施設研究ニュース

2020年4月号

新幹線用レール鋼製ノーズ可動クロッシングの実用性能評価

1.はじめに

 現在,新幹線で使用されている高マンガン鋳鋼製ノーズ可動クロッシングは,粘り強く割れにくく,傷が発生しても進展が遅いという特徴があります.一方で,製造時に内部に発生する鋳巣(微細な空隙)を完全になくすことが難しく,さらに超音波による内部の探傷検査が困難であることから,定期的な解体検査による表面傷の確認やクロッシング交換を必要としており,保守管理に多大な労力を要しています.そこで,超音波探傷による検査の効率化や交換周期延伸によるコスト低減を目標にレール鋼を用いた新幹線用ノーズ可動クロッシング(以下,「当該クロッシング」という.)を開発しました1)
 本稿では,当該クロッシングの実用化に向けて,当該クロッシングの施工性の確認,転換試験,走行試験ならびに超音波探傷による性能確認を実施しましたので,その内容について紹介します.

2.新幹線用レール鋼製ノーズ可動クロッシングの概要

 図1に当該クロッシングの構成を示します.当該クロッシングは,主に可動レール,ウィングレールおよび大床板の3要素で構成しています.可動レールには,転換動作の円滑化および発生応力の低減を図るために基準線側と分岐線側の両方に弾性部を設けています.また,後端部の基準線側は新幹線用伸縮継目と同様の構造とし,分岐線側は転換時における可動レールの移動を吸収することができる簡易伸縮構造としています.なお,基準線側の前後のレールとの接続部は溶接継目に変更することも可能です.

図1 新幹線用レール鋼製ノーズ可動クロッシングの構成

3.試験敷設

3.1 工事

 新幹線車両基地の直線区間に当該クロッシングの試験敷設を実施しました.組み立て可能な材料については事前に車両基地で組み立てを行い,施工当夜は運搬および敷設工事を実施しました.図2に敷設工事後のクロッシングの全景を示します.本工事により,当該クロッシングの施工性に問題がないことを確認しました.

図2 当該クロッシングの全景

3.2転換試験,走行試験

 転換試験では,可動レールを電気転てつ機により転換した際の,転換負荷,スイッチアジャスタ軸力,可動レールの弾性部および叉部における発生応力の変動値を評価しました.走行試験では,鎖錠かん変位,スイッチアジャスタのオフセット下部応力と軸力,可動レールの弾性部,底部および叉部に発生する応力について,新幹線車両通過時の変動値を評価しました.なお,これらの試験は,敷設直後,約6か月後,約1年9か月後の計3回実施しました.
 転換試験結果の総括を表1に示します.動作かんに作用する転換負荷は最大4.7kNであり,TS形電気転てつ機の最大転換力10.2kN2) に対して十分小さいことを確認しました.転換前後の密着力の影響を含めたスイッチアジャスタの軸力は最大6.8kNであり,スイッチアジャスタの圧縮強度49.0kN3)と比べて十分小さいことを確認しました.また,可動レール弾性部における応力の最大値は84.3 N/mm2であり,レール弾性部の許容応力度137.2N/mm2 4)を下回ることを確認しました.さらに,叉部応力の最大値は42.1N/mm2であり,許容応力度196.0N/mm2 4)を下回りました.
 走行試験結果の総括を表2に示します.スイッチアジャスタのオフセット下部応力の最大値は21.3 N/mm2,スイッチアジャスタ軸力の最大値は2.3kNであり,いずれも目安値を下回りました.しかしながら,鎖錠かん変位については第1回試験で目安値を超過しました.この原因として,密着力の調整等が十分ではなかった可能性が考えられます.第2回試験以降では,調整等を適切に実施したことから目安値を下回りました.また,可動レール底部における応力は最大82.0 N/mm2,叉部では最大79.3N/mm2,弾性部では最大27.9 N/mm2であり,いずれも許容応力度196.0N/mm2および137.2N/mm2を下回りました.

表1 転換試験結果総括
表2 走行試験結果総括

3.3 超音波探傷検査

 敷設された当該クロッシングに対して,超音波探傷による追跡調査を実施しました.図3に可動レール乗移り部における架台式超音波探傷器の探傷画像の一例を示します.敷設後約1年7ヵ月間の調査において,いずれの箇所からもきずエコーは検出されず,良好に推移しました.なお,同図の底面エコー消失箇所は,手探傷により探傷可能であることを確認しております.また,図4に当該クロッシングを走行したレール探傷車の探傷画像の一例を示します.図3,図4を比較すると,両者の結果はよく一致していることから,架台式超音波探傷器による連続探傷をレール探傷車による探傷に置き換えることが可能であると考えます.

図3 架台式超音波探傷器による探傷画像例
図4 レール探傷車による探傷画像例

4.おわりに

 当該クロッシングを新幹線車両が通過する軌道へ試験敷設し,各種試験により実用性能を評価いたしました.今後は,長期的耐久性の確認を目的とした在来線への試験敷設を検討していく予定です.

参考文献

1)及川祐也他:新幹線用レール鋼製ノーズ可動クロッシングの開発,鉄道総研報告,Vol.29,No.8,pp. 5-10,2015.
2)鉄道電気技術者のための信号概論 新幹線信号設備,社団法人日本鉄道電気技術協会,p.50,2009.
3)日本国有鉄道:スイッチアジャスタ,JRS 21405-4J-14AR6C, 1986.
4)佐藤泰生:分岐器の構造と保守-増補改訂版-,一般社団法人日本鉄道施設協会,p.410,2017.

執筆者:軌道技術研究部 軌道構造研究室 太田晋一
担当者:軌道技術研究部 レールメンテナンス研究室 伊藤太初
    信号・情報技術研究部 信号システム研究室 潮見俊輔

新幹線用レール鋼製ノーズ可動クロッシングのき裂進展試験および解析

1.はじめに

 前記事に詳細を記したように,検査の効率化や交換周期延伸によるコスト低減を目標に,レール鋼を用いた新幹線用ノーズ可動クロッシングを開発しました.ここで,開発したクロッシングの検査周期を検討する際,傷の大きさと残存寿命の関係を把握する必要があります.そこで,本稿では,可動レールの2種類の一様断面におけるき裂進展試験および試験を模擬した一様断面モデルおよび実形状モデルによるき裂進展解析を実施し,き裂進展速度を試算した結果を紹介します.なお,評価対象は図1のとおり可動レールの中で比較的発生応力が高いと想定される車輪乗り移り部および叉部の断面としました.

図1 き裂進展試験・解析を行う断面

2.一様断面形状を対象としたき裂進展試験および解析1),2)

 可動レール底部に発生するき裂の進展速度を把握するため,底部端部に人工傷(1/4円状のスリット)を放電加工した一様断面の供試体に対して,レール曲げ疲労試験機を用いたき裂進展試験を実施しました.支点間隔1,000mmの片振り3点曲げとし,荷重はレール頭部から鉛直方向に繰り返し作用させ,荷重の大きさは,き裂導入箇所におけるレール底部の応力振幅が100N/mm2になるように設定しました.解析では、き裂進展試験で用いた一様断面の供試体をモデル化したき裂なしメッシュ(四面体二次要素)に対して,仮想き裂進展法と自動メッシング機能を有したき裂進展解析システムFINAS/CRACKを用いた有限要素法による解析を実施しました.なお,ソルバーにはFINAS/STARを用いました.境界条件はスパン1,000mmのレール支持位置において上下変位を拘束し,長手方向はレール支持位置の底面中心部1点を拘束しました.き裂進展則は,応力比Rの影響を考慮できるWalker則を用いました.
 試験およびき裂進展解析から得られたき裂長さと載荷回数の関係を図2に示します.全体の特徴として,き裂長さの増加に伴い,き裂進展速度が速くなる傾向を把握しました.また,試験と解析の結果は良く一致し,本解析モデルを用いてき裂進展試験を模擬できると考えられます.このことから,本き裂進展解析システムは任意断面を対象とした解析にも対応できると判断しました.

図2 試験結果と解析結果の比較

3.可動レール全体モデルのき裂進展解析2)

 今回用いたき裂進展解析システムは,一様断面形状のき裂進展解析のみならず,断面形状が変化する一般的な構造物にも広く用いられています3).そのため,断面形状が変化する実形状の可動レールについても,き裂進展の挙動を推定できると考えました.そこで,図3に示す可動レール全体モデルを用いて,乗り移り部および叉部のき裂進展解析を実施しました.解析条件を表1に示します.き裂進展解析システムはFINAS/CRACKを使用し,ソルバーはMSC Nastranとしました.載荷面は車輪とレールの接触を模擬し,長軸12.0mm,短軸6.0mmのだ円としました.荷重の大きさは,別途実施した走行試験にて測定した輪重の大きさから60kNとしました.載荷位置は,乗り移り部はき裂直上とし,叉部は叉部後端側の基準線側で載荷しました.境界条件として,可動レールと大床板が接する面にばねを設置しました.ばね値は,き裂導入断面のレール底面において走行試験にて発生した主応力の最大値が発生するように決定しました.また,き裂進展則は前章と同様にWalker則を用いました.

図3 可動レール全体モデル
表1 解析条件

 図4にき裂長さと通過トン数の関係を示します.なお,き裂長さは底面に沿ったき裂進展量から算出し,通過トン数は軸重を11トンとして算出しました.き裂進展速度は,き裂長さ20mm程度までは乗り移り部,叉部共にほぼ同じでしたが,その後,乗り移り部のき裂進展速度が速くなりました.これは,図5に示すように,き裂進展に与える影響が大きいき裂近傍のレール長手方向の引張応力が,乗り移り部は底部中央に近づくほど高く,叉部は初期き裂導入部の一部のみが高いためと考えます.また,超音波探傷においてき裂の検知が可能と想定される深さ10mmのき裂が,前述のき裂進展試験にて最も早く破断に至った20mm程度まで進展するのに要する通過トン数は,約3,500万トンでした.

図4 き裂長さと通過トン数の関係
図5 き裂導入断面のレール長手方向応力

4.おわりに

 新幹線用レール鋼製ノーズ可動クロッシングの可動レールにおける2種類の一様断面モデルによるき裂進展試験・解析および実形状モデルによるき裂進展解析を実施しました.今後は,本結果を用いて検査周期を策定すると共に,残留応力を考慮したき裂進展解析を行い,解析精度の向上を目指します.

参考文献

1) 田中ら:新幹線用レール鋼製ノーズ可動クロッシングのき裂進展に関する一考察,土木学会第73回年次学術講演会,2018.9
2) 水谷ら:新幹線用レール鋼製ノーズ可動クロッシングのき裂進展解析,土木学会第74回年次学術講演会,2019.9
3) FINAS/CRACKサンプル&事例紹介: http://www.engineering-eye.com/FINAS_CRACK/case/index.html,2020.3.9閲覧

執筆者:軌道技術研究部 レールメンテナンス研究室 水谷 淳
担当者:軌道技術研究部 軌道構造研究室 及川祐也

列車高速走行時における地盤振動の数値シミュレーション

1.はじめに

 列車走行時における地盤振動は,一般的に6.3~8Hz(低域)、16~25Hz(中域)、40~50Hz(高域)の3つにピークが見られますが,列車速度が300km/hを超えると低域よりもさらに低周波側の4~5Hz付近にピークが現れ,この帯域が主要帯域となる場合があることが報告されています1)
 速達性の向上のため,今後も高速鉄道の最高速度は向上することが考えられます.したがって,高速度域に対応した予測手法や対策工の提案を行う上で,列車高速走行時の鉄道振動の現象解明が重要です.本報では,列車速度が300km/hを超える状況で4~5Hz帯域にピークが現れ,この帯域が主要帯域となる原因について,数値シミュレーションを用いて検討した結果を報告します.

2.解析モデルの概要

 本報の解析では,車両・軌道・構造物系の移動加振解析と構造物・地盤系の振動伝播解析を結合した予測手法2)を用いました.この手法では,移動加振解析により構造物に入力される加振力を計算し,計算した加振力を振動伝播解析に入力として与えることで,沿線地盤の振動を予測します.移動加振解析では車両と軌道・構造物を2次元FEMでモデル化しました.解析には車両走行振動解析プログラムDALIA((株)構造計画研究所)を用いました.振動伝播解析では高架橋を3次元FEMで,地盤を薄層要素法でモデル化しました.解析には3次元動的相互作用解析プログラムSuperFLUSH/3D((株)構造計画研究所)を用いました.今回のモデルは桁式高架橋であり,軌道はスラブ軌道です.加振点はレール締結装置位置ごとに設定し,左右レールの位置を加振しました.出力点は,モデル中央付近にある円柱橋脚の中心から9.5m位置の地盤です(図1).

図1 振動伝播解析の解析モデルと出力点位置

3.数値シミュレーション結果

 数値シミュレーションにより求めた列車速度280km/hの振動加速度レベルを実測記録と併せて図2に示します.図2をみると,絶対値に差はみられますが,シミュレーション結果が概ね実測記録の傾向を再現していることがわかります.したがって,このモデルを用いて検討を行いました.
 数値シミュレーションにより求めた列車速度398km/hの振動加速度レベルを併せて図2に示します.これをみると,列車速度280km/hにおいて3.15Hz帯域にあったピークが、列車速度398km/hでは4~5Hz帯域に移動していることが確認できます.また,そのピークの値は10~15dB大きくなっています.上記の現象<sup>1)</sup>は,この4~5Hz帯域におけるピークの増大であると考えられ,今回のシミュレーションを用いることでその現象が再現できるとわかりました.以下では,シミュレーションを用いて,4~5Hz帯域においてピークが増大する現象の解明を行いました.

図2 実測記録とシミュレーション結果の比較

4.低周波帯域の増幅の現象解明

4.1 加振力特性の検討

 地盤振動は,加振力特性と構造物・地盤の伝播特性により,その応答が決まります.本節では,そのうち加振力の振幅特性の影響について検討しました.移動加振解析により構造物に入力される平均加振力を図3に示します.これをみると,列車速度280km/h時の3.15Hz帯域の加振力の平均値と列車速度398km/h時の4Hzと5Hz帯域の加振力の平均値のパワー和がほぼ同じ値となっており,加振力は大きくなっていません.したがって,加振力の振幅特性は地盤振動のピークが増大する現象の原因ではないと考えられます.一方,列車速度向上と共に,加振力のピークは,3.15Hz帯域から4~5Hz帯域へ移動します。

図3 列車速度280km/h時の平均加振力と398km/h時の平均加振力の比較

4.2 構造物・地盤の伝播特性の検討

 次に,加速度周波数応答関数に着目し,構造物・地盤の伝播特性の検討を行いました.右から1つ目のAタイプの桁の床スラブを加振し,橋脚直近地盤を出力点とした際の加速度周波数応答関数を図4に示します.これをみると,4.5Hz付近にピークがあり,同じ大きさの加振力であれば3.15Hz帯域よりも4~5Hz帯域の方が地盤での振動の振幅が大きくなります.以上より,列車速度280km/hにおいて3.15Hz帯域内にあった加振力のピークが列車速度の増加とともに高周波側の4~5Hz帯域へと移動することで,4~5Hz帯域において振動加速度レベルのピークが増大したと考えられます.ここで,4.52Hzは図1のAタイプの桁の一次曲げの固有振動数にあたります.

図4 シミュレーションによる床スラブから沿線地盤までの振動の周波数応答関数の平均値

5.今後

 今回の知見を用いて,列車高速走行時に対応した対策工の検討等を行います.

参考文献

1) 岩田直泰・横山秀史・芦谷公稔:新幹線高速走行時の地盤振動特性,地盤環境振動の予測と対策の新技術に関するシンポジウム,地盤工学会,2004.
2) 横山秀史・伊積康彦・渡辺勉:3 次元振動解析による地盤および建物振動の予測シミュレーション手法,鉄道総研報告,Vol.29,No.5,pp.41-46,2015.

執筆者:防災技術研究部 地質研究室 野寄真徳
担当者:防災技術研究部 地質研究室 横山秀史,權藤徹

発行者:楠田 将之 【(公財) 鉄道総合技術研究所 施設研究ニュース編集委員会 委員長】
編集者:嶋本 敬介 【(公財) 鉄道総合技術研究所 防災技術研究部 地質】

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