第32回 鉄道総研講演会

鉄道の未来を創る研究開発 —RESEARCH 2025

日 時:2020年2月5日(水) 13:00〜17:00
場 所:有楽町朝日ホール(有楽町マリオン11階)
主 催:公益財団法人鉄道総合技術研究所

ごあいさつ

 公益財団法人鉄道総合技術研究所では、鉄道の持続的発展に寄与すべく安全性の向上をはじめとする研究開発と情報発信を続けております。国、JR各社をはじめとする鉄道事業者ならびに関係企業など多くの皆様から、平素よりご理解とご支援を頂戴しておりますことに深く感謝申し上げます。
 鉄道会社の努力により多くのお客様に鉄道をご利用いただいております。一方、自然災害が頻発かつ激甚化し、インフラでは老朽化が進み、生産年齢人口の減少により、現場の労働力が不足しつつあります。これら喫緊の課題に対して従来の枠組みを超えた取り組みが急務となっています。
 鉄道総研では、このような状況を踏まえ、2020年度からの基本計画RESEARCH 2025を策定し、鉄道の将来に向けた研究開発、実用的な技術開発ならびに基礎研究を一層充実させることとしました。
 そこで、今回の講演会では、「鉄道の未来を創る研究開発 -RESEARCH 2025-」をテーマとし、デジタル技術の積極的な導入を軸に、将来に向けた研究開発として、頻発かつ激甚化する自然災害に対する強靱化を筆頭に、メンテナンスの省力化、電力ネットワークの低炭素化、列車運行の自律化、新幹線の高速化、シミュレーション技術の高度化に関連する分野のこれまでの成果、研究開発の目標、具体的な到達点、将来展望などをご紹介します。
 さらに、ご聴講頂く皆様と講演者が双方向で課題や取り組みを共有できるパネルディスカッションを企画致します。ご多忙の折とは存じますが、皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。

会長 正田 英介
理事長 熊谷 則道

プログラムと講演概要

13:00~13:10 開会の挨拶

会長  正田 英介


13:10~13:45 基調講演  鉄道の未来を創る研究開発-RESEARCH 2025-

専務理事 渡辺 郁夫

 地球環境問題、頻発かつ激甚化する自然災害、鉄道インフラの老朽化及び労働力不足等への対応が急務であり、その克服には技術革新が必要不可欠である。鉄道総研は、鉄道が直面する課題を克服し、持続可能な社会の実現に向け、鉄道の未来を創る研究開発を推進する基本計画RESEARCH 2025を策定した。
 本講演ではRESEARCH 2025において重点的に取り組む安全性の向上、特に自然災害に対する強靭化や、デジタル技術による鉄道システムの革新を目指す研究開発等を展望する。


13:45~16:00 講演

激甚化する気象災害に対する鉄道の強靭化

防災技術研究部長 太田 直之

 猛烈な勢力を有する大型台風や局地的に極めて強い降雨をもたらす線状降水帯など、過去に経験のない気象による鉄道の被災形態の激甚化に対応し、防災の高度化が求められている。
 本講演では、高度化の手段として鉄道総研が取り組んできたリアルタイムハザードマップの開発状況を紹介する。さらに、高密度で面的な現況の気象データを活用した災害リスクの評価や、運転中止・再開時期の適切な判断によるダウンタイムの短縮など、鉄道システムの更なる強靭化に向けた技術開発を展望する。


デジタルメンテナンスによる省力化

構造物技術研究部長 神田 政幸

 少子高齢化による労働力不足や、インフラの老朽化によるコスト増大が見込まれる鉄道のメンテナンスについては、状態監視や検査の自動化、機械化による省力化が求められている。
 本講演では、画像解析技術を活用した電車線設備の異常検出装置や、検測データに基づく軌道保守計画策定システムなど、鉄道総研が取り組んできたこれまでの成果を紹介する。さらに、車上、地上の計測データに基づき設備の異常や状態変化を予測し、適切な補修・修繕の時期を判断し、実施するデジタルメンテナンスの将来像を示す。


14:25~14:40  — 休 憩 —


電力ネットワークの電力協調制御による低炭素化

電力技術研究部長 池田充

 電気鉄道は本来エネルギー効率が高く、省エネルギーなシステムであるが、持続可能な社会の実現に向けて電力供給の革新が求められている。
 本講演では、列車と電力供給設備との高度な情報連携による省エネルギー化の研究に関するこれまでの成果を紹介する。さらに、外部電力、鉄道用電力貯蔵装置、高機能整流器などを列車の運行状況に応じ協調制御し、再生可能エネルギーの積極的な活用による低炭素化や、回生電力のさらなる有効活用による省エネルギー化を推進する取り組みについて展望する。


列車運行の自律化

信号・情報技術研究部長 川﨑 邦弘

 鉄道では、安全・安定輸送のために様々な自動化システムが導入されてきた。最新のデジタル技術を活用すれば、列車運行を自律化することにより、気象や旅客流動などの情報に基づく安全かつ柔軟な運行を少ない地上設備で実現することが期待できる。
 本講演では、鉄道総研が考える自律化の定義と効果、現在の自動運転システムとの違いを示し、その実現に必要な技術の確立と課題解決に向けた研究開発計画を紹介する。さらに、将来のシームレスなモビリティサービスの姿を描き、自律列車が果たす役割について述べる。


沿線環境に適合する新幹線の高速化

環境工学研究部長 長倉 清

 高速鉄道が抱える課題には、車両と周囲の大気の相互作用が関わる現象に起因するものが少なくない。これらを解決する上では、現象をより精緻に再現し得る高度なシミュレーション技術や、鉄道総研の独創的な試験設備の活用が有効である。
 本講演では、沿線環境負荷の軽減、台車周りの着落雪対策、車両空力特性の改善など新幹線の高速化に関するこれまでの成果と、これからの取り組みを紹介する。さらに、フィールドデータとシミュレーションに加え、新設する低騒音列車模型走行試験装置や高速パンタグラフ試験装置を連携させる研究開発と期待される成果を展望する。


シミュレーション技術の高度化

鉄道力学研究部長 上半 文昭

 鉄道の力学的現象に関するコンピュータシミュレーションは、多大な労力を要する実験的検証の代行や補完に加え、実験が困難な条件下の現象解明に有用である。さらに、近年のデジタル技術による社会変革においては、シミュレーションがAIやIoTに並ぶ基幹技術として期待されている。
 本講演では、「バーチャル鉄道試験線」をはじめとする鉄道シミュレータについて、各々の高度化や簡便なフィールドパラメータ同定手法の開発など、実用化に向けた取り組みを紹介する。さらに、数値風洞や材料の微視的構造シミュレーションなど、各種シミュレータの活用イメージを展望する。


16:00~16:15  — 休 憩 —


16:15~16:55 パネルディスカッション  鉄道の未来に向けた技術の挑戦

モデレーター:久保 俊一(理事)
パネリスト:講演者


16:55~17:00 閉会の挨拶

理事長  熊谷 則道