第33回 鉄道総研講演会
革新的な鉄道技術の源泉となる基礎研究
日 時:2020年11月11日(水)13:00〜17:40
場 所:有楽町朝日ホール(有楽町マリオン11階) 【案内図】
主 催:公益財団法人鉄道総合技術研究所
プログラムと講演概要
13:00~13:10 開会の挨拶
会長 向殿 政男
13:15~14:15 特別講演
人に寄り添い、人を高める人間拡張技術-安全・保守業務の向上と新しい移動価値の創出へ-
国立研究開発法人産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 研究センター長 持丸 正明 様
ウェアラブルな人体計測、IT、ロボット、VRを統合して、人の身体・技能・意欲を高め、時空間を越えた人の活動を実現する技術体系を人間拡張技術と呼ぶ。
本講演では、人間拡張技術に基づいた研究として、効率よく働く、ウェルビーイングな暮らしを拡張する、さらには遠隔で働く事例を紹介する。それらを通じて、鉄道の安全・保守業務の遠隔化や生産性向上、さらに鉄道利用者にとっての新しい移動価値の創出を俯瞰する。
14:20~15:00 基調講演
革新的な鉄道技術の源泉となる基礎研究
理事 古川 敦
少子高齢化や新型コロナウイルスの感染拡大などを契機とした社会構造の変化に対応するため、鉄道システムには全技術分野において創造的な革新が求められている。このためには、現象を遡ったメカニズムの解明を通じた新しい技術の開発が不可欠であり、これを実現する基礎研究が重要である。
本講演では、鉄道総研がこれまで行った基礎研究の例として横風による転覆対策、早期地震警報システム、トンネル微気圧波対策を紹介し、これらを通じて基礎研究がどのように行われ、その成果が鉄道事業にどのように反映されたかを紹介するとともに、今後の鉄道技術の革新のために実施を計画している基礎研究とその効果、および基礎研究を持続的に実施するための鉄道総研の取組を紹介する。
15:00~15:30 休 憩
15:30~17:25 講演
鉄道を取り巻く気象や環境に関わる基礎研究
防災技術研究部長 太田 直之
災害の激甚化など、自然環境の変化に適合した鉄道システムの強靱化が喫緊の課題となっている。一方、列車の高速化を図る上では、沿線環境への負荷軽減が引き続き求められる。こうした状況から、鉄道を取り巻く環境について、基礎研究の重要性が増している。
本講演では、洗掘メカニズムの解明、車両着雪量の推定といった防災分野の取組に加え、騒音、微気圧波等による沿線環境への負荷を軽減するための基礎研究について、最近の成果とその活用イメージを紹介する。
車両分野の諸課題解決に資する鉄道固有現象の解明
車両構造技術研究部長 石毛 真
車両分野の技術的課題を解決する上では、鉄道固有の諸現象の解明とそれに基づく対策の検討が重要である。そこで鉄道総研では、車両の安全性、信頼性向上に向けて、車両の固有現象の解明を基礎研究と位置付け、課題解決に向けた基礎的な取り組みを継続してきた。
本講演では、車両の安全性に直結する乗り上がり脱線、蛇行動、列車衝突による破壊挙動について、これまでの経緯も踏まえて固有現象解明に向けた取り組みを紹介した。さらに、評価指標の提案や評価手法の構築など、期待される成果の活用イメージについても紹介する。
鉄道の安全性、信頼性向上に資する電気分野の基礎研究
電力技術研究部長 重枝 秀紀
電力設備の事故や故障は、大規模な輸送障害に繋がる可能性がある。また、信号・通信設備は安全の根幹を支えており、これら電気設備の安全性、信頼性を阻害する事象の防止には、現象解明などの基礎的な取り組みが重要である。
本講演では、大電流アークを伴う高抵抗地絡、トロリ線/パンタグラフすり板の摩耗、沿線信号設備における電子機器の劣化といった事象を取り上げ、現象解明や検知精度の向上、経時変化の予測と余寿命評価などを目指す取り組みを紹介した。さらに、各々の成果とその活用イメージについても紹介する。
持続可能な鉄道を目指すインフラ分野の基礎研究
軌道技術研究部長 片岡 宏夫
鉄道事業の持続可能性を高めるため、構造物や軌道に代表されるインフラ分野では、デジタル技術の導入による一層の省力化、低コスト化が急務となっている。インフラのメンテナンスにデジタル技術を導入する上では、現象の法則・理論を見出し予測や診断の信頼性を向上させる基礎研究が重要となる。
本講演では、メンテナンス効率化に資する構造物、軌道の劣化メカニズム解明に基づく予測法、診断法の高度化に加え、非接触の検査、検知手法などに関する研究開発の状況と成果の活用イメージを紹介する。
17:30~17:40 閉会のご挨拶
理事長 渡辺 郁夫