第350回 鉄道総研月例発表会

日時 2021年10月06日(水) から
場所 ウェブ配信(視聴無料)
主題 鉄道構造物の設計・施工に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

(関係研究部 構造物技術研究部

アンケートとご質問は締め切らせていただきました。
お忙しい中ご協力いただいた皆様に、御礼申し上げます。


鉄道構造物の設計・施工に関する最近の研究開発

平成28年4月に発生した熊本地震や、令和元年・2年の豪雨では、鉄道構造物に被害をもたらし、鉄道運行に支障を及ぼした。一方、大都市の駅部などは利便性向上を目的としたリニューアル工事が継続されている。このように鉄道構造物を取り巻く技術課題は、新設建設や既設改良から災害対策、そして早期復旧策と広範に及ぶ。ここでは、鉄道総研が取り組む鉄道構造物の設計・施工に関する研究開発の方向性を、本日の発表件名の研究開発事例を示しつつ、概説する。

発表者
構造物技術研究部長 神田 政幸


鋼角ストッパーの桁端・桁座埋込部の水平耐力算定式

過去の地震において、鋼角ストッパーの桁端・桁座埋込み部が損傷し、損傷箇所や状態によっては復旧に時間を要した。桁端・桁座埋込み部の水平耐力を適切に評価できれば、損傷を復旧しやすい箇所や状態に制御して、復旧性を向上させることできる。しかし、桁端・桁座埋込み部の損傷メカニズムはこれまで不明で、水平耐力算定式には検討の余地があった。そこで、実験や解析を実施し、桁端・桁座埋込み部の水平耐力算定式を提案した。ここでは、改訂される設計標準に導入される予定の水平耐力算定式について報告する。

発表者
構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 主任研究員 轟 俊太朗


支持条件を考慮したRC棒部材のせん断耐力算定式

現行のRC標準においては、単純支持梁の実験から導かれたせん断耐力算定式が示されている。一方、ラーメン高架橋の部材は両端固定支持で、単純支持の場合と耐荷機構やせん断耐力が異なり、またせん断補強鉄筋の効果には上限があることが指摘されている。そこで、既往の実験や非線形有限要素解析により、せん断耐荷機構やせん断耐力を評価した。ここでは、これらの結果を踏まえて、改訂される設計標準に導入される予定の両端固定支持RC棒部材のせん断耐力算定式や、せん断補強鉄筋の効果の上限について報告する。

発表者
構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 副主任研究員 中田 裕喜


降雨の影響や混合セメントの特性を考慮したコンクリートの収縮ひずみ算定式

列車の走行安全性の照査においては、橋りょうの変位・変形を精度よく推定することが重要である。そこで、コンクリートの収縮挙動を精度良く予測可能な算定式を提案した。検討では実寸法や構造物の耐用期間を考慮して、3次元材料-構造連成応答解析を用いて収縮ひずみを算出し、提案した予測式を用いることで解析結果を同等に再現可能であることを確認した。本発表では、降雨の影響や混合セメントの特性を考慮したコンクリートの収縮ひずみ算定式や、実構造物の計測結果を用いて行った検証結果について報告する。

発表者
構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 主任研究員 渡辺 健


鋼鉄道橋への高性能鋼材の適用とその効果

従来の鋼材と比べて高い強度や優れた製作性を有する高性能鋼材として、「橋梁用高降伏点鋼板(以下、SBHS)」が開発され、これを橋梁に用いることによる施工性の向上や建設コストの低減が期待されている。一方、SBHSは、これまで材料特性や鉄道橋に適用した場合の具体的な設計方法などは検討されていなかった。本発表では、SBHSの鋼鉄道橋への適用性や、適用する際の具体的な設計法、コストダウン等の適用効果について報告する。

発表者
構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室 副主任研究員 斉藤 雅充


可動式ホーム柵支持部の構造設計に用いる風荷重と設計法

可動式ホーム柵支持部の構造設計では風荷重が支配的となる場合がある。一方、可動式ホーム柵の周辺には風荷重を低減できる可能性のある防風スクリーン等の周辺工作物が設置されるケースもあるが、これらが風荷重に与える影響が不明なため、周辺工作物等に依らない一律な風荷重を設定することにより、実態とあわない設計となる場合がある。そこで、周辺工作物等による可動式ホーム柵支持部に作用する風荷重の影響を風洞試験により評価したので,その結果を報告する。

発表者
構造物技術研究部 建築研究室 主任研究員 清水 克将


地震時の旅客上家と鉄道土木構造物間の相互作用力評価法

旅客上家(以下、上家)と一体となった鉄道土木構造物(以下、構造物)は、構造物と上家を別々に設計する場合が多い。構造物への地震荷重を設定する際には、上家から受ける地震荷重(以下、上家反力)を考慮する必要があるが、現状では上家反力の統一的な設定手法が無く、上家の設計用の地震荷重を使用した場合には過大になる可能性がある。そこで、地震応答解析により上家と一体となった構造物の地震応答性状を把握し、精緻に相互作用力を評価し、構造物の設計用の上家反力の設定手法を提案したので報告する。

発表者
構造物技術研究部 建築研究室 副主任研究員 三木 広志


橋台の動的相互作用の解明と構造解析手法

過去に発生した地震では橋台の変形・損傷により背面盛土が沈下する被害が数多く報告されており、列車の走行安全性確保の観点からも耐震診断・補強が進められつつある。橋台の耐震設計には橋脚・高架橋の設計法に準じた手法が一般的に用いられるが、地震時土圧や橋台と背面盛土との動的な相互作用については安全側なモデルとなっている。そこで、模型実験等により地震時挙動を詳細に評価するとともに、これらを表現可能な構造解析手法を提案したので、報告する。
 鉄道総研報告Vol.35No.7「動的相互作用に着目した橋台の耐震診断法」

発表者
構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 主任研究員 佐名川 太亮


工期短縮可能な線路下横断工事の掘進方式

線路下横断工法においては、函体の構築に先立ち角形鋼管からなる仮設トンネルを築造する必要があるが、この築造にあたり、従来は軌道整備しながら角形鋼管を1本ずつ挿入する必要があった。そこで、従来と同等の地表面沈下に抑えつつ、掘進速度を向上することができる段差掘進方式を提案した。本報告では、提案した方式の概要と、沈下を抑制するための角型鋼管同士の離隔の考え方について示すとともに、地表面沈下量を精緻に予測できる数値解析手法の概要や、本方式の施工試験の事例について紹介する。

発表者
構造物技術研究部 トンネル研究室 主任研究員 仲山 貴司


関係研究部

構造物技術研究部


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