第324回 鉄道総研月例発表会

日時 2018年10月17日(水) 13:30〜16:55
場所 日本工業倶楽部 大会堂
主題 車両技術に関する最近の研究開発 

プログラムと発表内容

13:30~13:45
車両技術に関する最近の主な研究開発

車両分野における最近の研究テーマで得られた成果の中から、鉄道において最も重要である安全性向上に関する研究として、横風による輪重・横圧変化が乗り上がり脱線に及ぼす影響について紹介する。また、近年、非電化区間への電車乗り入れ・非常時走行・回生失効対策用途などで実用化され始め、JR九州819系「DENCHA」がブルーリボン賞を受賞するなど注目されつつある車載蓄電に関する研究テーマで得られた成果の中から、熱回路モデルによる温度上昇推定手法について紹介する。

発表者
車両制御技術研究部 部長 山本 貴光

13:45~14:10
直流集電式車載蓄電型電気車用変換システムの小型軽量化の検討

直流集電の蓄電型電気車には充放電用チョッパが必要で,小型軽量化のニーズがある。その際に必要となる平滑リアクトルは相互の電磁干渉が起こらないように個別に配置するため,システムが大型化する。これに対し,著者らはリアクトル相互の電磁結合を積極的に活用する巻線構造を採ることでリアクトルおよびチョッパの小型軽量化を実現する手法を考案した。試作および通電試験で小型軽量化と電流リプルの低減の目途を見いだせたので報告する。

発表者
車両制御技術研究部 駆動制御研究室 副主任研究員 仲村 孝行

14:10~14:35
振動と漏洩電流を用いた主電動機の異常検知システム

電車の主電動機の異常を早期に検知して運転中の故障を未然に防ぐために、鉄道総研では主電動機の異常検知システムの開発に取り組んでいる。主電動機軸受の異常を模擬した試験を行った結果,主電動機の振動と漏洩電流の測定結果に対してオクターブバンド分析と機械学習を組み合わせた異常検知法を適用することにより軸受の異常が検知できる可能性が明らかになった.本発表ではこの試験結果について報告するとともに,振動と漏洩電流の常時測定により主電動機の異常を検知するシステムの構成案について紹介する。

発表者
車両制御技術研究部 動力システム研究室 研究員 堺谷 洋

14:35~15:00
構内試験を活用した走行時の台車振動予測手法

走行中の台車に発生する振動は,締結ボルトの緩みや,部品の疲労破壊につながる恐れもあり,これらを未然に防ぐためにも,走行中の振動状態を把握することは重要な課題である。営業線を使用した走行時の振動測定は容易には実施できないため,簡便に振動を把握できる手法が望まれる。鉄道総研では,車両基地などの構内における振動測定データを活用して,走行中の台車振動を数値計算により予測する手法の開発を進めており,本発表ではその概要と,適用事例について紹介する。

発表者
車両構造技術研究部 車両振動研究室 主任研究員(上級) 瀧上 唯夫

15:00~15:15
休 憩

15:15~15:40
集電系HILSシステムの開発 ※1

パンタグラフの定置試験装置と架線運動シミュレータを融合させた集電系HILSシステムを開発した。本HILSシステムは、パンタグラフと架線の相互作用を考慮できるため、定置試験でありながらパンタグラフが架線下を走行している状況を模擬したパンタグラフの性能確認試験が可能である。本発表では、300km/h走行時のハンガ到来周波数である約20Hzまでの架線の振動を表現可能なHILSシステムを紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 集電力学研究室 副主任研究員 小林 樹幸

15:40~16:05
C/C複合材製パンタグラフすり板の低コスト化とその使用限度厚さの明確化

炭素基材を炭素繊維で補強したC/C複合材製のパンタグラフすり板は高じん性・高潤滑性を有し、耐摩耗性にも優れるが、炭素繊維を多く使用しているため、従来のすり板よりも高価なことが難点であった。今回、炭素繊維含有量等の見直しによりC/C複合材製すり板の製造コスト低減を図るとともに、すり板の使用限度厚さの目安に関する検討を行ったので、これら取り組みについて紹介する。

発表者
材料技術研究部 摩擦材料研究室 副主任研究員 宮平 裕生

16:05~16:30
高温摩擦試験装置を用いたブレーキ摩擦材の評価手法

実物大ブレーキ試験は最終的な機械ブレーキの性能評価に必要不可欠であるが、ブレーキ摩擦材の開発過程で高温状態の摩擦係数を測定し耐熱性を把握する際には、膨大な労力を費やす負担の多い試験である。本発表では、実物大ブレーキ試験に比べて簡易にブレーキ摩擦材を評価する手法として、任意の温度で摩擦係数を測定可能な高温摩擦試験装置の適用可能性を検討し、実物大ブレーキ試験結果との比較により本手法の有効性を確認したので報告する。

発表者
車両制御技術研究部 ブレーキ制御研究室 副主任研究員 西森 久宜

16:30~16:55
衝突事故におけるクロスシート着座乗客の傷害評価


衝突事故時には,乗客が進行方向に投げ出され,内装品と衝突して負傷する可能性がある。この時の乗客挙動,負傷箇所や程度の検討は,乗客の安全性向上の観点から重要である。今回,クロスシート着座乗客が前席の背面に衝突するケースを対象として,スレッド試験を実施した。これにより,ダミー人形の傷害値が比較的大きくなる部位を明確にし,その原因を考察した。さらに,より安全なシート設計の方向性を検討したので,これらの結果について報告する。

発表者
車両構造技術研究部 車両強度研究室 主任研究員 沖野 友洋

※1 第323回月例発表会(平成30年9月25日(火)東京開催)と同じ内容の発表です。