鉄道総研では防災・減災技術の研究開発に取り組んでいる。本発表では、防災に関する最近の技術開発の動向を紹介するとともに、これからの研究開発の方向性について解説する。

発表者
防災技術研究部 部長  太田 直之

13:45~14:05
規制用風速計の適正配置に資する風速値の代表性の評価

規制用風速計は、鉄道沿線の強風箇所に設置されている。一方で、風そのものの空間的なばらつきや地形、市街地化などの条件の違いによって規制区間内で一様に強風が吹くとは限らず、同区間を代表する強風箇所を客観的に抽出するのは容易ではない。本研究では、規制用風速計の適正配置の検討に資することを目的として、平坦地形かつ市街地化の程度が低い10kmの直線区間での強風観測により、1点の風速計で得られる風速値がもつ空間的な代表性を評価した。本発表では、これらの成果を紹介する。

発表者
防災技術研究部 気象防災研究室 主任研究員  荒木 啓司

14:05~14:25
アメダスデータを用いた積雪性状モデルの開発

融雪量が増加する春先には全層雪崩等の融雪災害が発生しやすくなる。鉄道沿線におけるこのような災害の危険度の逐次評価を行うためには、融雪量や積雪性状を気象データから推定することが望ましい。そこで、気象・融雪量観測結果に基づき、気象庁アメダス等から容易に入手できる気象4要素(気温、降水量、風速、日照時間)のみを入力値として、1時間ごとの融雪量、積雪各層の密度、積雪深を推定できる積雪性状モデルを作成し、概ね観測値を再現できることを確認した。本発表では、これらの成果を紹介する。

発表者
防災技術研究部 気象防災研究室 研究員  佐藤 亮太

14:25~14:45
融雪期の土砂災害を対象とした斜面不安定性評価手法の開発

積雪地域では融雪水を誘因として斜面崩壊が発生することがある。このような斜面災害は水の地盤内への浸透により斜面が不安定化して生じるものと考えられるが、①融雪水の発生量の把握が困難である、②融雪量の様に長期にわたって少量の水が浸透する場合における斜面の不安定性評価手法が定められていない、③融雪災害の弱点箇所の抽出条件が不明であるといった課題がある。本発表では上記の課題解決を目的として実施した研究の成果、および研究成果を踏まえた融雪期の適切な斜面管理手法を紹介する。

発表者
防災技術研究部 地盤防災研究室 副主任研究員  高柳 剛

14:45~15:05
地震動が作用した盛土の降雨耐力低減メカニズム

大規模地震が発生した後には、地震動による盛土などの土構造物の降雨耐力の低下を考慮して、経験的に降雨時の運転規制(列車の徐行または運転の中止等)の雨量規制値を一時的に低く設定することがある。より合理的な運転規制値の設定を行うためには、地震動が作用した土構造物の降雨耐力を解明することが必要となるが、こうした研究は少ない。本発表では、地震動が作用した盛土の降雨耐力低減メカニズムを明らかにすることを目的として実施した実験の概要と結果を紹介する。

発表者
防災技術研究部 地盤防災研究室 室長  布川 修

15:05~15:20
休 憩

15:20~15:40
数値標高モデルを用いた落石ハザードマップ作成手法

落石は降雨等の外力との因果関係が不明瞭であり、その発生を予測することが難しい事象である。落石災害を未然に防ぐためには、落石の発生源と発生危険度を把握し、岩塊の落下経路や線路への到達有無を推定し、必要に応じて対策を講じる必要がある。本発表では落石の評価を行う際に有用な、数値標高モデルを用いて落石の発生源となる露岩を抽出する手法と、抽出した露岩から落石が発生した場合の落下経路および落石の到達確率を自動的に評価する手法について紹介する。

発表者
防災技術研究部 地質研究室 主任研究員  長谷川 淳

15:40~16:00
被災事例に基づく火山噴火が鉄道に与える影響の想定

近年、火山災害やそれに対する備えについて着目され始めている。火山噴火は多様な現象を伴うため、火山噴火が鉄道に与える影響も多岐にわたると予想される。しかしこれらの影響について体系的には整理されていない。そこで本研究では、火山噴火による鉄道の被災事例およびその他の社会基盤の被災事例を調査・分析し、それをもとに火山噴火に伴う諸現象が鉄道に与える影響を想定した。本発表ではそれらの結果を紹介する。

発表者
防災技術研究部 地質研究室 研究員  西金 佑一郎

16:00~16:20
津波伝播特性を利用した早期津波予測手法の開発

海域で発生した地震直後に地震と津波の予測を行うことを目的に、日本海溝海底地震津波観測網が東日本の太平洋沖で整備されている。今後、海域で津波が地震発生直後に観測されるため、震源域やマグニチュードに対応した海底面変位に還元せず、海域の津波データを利用した沿岸の津波水位の直接的な予測手法の開発が期待される。そこで、海域での津波入射波形と海底地形による津波伝播特性を利用する沿岸での津波水位波形の早期予測手法を開発した。本発表では手法の検証結果を含めて紹介する。

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震解析研究室 副主任研究員  津野 靖士

16:20~16:40
遠隔非接触測定技術の岩盤斜面・構造物検査への応用

自然災害等による構造物被害の早期把握には、作業の安全を確保した上での検査の迅速化、高精度化が望まれている。そこで、遠隔位置から効率的に構造物を調査する非接触測定技術の開発に取り組んだ。構造物外観についてはステレオ空撮測量技術、構造物に付着走行できる検査用無人航空機を開発した。また、構造物の力学的な状態を把握するために、レーザーによる非接触振動計測の長距離化と計測システムの開発を行った。本発表では、開発の概要と岩盤斜面および構造物の検査に適用した結果を紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 構造力学研究室 室長  上半 文昭

司会:川越 健 (防災技術研究部 地質研究室 室長)

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