第307回 鉄道総研月例発表会

日時 2017年02月13日(月) 13:30〜16:40
場所 日本工業倶楽部 大ホール(3F)
主題 鉄道力学に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:30~13:40
鉄道力学に関する最近の研究開発

鉄道は、車両、軌道、構造物、電車線などの複数のサブシステムからなる巨大なシステムである。そのため、車輪とレール、架線とパンタグラフ、車両と構造物など、サブシステム間の境界領域におけるダイナミクスは、鉄道システム全体の安全性に大きな影響を与える。本発表では、こうした境界領域におけるダイナミクスの現象理解ならびに問題点改善に関わる最近の鉄道総研の研究開発状況について紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 部長  池田 充

13:40~13:55
鉄道試験線を用いた脱線しにくい台車の走行試験

輪重減少抑制台車に横圧低減策を導入することで、輪重減少の抑制と横圧の低減の両面から乗り上がり脱線に対する安全性の向上を図る「脱線しにくい台車」の開発に取り組んでいる。本開発の一環として、横圧低減策をアシスト操舵システムにより構成した「脱線しにくい台車」の安全性向上効果の確認を目的に、MIHARA試験センターにおいて走行試験を実施した。本発表では、走行試験の概要と試験結果について紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 車両力学研究室 主任研究員  鈴木 貢

13:55~14:10
レール小返りおよび軌道面のロール振動に伴うレールの傾きを考慮した車両挙動解析

従来、鉄道総研開発の車両運動シミュレータ(VDS)では、レール小返りをレールの左右並進変位で表現し、軌道面のロール振動を左右レールの上下逆相の並進振動で表現してきた。本研究では、さらなる解析精度向上のため、レール小返りや軌道面のロール振動に伴うレールの傾きを考慮した車両運動解析法を提案し、曲線通過時の車両挙動解析および地震時走行安全性解析に及ぼす影響について紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 車両力学研究室 主任研究員  飯田 浩平

14:10~14:25
舟体・舟支え部の形状改良によるパンタグラフの空力音低減

パンタグラフの空力音低減において、主要な音源となっている舟体・舟支え部からの空力音を低減することは重要な課題となっている。当該部位からの空力音低減には、舟体断面形状の平滑化だけでなく、舟体と舟支えの位置関係の改良も重要であることが知られている。本発表では、舟体断面形状を平滑化した場合の舟体と舟支え部の適切な位置関係について、流速分布測定と空力音測定の両面から検討を行った結果を報告する。

発表者
鉄道力学研究部 集電力学研究室 副主任研究員  光用 剛

14:25~14:40
休 憩

14:40~14:55
アクティブパンタグラフと集電系ハイブリッドシミュレーション手法

架線・パンタグラフ間の接触力変動低減を目的としたパンタグラフのアクティブ制御手法を開発した。また、架線運動シミュレーションと実機パンタグラフを組み合わせたハイブリッドシミュレーションシステムを開発し、架線の接触状態を模擬した条件下におけるアクティブ制御パンタグラフの性能評価試験を実施した。本発表では、アクティブ制御パンタグラフおよびハイブリッドシミュレーションシステムそれぞれの制御手法の概略と試験結果について紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 集電力学研究室 主任研究員  山下 義隆

14:55~15:10
構造最適化技術を活用した車両構体開発

車両の高性能化に伴い、構体の軽量化、高剛性・高強度化などの要望がある。しかし、これまでの骨組み構造では、構体構造を改善することが困難と考えられる。そこで、従来の車両構体構造から脱却し、新たな構体構造の提案を行うため、構造最適化技術を適用した検討を行っている。ここでは、構造最適化手法の概略の説明と本手法による従来構体構造と比較し軽量化、高剛性化された構体構造の開発状況についてご紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 計算力学研究室 室長 高垣 昌和

15:10~15:25
車輪・レール転がり接触シミュレータによる実用的な解析事例

車輪フラットやレールの波状摩耗、バラストの沈下など車輪・レール間の衝撃荷重に起因する劣化現象の発生メカニズム解明に向け、車輪・レール間転がり接触解析プログラムの開発を進めてきた。複数車輪化による左右動の再現、車両運動シミュレータとの連成による車体慣性力の考慮が可能となった。本発表では、開発した車輪・レール転がり接触シミュレータを用いた実用的な解析事例を紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 計算力学研究室 副主任研究員  林 雅江

15:25~15:40
粘着力に対する落葉の影響調査

山間線区の勾配区間では、秋季の落葉による車輪の空転・滑走が発生し、列車の定時運行に支障をもたらしている。対策法として車上から増粘着材を噴射しているが、さらに改善が求められている。増粘着対策の実用に資する知見を得るため、落葉による粘着力の低下メカニズムを解明する必要がある。本報告では、落葉条件下の室内基礎試験および構内車両走行試験による粘着挙動の調査結果を示し、粘着力の低下要因に関する考察結果を紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 軌道力学研究室 室長  陳 樺

15:40~15:55
休 憩

15:55~16:10
カント区間の道床沈下の非対称性に関する解析的検討

カント区間のバラスト軌道では、まくらぎの片側端部が浮きまくらぎ状態となる現象が確認されている。この現象において、在来線区間では内軌側が、新幹線区間では外軌側が沈下し易い傾向が確認されている。これらのカント区間の道床沈下の非対称性は、レール下の道床厚さの差異や路盤剛性、列車荷重の作用方向や軸重が複雑に影響し合っていると考えられている。そこで本研究では、道床沈下・流動の再現に適した離散体バラスト軌道モデルを用いて、上記の現象の影響要因について解析的検討を行ったので、紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 軌道力学研究室 主任研究員  河野 昭子

16:10~16:25
マルチボディダイナミクスを用いた走行車両と軌道、構造物等の 接触解析法の構築

大規模地震発生時に走行車両が脱線し、ギアケースや車体といった車両の一部が、軌道や構造物等の地上設備に接触することが考えられるが、これまでその影響については十分な検討が行われていない.本研究では、上記の影響を考慮した地震時車両挙動を表現可能な解析手法の確立を目的とし、走行車両と軌道、構造物間での動的相互作用力を効率良く解析可能な接触評価手法を構築した.本発表では、これらの成果を紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 構造力学研究室 副主任研究員  後藤 恵一

16:25~16:40
鉄道橋検査を目的とした遠隔非接触振動測定技術

鉄道総研が開発した非接触振動測定システム「Uドップラー」を用いて、長大橋りょうや連続する高架橋群ならびに電車線柱や防音壁等付帯構造の健全性を効率的かつ定量的に評価する手法の開発に取り組んでいる。本発表では、不可視光レーザを用いた長距離型Uドップラーによる斜張橋のケーブル軸力推定手法、連続高架橋とその付帯構造の固有振動推定手法、および新規開発した現場普及用システム「UドップラーⅡ」の概要を紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 構造力学研究室 室長  上半 文昭

司会:宮本 岳史 (鉄道力学研究部 車両力学研究室 室長)

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