第376回 鉄道総研月例発表会

日時 2025年07月17日(木) 13:00~17:00
場所 日本工業倶楽部会館2階 大会堂
主題 信号技術および情報通信技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容


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事前登録期間:2025年6月17日(火)10時から7月15日(火)18時まで

13:00~13:10
信号技術・情報通信技術分野における最近の研究開発

 日本における生産年齢人口が減少していく中、鉄道の持続的発展のためには、列車運行やメンテナンスに係る業務の省力化・省人化による生産性の向上が求められる。本発表では、信号技術および情報通信技術分野における研究開発を概説するとともに、2025年度からの基本計画であるRESEARCH 2030の鉄道の将来に向けた研究開発として実施する「自動運転の高度化」に向けた取り組みについて報告する。

発表者
信号技術研究部長  福田 光芳

13:10~13:30
列車運行の省人化のための自律型列車運行制御システム

 鉄道における自動運転は、地下鉄や新交通システムなどで実用化されており、列車の加減速制御が自動化されている。鉄道総研では、運転のみならず列車運行全体の省人化を目指し、線路内や沿線の状態、旅客流動、防災情報などの様々な情報に基づき、列車が地上設備を制御しながら、自律的に走行する列車運行制御システムの開発に取り組んでいる。本発表では、システムに適用する要素技術を概説するとともに、鉄道総研所内試験線での実証試験結果について報告する。

発表者
信号技術研究部 列車制御システム研究室 主任研究員  太田 佑貴

13:30~13:50
線路内異常検知のための列車前方監視システムの開発

 鉄道総研では、線路内への人の進入や飛来物、沿線火災などの列車前方の異常事象を検知するシステムを開発した。このシステムは、画像中から走行する線路を分岐の開通方向を判定しながら検出し、そこから一定範囲内の異常事象を検出する。本発表では、適用線区等の条件に応じて必要となるセンサ構成を整理し、実際の線路で取得したデータを用いて距離ごとの検知性能をオフラインで評価した結果を紹介する。さらに可視光カメラとLiDARによるセンサ構成でプロトタイプシステムを構築し、リアルタイム性の検証を行ったので併せて報告する。

発表者
情報通信技術研究部 画像解析研究室 副主任研究員  向嶋 宏記

13:50~14:10
公衆通信回線を活用した車上データベース配信手法

 無線式列車制御システムなどの車上装置に搭載される車上データベースは、線形変更などが生じた際に、これまで係員の人手によりデータの追加や更新を行ってきた。これに対して、公衆通信回線を介して自動的に車上データベースを配信する手法を開発した。本発表では、開発手法の概要と安全性確保の仕組み、そしてデータ更新作業の省力化や他社線区などへの相互直通運転の際のデータ更新の容易性といった開発手法の特長について報告する。

発表者
信号技術研究部 列車制御システム研究室 主任研究員  北野 隆康

14:10~14:25
休憩(1)

14:25~14:45
電気転てつ機の検査周期適正化に向けたロック調整の統計的発生予測モデル

 電気転てつ機のロック調整を行う定期検査は頻度が高く多大な人工を要するため、周期延伸による省人化効果が大きい。本研究ではロック調整が必要となる確率(調整発生率)を推定する統計的手法を開発し、実路線の転てつ機280台の検査記録を分析した。その結果、検査周期を1.3倍程度に延伸しても、95%以上の転てつ機は現行周期で許容される最大の調整発生率を下回ること、調整発生率が超過する数台の転てつ機はロック狂い検知器でリスクを管理可能であることを根拠として検査周期を延伸できる見込みを得たので報告する。

発表者
情報通信技術研究部 情報解析研究室 研究員  稲場 亘

14:45~15:05
状態監視データを活用した転てつ装置の故障部位と故障要因の特定手法

 転てつ装置用の現状の状態監視装置からのデータでは、突発的な故障に対する予兆検出が極めて困難であることが明らかになりつつある。本発表では、故障発生時の復旧時間短縮を目指し、転換不能の発生直後の状態監視データと履歴データに着目し、故障部位を特定する手法を開発したので報告する。さらに、故障時データとの類似度比較により故障要因を特定する手法を提案する。

発表者
信号技術研究部 信号システム研究室長  潮見 俊輔

15:05~15:25
転てつ装置のフロントロッド折損の要因特定と保守方法の提案

 転てつ装置の転換不能の一因であるフロントロッドの折損は、列車通過や転換動作による金属疲労の蓄積により発生することがあるが、折損につながりやすい軌道や転てつ装置の状態は明らかになっていない。本発表では、複数箇所の転てつ装置に対して行った列車通過時の応力測定結果と、レール接触状態やフロントロッドの調整状態が考慮可能な有限要素モデルを用いた応力解析結果から折損要因を特定し、折損を防止するための保守方法について検討した結果を報告する。

発表者
信号技術研究部 信号システム研究室 研究員  重盛 壮平

15:25~15:40
休憩(2)

15:40~16:00
信号保安システムへの汎用装置適用のガイドライン

 次世代の信号保安システムでは、自営の専用通信回線から公衆通信回線への置き換えによる省設備化や装置の共通化による保守の省力化が期待される。また、汎用装置の適切な利活用による低コスト化も期待される。本発表では、信号保安システムに公衆通信回線と汎用装置を適用するために作成したガイドラインの内容を概説するとともに、汎用装置を適用した信号保安システムにおける安全性確保手法について報告する。

発表者
信号技術研究部 列車制御システム研究室 主任研究員  祗園 昭宏

16:20~16:40
ダイヤ乱れ時を対象とした列車混雑予測手法

 ダイヤ乱れ時においても列車の混雑予測情報を提供し、旅客の快適性低下を防ぐことを目的に、機械学習や重回帰分析などの手法を用いた、複数の列車混雑予測手法を構築した。また、適用する手法により得意・不得意となる予測条件や予測結果の特性があることを明らかにした。本発表では、同じ予測条件下での各手法の予測精度を比較した結果と、予測結果の特性のうち、機械学習では再現率が、重回帰分析では適合率が高くなることを確認したので報告する。

発表者
信号技術研究部 運転システム研究室 副主任研究員  中挾 晃介

16:40~17:00
ランダム化比較試験によるイールドマネジメントの効果検証

 運輸収入の確保・増加に資する施策の一つとしてイールドマネジメント(YM)があり、日本の鉄道では割引商品の発売枠を制御するYMが行われてきた。YMの効果検証は重要なテーマでありつつも、社会実験を行うハードルの高さから、先行研究では数日間のケーススタディや、シミュレーションによる検証に留まっていた。そこで本研究では、数ヶ月に渡る社会実験(ランダム化比較試験)を行うことにより、YMの効果を定量的に検証した。本発表では、ランダム化比較試験の適切な実施方法と効果検証結果について報告する。

発表者
情報通信技術研究部 情報解析研究室 副主任研究員  松本 涼佑


司会:信号技術研究部 列車制御システム研究室長  藤田 浩由


都合により、プログラム(タイトル、発表順など)を変更することがあります。
 


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