第318回 鉄道総研月例発表会
日時 | 2018年03月05日(月) 13:15〜17:00 |
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場所 | 大阪 毎日新聞ビル オーバルホール |
主題 | 防災・耐震技術に関する最近の研究開発 |
プログラムと発表内容
近年、局所的短時間強雨の発生頻度が増加しており、このような強雨による災害が将来的に増えることが懸念されている。また、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震以降、巨大地震による災害リスクが高まりを見せており、このような地震災害への対応が迫られている。これら、降雨や地震をはじめとした自然災害への対応技術について、検知、評価、補強対策の各技術分野での研究開発の状況を紹介する。
- 発表者
- 防災技術研究部 部長 太田 直之
鉄道沿線には強風監視を目的として風速計が配置され、これらが観測した風速値に基づいて運転見合わせや速度制限といった強風時運転規制の発令、解除が行われている。また、風速計で得られた風観測データを分析することで、強風時における風速の増加傾向や一旦弱まった風の回復傾向などの強風特性を評価することができる。本発表では、約200基の風速計で約4年間にわたって得られた風観測データを用いて評価した強風特性、ならびに強風特性の運転規制への応用について報告する。
- 発表者
- 防災技術研究部 気象防災研究室 主任研究員 荒木 啓司
洗掘を受けるおそれのある河川橋脚の健全性評価として常時微動計測の結果を用いる場合、衝撃振動試験と比べてフーリエスペクトルのピークが明瞭に現れないケースが多く、固有振動数の同定精度が劣るのが現状である。本発表では、橋脚天端両端部で計測した橋軸直角方向と鉛直方向の微動波形をもとに橋脚直下の地盤振動を推定し、橋脚天端の振動と推定した地盤振動との伝達関数から固有振動数を同定する新たな手法について報告する。
- 発表者
- 防災技術研究部 地盤防災研究室 副主任研究員 欅 健典
「ゲリラ豪雨」とも呼ばれる局地的な大雨時には、鉄道のような線状の構造物では離れた場所で発生する河川氾濫や土砂崩壊が運行へ影響を及ぼすことが考えられる。そこで、鉄道事業者による将来的な使用を見据えた局地的な大雨によって発生する災害の被害を軽減・防止するための研究開発を行っている。本発表では、都市域の鉄道を対象として構築した、降雨予測値の取得、洪水・氾濫シミュレーション、列車停止や旅客避難場所の検討の支援にいたる一連のシステムの試作版について報告する。
- 発表者
- 防災技術研究部 地質研究室 室長 川越 健
海域で発生する大地震に対して早期の運転規制を行うために、公的機関の設置した海底地震計データを活用した早期警報手法の開発を行っている。本報告では、海底で地震波が観測されてから鉄道事業者のシステムが警報判断をするまでの情報の流れと処理内容について説明する。また、海底地震計で記録された実データを用いた検証結果や海底地震計データを活用した際の効果について報告する。
- 発表者
- 鉄道地震工学研究センター 地震解析研究室 副主任研究員 是永 将宏
従来採用されている液状化対策は、液状化地盤を完全に改良することを前提とした高コストな工法であるため、鉄道路線のような長区間の領域を対象として実施することが困難な場合が多い。そこで、動的薬液注入により脈状の改良体を地盤内に作成し、地盤を効率的に低改良率で密実化させることで液状化抵抗の増大を期待した脈状地盤改良工法の開発を行った。本発表では、振動台実験結果や鉄道施設近傍を想定した厳しい条件下での施工試験結果、実適用事例について紹介する。
- 発表者
- 鉄道地震工学研究センター 地震動力学研究室 主任研究員 井澤 淳
構造物の基礎には、地震動による地盤変位を拘束し、自由地盤に比べ構造物に入射される地震動が低減される入力損失効果がある。しかし、従来、入力損失効果を評価するためには動的解析法を用いる必要があり、耐震設計実務で主流な静的解析法における適切な評価手法はなかった。そこで、杭基礎構造物を対象に、静的解析法である応答変位法により入力損失効果を評価し、さらにランダム振動論を用いて所要降伏震度スペクトルを低減可能な手法を開発した。本発表では、本手法の概要を報告する。
- 発表者
- 鉄道地震工学研究センター 地震応答制御研究室 研究員 和田 一範
駅舎の天井は、高架下駅のように漏水対策のための防水天井から吊り下げる場合や、橋上駅のように溝型鋼等の横架材から吊り下げる場合等、一般建築物とは異なる支持構造形式となる。このような駅天井の耐震性を評価するには、天井の支持構造部が十分な剛性や強度を有していることを確認すると共に、仕上天井に作用する地震力を適切に考慮する必要がある。そこで、駅舎天井の支持構造部を考慮した吊り天井の動的実験と解析的検討を実施し、設計用地震力の算定方法を提案したので、それらの結果について報告する。
- 発表者
- 構造物技術研究部 建築研究室 副主任研究員 清水 克将
橋台は、橋梁・高架橋と盛土の境界に位置する構造物である。過去の地震においては、背面盛土の沈下により軌道変位を招いた事例が数多く報告されており、列車走行安全性を確保するためには橋台の耐震補強が重要となる。一方で、これまでに提案されている耐震補強工法は、施工時に橋台前面を占有する必要があるため、施工の実施が難しい場合が多い。そこで、橋台前面を占有せずに施工可能な耐震補強工法を開発し、模型実験を通じて設計法の提案を行ったので、これを紹介する。
- 発表者
- 構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 副主任研究員 佐名川 太亮
鉄道構造物等設計標準・同解説(鋼とコンクリートの複合構造物)に示されるコンクリート充填鋼管(CFT)部材の変形性能算定法は、円形断面のみが対象となっている。一方、駅ビルなどの建築・土木一体構造における建築柱は、一般に矩形断面であることが多いため、建築柱と土木柱の接合に関する施工性等の観点から、矩形断面CFTは円形断面CFT柱よりも有利であると考えられる。本発表では、矩形断面CFT部材の部材性能の設計方法について紹介する。
- 発表者
- 構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室 副主任研究員 中田 裕喜
山岳トンネル供用後の地圧作用によるトンネル変形対策として、ロックボルトが用いられることも多いが、通常のロックボルトでは、地山の緩みが著しい場合は十分な定着力を確保できないという問題があった。そこで、そのような地山でも効果を発揮するロックボルトとして、先端を膨張モルタルで確実に定着させ、地山の緩み領域をウレタンで改良する地山改良型ロックボルトを開発した。本発表では、その工法の概要と試験施工結果を紹介する。
- 発表者
- 構造物技術研究部 トンネル研究室 副主任研究員 嶋本 敬介
司会 :前中半 小島 謙一 (鉄道地震工学研究センター 地震動力学研究室 室長)
司会 :後 半 岡本 大 (構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室 室長)
都合により、プログラムを変更することがあります。
※1 第317回月例発表会(2月21日(水)東京開催)と同じ内容の発表です。
※2 第316回月例発表会(1月18日(木)東京開催)と同じ内容の発表です。
- 入場無料
- ご来場の際には、お名刺を頂戴します。
- 会場内のビデオ・写真・レコーダ等による撮影および録音等はご遠慮ください。
- 展示コーナーの設置
ホールの外側に展示コーナを設けています。 - 質問コーナーの設置
前半の発表件名については休憩時、後半の発表件名については発表会終了後に、質問コーナーを設けますので、発表者に直接ご質問いただけます。