第333回 鉄道総研月例発表会

日時 2019年09月24日(火) 13:30~17:10
場所 東京 日本工業倶楽部 大ホール
主題 電力技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:30~13:45
電力技術に関する最近の研究開発

鉄道総研の電力技術に関わる研究グループは、省エネルギー・省メンテナンスで信頼性の高い電力設備の実現に貢献することを目標として定め、その実現に向けた研究活動を行っている。本発表では、こうした研究開発の取り組みについて、その具体的目標とこれまでに得られた成果について紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.6 「電力設備のメンテナンスに関わる最近の研究開発」
 RRR Vol.76 No.9 「鉄道の新しい電力技術」

発表者
電力技術研究部 部長 池田 充

13:45~14:05
変電所内制御線のデジタル伝送方式の提案

変電所内の制御情報は従来アナログ信号をメタル回線で伝送しており、デジタル伝送による設備のスリム化が求められる。そこで、デジタル伝送の手段として無線方式、イーサネット方式、電力線搬送方式を検討した。検証試験の結果、イーサネット方式と電力線搬送方式は従来のアナログ伝送よりも遅延が発生するものの伝送異常等の影響はなく、操作連動、計測情報のデジタル伝送化において問題がないことを確認したので報告する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.6 「き電用変電所制御回線のデジタル化における方式提案」

発表者
電力技術研究部 き電研究室 主任研究員 小西 武史

14:05~14:25
電力設備用接地システムの耐雷性検査手法の開発

変電所等の接地システムに対する新しい検査手法を開発した。接地システムの技術基準適合性および耐雷性を評価可能な検査装置を新たに開発し、現地試験により低周波特性(接地抵抗)および高周波特性(接地インピーダンスと電位差)を、十分な精度で評価可能であることを確認した。また、隣接変電所の接地システムと自変電所の遠制接地を試験用接地極に適用する新しい検査回路を提案した。現地試験により、接地抵抗、接地インピーダンス、電位差を十分な精度で評価可能であることを確認したので報告する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.6 「耐雷性評価に対応した接地システム検査手法の開発」

発表者
電力技術研究部 き電研究室 主任研究員 森田 岳

14:25~14:45
耐食性絶縁水平パイプを用いた電車線支持装置の開発

建設時に架空電車線の設置スペースを考慮していない狭小トンネルを電化する場合、それに対応する特殊な電車線支持装置のひとつとして、絶縁水平パイプを用いた支持装置がある。絶縁水平パイプは、電車線支持装置として多く用いられている亜鉛めっき鋼よりも取替周期が短いことが保守上の問題であった。本発表では、耐久性を向上した耐食性絶縁水平パイプの開発および、その耐食性絶縁水平パイプを適用した耐食性電車線支持装置の性能検証結果について報告する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.6 「耐食性絶縁水平パイプを用いた電車線支持装置の開発」

発表者
電力技術研究部 集電管理研究室 副主任研究員 臼木 理倫

14:45~15:50
休 憩

15:50~16:10
機械学習による電車線金具検出手法の開発

電車線設備は屋外に長距離にわたって架設される設備であり、設備の検査に多くの労力が必要とされ、近年、検査の効率化に対する要求が高まっている。現在、電気検測車によってトロリ線の摩耗、高さ、偏位などの検査が自動化されているが、トロリ線のみならず他の設備に対しても検査の自動化が求められている。そこで、電車線金具の検査を自動化するための基礎技術として、営業線で撮影した電車線設備の画像から電車線金具を抽出する手法を開発したので紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.28 No.10 「ステレオ画像計測とレーザー測距を併用した架線の非接触位置測定手法」
 RRR Vol.74 No.7 「画像とレーザーを用いて電車線を計測する」

発表者
電力技術研究部 集電管理研究室 副主任研究員 松村 周

16:10~16:30
列車通過時の高架橋振動による電車線路設備の損傷低減対策

高架区間の一部で発生している列車通過時の電車線路設備振動による線条破断防止のため、電車線路設備損傷の発生条件を明らかにして、対策要否判定基準を明確化することが求められていた。そこで、高架橋・電柱連成解析や線条振動試験、現地試験を実施して、電車線路設備の振動が大きくなる条件や、線条疲労破断が発生する条件を明らかにした。そして、被害対策のための線条支持構造を開発するとともに対策要否判定基準を提案したので報告する。

発表者
電力技術研究部 電車線構造研究室 主任研究員 常本 瑞樹

16:30~16:50
地震時の門形支持物の線路方向に対する固有周期算定方法

現状の門形支持物の耐震計算では、まくらぎ方向よりも線路方向の固有周期を長く算定するため、線路方向の地震応答を大きく評価する傾向がある。一方、門形支持物が線路方向に倒壊した事例は少なく、門形支持物については実情に見合う耐震性能評価がなされているとはいい難い。そこで、種々の架線支持構造を有する門形支持物の振動実験を実施し、門形支持物の固有周期についてまくらぎ方向および線路方向の相関を確認した。その結果、特定の構造では両方向の固有周期の差は僅かなことを明らかにしたので報告する。

発表者
電力技術研究部 電車線構造研究室 主任研究員 原田 智

16:50~17:10
新幹線用パンタグラフの追従機構と揚力補償手法の開発

新幹線用パンタグラフには低空力騒音特性、安定した揚力特性および架線への追従性が必要であるが、これらを同時に高いレベルで満足することは難しい課題でもある。特に低空力騒音特性を重視して断面形状を平滑化した舟体の場合、追従機構の動作によって揚力が変化する場合がある。そこで、平滑化した舟体でも追従機構が揚力に与える影響が少ない機構として多分割舟体を開発し、追従性を検証したので報告する。また、舟体の表面圧力からパンタグラフの揚力を推定し、平均揚力の変化を補償する手法についても紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.6 「多分割舟体による接触性能向上手法」

発表者
鉄道力学研究部 集電力学研究室 室長 臼田 隆之