第305回 鉄道総研月例発表会

日時 2016年12月22日(木) 13:15〜16:55
場所 大阪 毎日新聞ビル オーバルホール
主題 信号・情報通信技術に関する最近の研究開発/構造物の性能照査技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:15~13:30
信号・情報通信技術に関する最近の研究開発 ※1

鉄道総研では平成27年度からスタートした、5年間の基本計画RESEARCH 2020に合せて、鉄道の将来に向けた研究開発を推進している。この内、信号・情報通信技術に関しては、情報ネットワークを活用して、列車の運行管理と信号(列車制御)システムが緊密に連携し、列車運行や旅客流動の状況に応じた柔軟な列車運行を実現する手法の開発に取り組んでいる。本発表では、このような列車運行システムの概要、研究開発の状況を中心として、鉄道におけるICT活用に関する研究開発の方向性について紹介する。

発表者
信号・情報技術研究部 部長  平栗 滋人

13:30~13:55
特殊信号発光機の見通し検査システム ※1

特殊信号発光機は、通常時は滅灯している設備であり、その視認性の検査の際には実際に発光させる必要があるため、列車運行に影響を与えることから夜間に検査をしており、人的・時間的コストが大きい。この解決策として、人間には見えない近赤外線という光を用いて、さらにその近赤外線を撮影できる特殊カメラを用いて画像認識することで、列車運行に支障せず、かつ効率的に検査を行える新しい視認性確認システムを開発した。本発表では、システムの概要と性能評価試験結果について紹介する。

発表者
信号・情報技術研究部 信号システム研究室 副主任研究員  長峯 望

13:55~14:20
データ伝送帯域まで対応する電磁誘導予測シミュレータの開発 ※1

鉄道沿線に敷設されるメタリック通信線には、き電電圧やき電電流により、誘導電圧や誘導電流が発生し、これらの誘導現象による感電や通信品質の劣化を防ぐための対策は、誘導予測計算の結果に基づいて実施している。しかし、従来の誘導予測計算の手法では、音声周波数帯域しか扱えず、また、ケーブル構造や土木構造物中の鉄筋等の影響は、ごく簡単なモデルでしか考慮できなかった。そこで、音声帯域以上の周波数に対応でき、かつ多数の導体を考慮できる誘導予測シミュレータを開発したので、紹介する。

発表者
信号・情報技術研究部 ネットワーク・通信研究室 主任研究員  竹内 恵一

14:20~14:45
駅および駅周辺の魅力を考慮した乗降客数推計手法 ※1

大都市圏で行われている駅構内の商業施設整備や駅周辺の再開発は駅の魅力や乗降客数に変化を及ぼすと考えられる。そこで、駅構内・駅周辺の商業・利便施設の充実度、バリアフリー設備の整備状況、列車本数など様々な要因のうち、駅の魅力に影響を与えている要因を抽出し、魅力度を算出する手法を構築したので紹介する。また、駅周辺の居住者数・就業者数・土地利用・バス乗り場などの交通施設の有無と、駅の乗降客数との関係を分析し、駅の魅力度と組み合わせた乗降客数推計手法を構築したので紹介する。

発表者
信号・情報技術研究部 交通計画研究室 副主任研究員  尾崎 尚也

14:45~15:10
速度規制時における運転整理手法 ※1

鉄道沿線において、大雨や強風が定められた値を超過すると、特定区間に対し列車速度が規制されることがある。速度規制が発動すると、一般的に規制の区間を通過する列車が大幅に減速するため、ダイヤ乱れが発生する。現状では、指令員の判断で必要に応じて運休、順序変更等の運転整理が行われているが、ダイヤ乱れが想定以上に大きくなることも珍しくない。そこで本研究では、速度規制時において、特に運休決定および車両運用変更についての意思決定支援を想定した運転整理手法を開発したので紹介する。

発表者
信号・情報技術研究部 運転システム研究室 副主任研究員  加藤 怜

15:10~15:25
休 憩

15:25~15:35
構造物の性能照査技術に関する最近の研究開発 ※2

鉄道に関する技術上の基準を定める省令が性能規定型に改正されたことに伴い、鉄道構造物等設計標準の性能照査型設計法への移行が順次進められてきたが、現在改訂中のトンネル設計標準で一巡する見通しとなった。これらの移行に対応するため、種々の構造物の性能照査技術が開発され、新設の設計だけでなく既設の診断にも活用されている。ここでは、このような構造物の性能照査技術に関する研究開発の中から最近の話題を紹介する。

発表者
構造物技術研究部 部長  部 長 谷村 幸裕

15:35~15:55
コンクリート梁のせん断耐力算定方法 ※2

鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)棒部材や鉄筋コンクリート(RC)棒部材のせん断耐荷力は、部材の諸元や支持条件に依存して異なることが知られている。本発表では、RC梁やSRC梁の耐荷力を簡易に評価可能なマクロ式に関するこれまでの経緯や、関連する最近の実験的検討および解析的検討について紹介する。

発表者
構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 主任研究員  渡辺 健

15:55~16:15
壁式RC橋脚の杭基礎フーチングのせん断耐力評価手法 ※2

橋梁の杭基礎フーチングの部材諸元は、地震時のせん断力の照査から設定される。フーチングのせん断耐力は、地震時にフーチングが下側引張となる場合には直接支持、上側引張となる場合には間接支持として評価される。既往研究では、間接支持のせん断耐力、直接支持のせん断スパン比が小さいせん断耐力は十分に検討されていない。本研究では、壁式RC橋脚を対象とし、支持条件に応じた杭基礎フーチングのせん断耐力評価手法を作成したのでその結果を紹介する。

発表者
構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 副主任研究員  轟 俊太朗

16:15~16:35
地盤調査の信頼性向上を考慮した杭の設計鉛直支持力の算定方法 ※2

平成24年に改訂された基礎標準では、信頼性設計法に基づく杭の設計鉛直支持力算定方法が示され、例えば載荷試験を行って信頼性を高めた場合には設計鉛直支持力を引き上げられることが示されている。しかしながら、ボーリング間隔を密にするといった地盤調査の信頼性向上効果を実務上で効率的に反映させる方法は未提案であった。本発表では、このような地盤調査の信頼施工向上効果を反映させた杭の設計鉛直支持力算定方法を紹介する。

発表者
構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 主任研究員  西岡 英俊

16:35~16:55
地盤の非線形性を考慮した表層地盤の簡易な地震時挙動評価手法 ※2

鉄道構造物等設計標準において分類されるG6、G7地盤は、地震時の非線形化が顕著なため地盤の固有周期Tgのみによる地盤種別の判別が難しく、標準設計応答スペクトルが示されていない。そこで、地盤全体の強度を示す指標Kfを用いて地盤種別を細分類化することによる設計応答スペクトルの設定手法と、地盤のインピーダンス比を考慮したモード解析による地盤変位算定法を構築し、地盤の動的解析と同等の精度で表層地盤の非線形性を考慮した地震時挙動を簡易に評価可能としたので報告する。

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震動力学研究室 主任研究員  井澤 淳

司会:岩田 浩司(信号・情報技術研究部 列車制御研究室 室長)
     岡本 大 (構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 室長)

都合により、プログラムを変更することがあります。

※1 第301回月例発表会(7月25日東京開催)と同じ内容の発表です。
※2 第303回月例発表会(9月28日東京開催)と同じ内容の発表です。