第322回 鉄道総研月例発表会

日時 2018年08月08日(水) 13:30〜16:40
場所 日本工業倶楽部 大会堂
主題 鉄道構造物の維持管理技術に関する最近の研究開発 

プログラムと発表内容

13:30~13:45
鉄道構造物の維持管理技術に関する最近の研究開発

安全で安定した鉄道輸送を提供するため、多数の鉄道構造物の維持管理を継続的、かつ的確に実施することが求められている。また、建設後長時間経過した鉄道構造物が増加する現状を考慮すると、予防保全に基づく維持管理の効率化への期待も大きい。ここでは、鉄道構造物の維持管理の現状、課題を述べ、鉄道総研が取り組む研究開発の方向性を、本日の発表件名の研究開発事例を示しつつ、概説する。

発表者
構造物技術研究部 部長 神田 政幸

13:45~14:05
目視に基づく鉄筋コンクリート構造物の劣化予測法

高度経済成長期に主に建設された膨大な鉄筋コンクリート構造物が劣化していく中、構造物の残存性能を予測し、補修・ 補強の優先順位や時期を設定して計画的に維持管理を行うことで、構造物の安全性を確保していくことが重要となる。本発 表では,鉄筋コンクリート構造物の劣化を引き起こす主要因の一つである鉄筋の腐食を対象として、従来必要であった鉄筋 のはつり出し等を必要とせず、目視に基づき,鉄筋コンクリート構造物の劣化予測を行う手法を紹介する。

発表者
構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 副主任研究員 轟 俊太朗

14:05~14:25
PC橋りょうの長期変形予測法

鉄道プレストレストコンクリート(PC)桁の設計では、河川横断などでの長大化や列車走行の高速化などで、PC 桁のたわみ管理の厳格化にも対応できる算定手法が必要となる。本発表では、コンクリートの水分移動履歴を、湿度差を駆動力にした水分浸透・拡散モデルを導入することで表現可能な、変形予測モデルを構築した。この手法により、従来法では予測が困難であった桁の上反りのたわみの増大を、任意の材齢で評価できるなど、PC橋りょうの設計に活用が可能となったので紹介する。

発表者
構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 主任研究員 渡辺 健

14:25~14:45
リベット桁支承部の疲労き裂に対する評価と対策

リベット桁支承部に疲労き裂が頻繁に発生しており、当該疲労き裂に対する健全性の評価方法や簡易な対策方法が求められている。本研究では、疲労き裂の主原因となる支承部の隙と応力の関係を、実物大のリベット桁を模擬した載荷試験やFEM解析により明らかにすることで、支承部の隙や疲労き裂に対する健全性の評価方法を検討した。さらに、疲労き裂の進展を抑制するための補強工法を考案し、載荷試験により効果の検証を行ったので報告する。

発表者
構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室 副主任研究員 吉田 善紀

14:45~15:05
既設無塗装橋りょうの摩擦接合継手を用いた補修・補強法

耐候性鋼材を使用した既設無塗装橋りょうは、鋼材表面が保護性さびで覆われている。既設無塗装橋りょうに塗装桁に準じた手法で摩擦接合継手を用いて補修・補強部材を設置する際は、さび層を除去する必要があると考えられるが、鋼材に固 着したさび層の除去は困難である。そこで、補修・補強作業の効率化を目的として既設無塗装橋りょうの保護性さびを活用した摩擦接合継手の開発を進めている。本発表では、既設耐候性鋼橋の保護性さびを活用した摩擦接合継手による補修・補強法について報告する。

発表者
構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室 研究員 秋山 慎一郎

15:05~15:20
休 憩

15:20~15:40
洗掘被害を受けた河川橋脚基礎の残存支持力評価法

近年の豪雨や台風等による水害により、基礎の支持地盤が洗掘を受けて橋脚が大きく沈下・傾斜する被害を受ける場合がある。洗掘被害を受けた場合に早期の運行再開を目指す場合には、橋りょう全体を再構築するよりも残された基礎を最小限の補修のみで再供用する方が合理的である。そこで洗掘被害を受けた河川橋脚基礎の残存支持力を、試験列車走行時の基礎の沈下量から逆推定して再供用の可否を判断する手法を提案したので報告する。

発表者
構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 室長 西岡 英俊

15:40~16:00
無線センサーを活用したトンネル状態監視システム

トンネル内にレーザー変位計、ひび割れ幅計、間隙水圧計、地中変位計等の計測機器と子機を取り付け、坑口等に設置した親機まで無線でデータ伝送することにより、低コストでリアルタイムに状態監視するシステムを開発した。中継用無線センサーを用いることにより、長距離伝送を可能とするとともに、電池で駆動可能な親機一体型の収録装置を開発し、電源が取れない場所でも使用可能とした。ここでは、システムの概要および実際のトンネルにおける計測事例について報告する。

発表者
構造物技術研究部 トンネル研究室 主任研究員 津野 究

16:00~16:20
既設山岳トンネルの盤ぶくれ予測法と対策

供用中の山岳トンネルの路盤部に地圧が作用し、長期にわたって徐々に盤ぶくれが進行することがある。データ分析の結果、盤ぶくれには地山の強度低下が大きく関係していると考えられた。そこで、トンネル掘削から完成後の地山の強度低下による盤ぶくれ発生までを一貫して表現する数値解析手法を提案し、対策工としての下向きのロックボルトの長さ、径、プレストレスといった仕様が盤ぶくれ抑制効果に与える影響を評価したので報告する。

発表者
構造物技術研究部 トンネル研究室 副主任研究員 嶋本 敬介

16:20~16:40
高架下コンコース空間における鉄道騒音の実態と対策

高架下コンコースでは、列車走行時に大きな騒音が発生することがある。鉄道騒音対策として防振ハンガーが多く用いられているが、天井の耐震性を確保するために、天井の構成方法によっては防振ハンガーを用いることができない場合や、遮音性能を十分に発揮できない場合がある。そこで、耐震性能と遮音性能の両立を図る新しい高架下天井の構成方法を開発したので、高架下コンコースでの騒音の実態と併せて報告する。

発表者
構造物技術研究部 建築研究室 副主任研究員 清水 克将