第354回 鉄道総研月例発表会

日時 2022年02月16日(水) から
場所 ウェブ配信(視聴無料)
主題 電力技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

(関係研究部 電力技術研究部

アンケートとご質問は締め切らせていただきました。
お忙しい中ご協力いただいた皆様に、御礼申し上げます。


電力技術に関する最近の研究開発

鉄道総研の電力技術に関わる研究グループは省エネルギー・省メンテナンスで信頼性の高い電力設備の実現に貢献することを目標として定め、その実現に向けた研究活動を行っている。本講演では、こうした研究開発の取り組みについて、その具体的目標とこれまでに得られた成果について紹介する。

 鉄道総研報告Vol.35No.12「持続可能な社会に貢献する電力システムの研究開発」

発表者
電力技術研究部 部長 重枝 秀紀


耐震性能を向上した曲線引金具の開発

架空電車線の曲線引金具は、集電性能を考えた場合には軽量化が求められる一方、地震により損傷する恐れがあることから耐震性向上も求められる。そのため、その両立には慎重な検討が求められる。そこで、集電性能および耐震性能に関する仕様を提案し、これを満たす曲線引金具を試作した。そして、曲げ強度試験により試作品が耐震性能を満たしていることを確認した。さらに、営業線架設試験により試作品架設時の集電性能が良好であることを確認したので紹介する。

 鉄道総研報告Vol.35No.12「耐震性能を向上した曲線引金具の開発」

発表者
電力技術研究部 電車線構造研究室 主任研究員 常本 瑞樹


トロリ線とすり板の摩擦熱に起因する摩耗形態の分類

電気鉄道の集電材料であるトロリ線とすり板の機械的摩耗は、これまでは全て凝着摩耗に起因すると考えられてきた。一方で、現場におけるトロリ線の摩耗面はしゅう動速度によって変化しており、凝着摩耗以外の摩耗形態も現れていると考えられるものの、機械的摩耗形態を確認した例はなく、またそのメカニズムも解明されていない。本発表では、銅製の模擬トロリ線と鉄系焼結合金すり板の間の摩擦熱に起因する温度上昇量を測定し、機械的摩耗形態を分類したので紹介する。

 鉄道総研報告Vol.27No.8「通電条件下におけるトロリ線とすり板の摩耗形態」
 鉄道総研報告Vol.31No.2「通電下における集電材料の摩耗メカニズム」

発表者
電力技術研究部 集電管理研究室 室長 山下 主税


直流電車線路の点検を想定した無人航空機飛行可能エリアの提案

無人航空機には機種によって飛行姿勢制御に地磁気を利用するものが存在する。このため電車線路設備の点検に無人航空機の適用を想定した場合、直流磁界の影響により飛行制御・姿勢制御に支障を及ぼす懸念がある。そこで、無人航空機に直流磁界を与えた時の挙動調査、代表的な装柱箇所の停電時における残留磁界レベルの測定を行うとともに、有限要素モデルによるシミュレーションを行い測定結果との比較を行い、代表例に対する飛行可能エリアを提案したので紹介する。

 鉄道総研報告Vol.22No.12「電鉄用変電所が発生する電磁界の解析と低減対策」
 鉄道総研報告Vol.35No.12「直流電車線路の点検を想定した無人航空機飛行可能エリアの提案」

発表者
電力技術研究部 き電研究室 主任研究員 森田 岳


公開データによる気象情報や地形情報を用いたがいし汚損度推定手法

事業者が設定している「塩害を考慮すべき線区」を実態に即して見直すためには、現状の汚損度把握手法では多大な労力が必要である。また、測定直前の気象に強く影響を受けるという課題、また、測定技術の個人差もある。そこで、公開データの風速・風向・雨量の気象情報と海岸からの距離などの地形情報を活用し、任意の明かり区間における通常汚損に対するがいし汚損度推定手法を構築した。本発表では、汚損度推定アルゴリズムおよび本手法の活用例を紹介する。

 鉄道総研報告Vol.35No.12「公開データによる気象情報や地形情報を用いたがいし汚損度推定手法」

発表者
電力技術研究部 集電管理研究室 副主任研究員 臼木 理倫


軽量型き電ちょう架式電車線の開発

ツインシンプル架線をき電ちょう架式電車線へ更新する場合、あるタイミングで電柱に加わる荷重が増加し、電柱の安全率が技術基準を下回り、建て替えが必要となることがある。この課題に対し、連続許容温度の高い耐熱硬銅より線を用いることで軽量化するとともに、細径化により風圧荷重を低減する手法が考えられる。しかしながら、細径化により、電気抵抗の増加や、トロリ線の温度上昇等が新たな課題として考えられることから、それらについて検討した結果を紹介する。

発表者
電力技術研究部 電車線構造研究室 副主任研究員 岡部 源太


回生電力有効活用のための高電圧き電用電力変換器の制御方法

直流電気鉄道の高効率化の手法として、既存の電車線と新たに設けた高電圧き電線を電力変換器で接続する高電圧き電方式がある。本研究では、単巻変圧器(AT)を使用した交流ATき電方式との類似性に着目し、ATの特性を直流回路上で模擬するように変換器を制御する方法(DC-ATき電方式)を考案した。従来の直流き電方式と比べて列車間の回生電力の融通量の増加が見込まれ大きな省エネルギー効果が得られることを、運転電力シミュレーションにより確認したので紹介する。

 鉄道総研報告Vol.35No.12「直流高電圧き電用電力変換器における回生電力有効活用のための制御方法」

発表者
電力技術研究部 き電研究室 副主任研究員 吉井 剣


高速パンタグラフ試験装置の開発

パンタグラフの性能を評価する試験装置として高速パンタグラフ試験装置(以下、「本装置」という)を開発した。本装置は、パンタグラフがトロリ線から大電流(最大1000A)を取り入れながら高速走行(最高速度500km/h)する状態を再現できる特徴を有し、トロリ線への追随性に優れ、離線が少ないパンタグラフの開発や、トロリ線とパンタグラフすり板の摩耗現象の解明などに活用していく。本発表では、本装置の機能等の概要や試験例を紹介する。

 鉄道総研報告Vol.35No.9「高速パンタグラフ試験装置の開発」

発表者
鉄道力学研究部 集電力学研究室 主任研究員 小山 達弥


高速パンタグラフ試験装置を用いたHILSシステム

架線とパンタグラフのしゅう動状態を模擬した集電性能評価を定置で行うことは、パンタグラフ開発や、しゅう動摩擦に起因したパンタグラフの不安定挙動の現象解明を行う上で有用である。すり板とのしゅう動を伴う回転円盤をパンタグラフの加振装置として使用し、これと架線運動の数値計算を融合したHILSを開発した。高速パンタグラフ試験装置にHILSを適用して、径間周期に相当する架線系の挙動を表現できることを実験で確認したので紹介する。

 鉄道総研報告Vol.35No.9「高速パンタグラフ試験装置の開発」

発表者
鉄道力学研究部 集電力学研究室 主任研究員 小林 樹幸


関係研究部

(関係研究部 電力技術研究部


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