施設研究ニュース

2024年5月号

施設系研究開発特集号

構造物技術研究部

 構造物技術研究部は,「コンクリート構造」,「鋼・複合構造」,「基礎・土構造」,「トンネル」,「建築」の5つの研究室から構成され,職員60名(内,出向受入26名)を擁するグループです.部・室員一同,鉄道運営に貢献する【研究開発】と【実用化展開】を心がけています.具体的には,【災害対策・早期復旧技術】,【維持管理技術】,【建設・改良技術】の研究開発により,鉄道の安全性向上,及び鉄道構造物に関わる業務の省力化・省人化に貢献するとともに,【技術基準整備】に尽力します.
 2024度の主な活動:【災害対策・早期復旧技術】では,災害時の既設構造物の診断・補強技術や早期復旧技術の研究開発に取り組みます.【維持管理技術】では,既設構造物の維持管理技術の研究開発を重点的に進めます.特にデジタルメンテナンスによる鉄道施設のメンテナンスの省力化の研究開発では,軌道・構造物・電力と情報通信を連携させ,車上計測主体のメンテナンス技術の構築に努めます.【建設・改良技術】では,低コスト・安全性向上に繋がる既設構造物の補強設計法,新設構造物の設計法の開発を行います. 【技術基準整備】では,「維持管理標準(トンネル編)」の手引き,及び「設計標準(基礎構造物)」改訂案を取りまとめるとともに,「設計標準(土構造物)」改訂委員会を運営します.加えて2024年2月に通達された,「設計標準(鋼・合成構造物)」の技術基準講習会を実施し,普及に努めます.
 今後とも継続的にご指導,ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします.
(メンバー:神田政幸,嶋本敬介,津野究)

軌道技術研究部

 軌道技術研究部は,軌道構造,軌道・路盤,軌道管理,レールメンテナンスの4研究室で構成され,計46名(うち出向受16名)の体制となっています.部の目標として,【科学的根拠に基づく独創的な研究開発により、安全で持続可能な線路を実現する】を掲げ,①鉄道事業者とのつながりを更に強化,②デジタル技術を活用した検査技術および低コストな施工・補修技術の開発,③科学的な研究アプローチ,④技術開発と情報発信のグローバル化,の4つを基本方針として研究開発を進めます.
 2024年度は,以下の3項目に関する研究課題を重点的に実施します.
(1)デジタル技術を活用した検査の省人化・低コスト化:「携帯情報端末による軌道状態評価システム」,「列車前頭画像による軌道部材の劣化度判定」,「構内用軌道部材状態検査装置」,「腐食レールの非破壊検査手法」,「ガイド波によるレール頭部横裂検査システム」等.
(2)安全性向上のための技術開発:「バラスト軌道横方向の安全性評価手法」,「電気絶縁性能を向上した実用型レール締結装置」,「まくらぎ直結分岐器固定クロッシングの損傷対策用弾性支持構造」,「軌道スラブの劣化度判定法の提案」等.
(3)低コスト化のための技術開発:「バラストの破砕・細粒化を抑制するつき固め補修法」,「レールガス圧接法の自動化」,「テルミット溶接部の凝固割れ検知手法と補強方法」等.
 さらに、これまで培ってきた様々な技術により鉄道事業者の皆様を支援するとともに,軌道技術の国際標準化活動における日本のプレゼンス向上に向けた取り組みについても積極的に進めて参ります.その他,軌道に関するご相談や調査等のご要望がございましたら,お気軽にご連絡ください.
(メンバー:桃谷尚嗣,水谷淳)

防災技術研究部

 防災技術研究部では,「激甚化する気象災害に対する鉄道の強靭化」に貢献する技術の開発を目標とした,雨,風,雪などに起因する災害対策技術,あるいは,地質,地下水などに関わる調査・評価技術,列車走行に伴う地盤振動の調査・評価技術,等に関する研究開発を行っています.当研究部は,部長1名,気象防災研究室10名,地盤防災研究室11名(内,出向受入3名),地質研究室6名の28名と,現在出向中の1名を合わせた総勢29名で構成されています.
 現在実施している将来指向課題では,未曾有の豪雨や強風による災害を対象とし,安全を確保した上でダウンタイムを短縮するための技術開発に取り組んでいます.今年度が最終年度となり,部内外の気象情報を活用した強雨・強風の面的な評価や運転規制への活用,被災した盛土の早期復旧後の恒久対策方法,等の技術開発に取り組みます.また,当研究部が主管する今年度の研究開発テーマとして,実用的な研究開発4件,基礎研究7件を設定しています.これらのテーマのうち,無対策斜面を想定した雪崩検知装置や旧式もたれ壁構造物等の維持管理方法などについて新たに研究開発を進めます.
 このような研究開発のほか,災害時の復旧支援等のコンサルティング業務や受託研究等のご依頼に対しても迅速・的確にお応えし,皆様のお役にたてるよう研究部一丸となって取り組みます.今年度もご支援,ご協力のほどよろしくお願い致します.
(メンバー:布川修,藤原将真)

鉄道地震工学研究センター

 鉄道地震工学研究センターは,研究センター2名(研究室と兼務:1名),地震解析研究室5名(兼務:1名),地震動力学研究室6名(兼務:1名),地震応答制御研究室7名(兼務:3名、出向受:2名)で構成されており,鉄道の地震工学における研究および情報の拠点となるべく,基礎的なものから実用に供するようなものまで,幅広く研究開発や受託・コンサル業務に取り組んでいます.
 2024年1月の能登地震など地震が多発している中,地震発生前から復旧・復興に至るまでの地震に対する備えに対応するため,様々な研究開発を進めております.
 すでにご活用いただいております早期地震検知システムや耐震対策・設計においては,光ファイバー(DAS)の地震観測への適用や次の耐震標準改訂に向けた取り組みなどを進めております.また,機械学習やデータ同化技術などの最新技術の地震工学分野への取り込みを積極的に行い,これまでの枠にとらわれない新しい技術との融合も進めております.
 昨年は関東大震災から100年目という節目の年でした.これまでを振り返り,今後の地震防災について考え直す,非常に重要な機会となりました.当センターにおきましても,Annual Meetingや雑誌RRRの特集記事等を通じて情報発信を行い,地震防災の重要性について皆様と意識の共有をさせていただきました.
 鉄道地震工学研究センターは,今後も地震レジリエントな鉄道の実現を目指してシームレスで革新的な地震対策技術と地震情報の提供を目標に活動していきます.ご相談・ご要望などがございましたら,いつでもご連絡いただければと思います.よろしくお願いいたします.
(メンバー:小島謙一,野田俊太)

コンクリート構造研究室(構造物技術研究部)

 コンクリート構造研究室では,橋りょう,高架橋など,コンクリート構造物の調査,設計,施工および管理に関する研究開発を担当しています.今年度は,以下の課題を中心に研究開発に取り組みます.
(1)設計標準関連ツールの整備
 鉄道構造物等設計標準・同解説(コンクリート構造物)が,2023年1月に発刊されました.今年度は,これに関連する設計計算例や手引きの整備に取り組んで参ります.また,プレキャスト構造や非線形FEMに関する手引き作成,BIM/CIMモデルと鉄道コンクリート構造物性能照査支援プログラムVePPの連携プログラムの機能向上を行います.
(2)研究開発
 コンクリート構造物の安全性向上や設計・維持管理の省力化に関する研究開発を実施します.「コンクリートの水分・拘束条件に応じた混合構造物の長期変形挙動の解明」では,混合橋りょうに生じる変形を予測するための解析手法の構築を目指します.「接合方法に応じた増設RC部材の設計法の開発」では,既設構造物に対して柔軟に対応が可能な更新・改築技術に関する研究を行います.「FEM-骨組ハイブリッド解析による中層梁が損傷したRC高架橋の挙動評価手法の構築」では,2種類の解析手法を適所に適用して連携することで,構造物・構造物群の性能評価の効率化に努めます.「RC杭の地盤による拘束を考慮した破壊挙動の解明」では,地中にある杭の破壊耐力やその後の性能評価を目指します.「構造形式等を考慮した橋りょうの地震時応答算定法の開発」では,軌道や構造物間の連成を考慮した応答評価を推進します.
 また,新設構造物の設計,施工,ならびに既設構造物の変状調査,耐震診断,補修・補強に関する受託,コンサルティングをご要望に応じて実施しますので,お気軽にご連絡ください.
(メンバー:渡辺 健,轟 俊太朗,中田 裕喜,松崎 晋一朗,山上 晶子,田口 隆治,佐藤 祐子,中村 麻美,藤村 将治,小西 亮太,中田 悠貴,石綿 勇人,田中 伸明,鈴木 瞭,橋本 龍)

鋼・複合構造研究室(構造物技術研究部)

 鋼・複合構造研究室は,鋼構造物および鋼とコンクリートの複合構造物の設計,施工,維持管理に関する研究開発を,研究室メンバー7名(博士1名,技術士2名)で担当しています.
 今年度は以下のような研究開発に取り組んでいきます.
(1)技術基準関連ツールの整備
 鉄道構造物等設計標準・同解説(鋼・合成構造物)が2024年3月に発刊されました.今年度の上期には,改訂した設計標準の講習会を開催する予定です.また,設計標準に関連する設計プログラム,設計計算例や手引きの整備に取り組んで参ります.
(2)研究開発
 鋼・複合構造物の延命化,低コスト化,施工性の向上等をキーワードとして,既設構造物の診断,補修・補強等の維持管理に関する研究や,複合構造物(SRC構造物,CFT構造物)の設計法に関する研究を行います.主な研究開発テーマとして,「溶接桁の端補剛材下端における疲労き裂の予防保全」において,支点部の補剛材下端の疲労き裂を簡易に予防する補強方法について検討しています.また,既設鋼橋の支承部の耐震装置として開発した,高力ボルト摩擦接合でのエネルギー吸収を期待した低コストかつ復旧性に優れた移動制限装置の実用展開に向けた検討を行っています.
 この他,現場のニーズに応じてコンサルティング業務,受託業務等も随時実施しています.特に,鋼橋の診断や,変状の原因究明・対策方法の提案を多く実施してきています.また,国鉄時代の鋼鉄道橋の図面を一式取り揃えていますので,維持管理や設計の際に参考としてご利用下さい.
(メンバー:小林裕介,吉田善紀,亀井省吾,笹田航平,増田雄輔,三宅温,櫛谷拓馬)

基礎・土構造研究室(構造物技術研究部)

 基礎・土構造研究室は,地盤もしくは地盤と接する新設構造物の調査・設計・施工のほか,既設構造物の維持管理(検査・補修・補強)を対象に,研究開発業務,コンサルティング業務,技術基準の整備・普及業務を担当します.メンバーは(下記),地盤工学に精通した専門家17名(工学博士4名,技術士3名)からなります.以下に今年度の主な目標を紹介します.
(1)技術基準の整備
 「土構造標準」,「基礎標準」,「土留め標準」および「開削トンネル標準」に付属する「掘削土留め工設計指針」等を所管します.今年度も引き続き鉄道構造物等設計標準・同解説(基礎構造),同(土構造物)の改訂を進めます.関連研究室と協力しながら設計実務をサポートする手引きや設計計算例のほか,設計プログラムの整備に向けた作業を着実に進めます.このほかに「鉄道構造物等維持管理標準(基礎構造物・抗土圧構造物編)」についても,付属資料を追加した改訂版を作成します.また,近年多発する豪雨時における河川橋りょうの洗掘被害低減・復旧方法の選定支援や,崩壊した土構造物の復旧技術に関する最新の研究成果を集約した手引きなどの技術資料の整備を進めます.
(2)研究開発
 今年度も土構造物・基礎構造物の建設・維持管理に関する多岐に亘る研究開発テーマを実施します.土構造物に関しては「強雨災害時の崩壊規模に応じた応急措置方法」を,基礎構造物に関しては「洗掘被災橋梁の緊急診断・補強復旧法」を行い,災害後の早期復旧に貢献できる研究開発を進めます.このほか,「浸透水の影響を受ける損傷小口径管直上盛土の沈下予測法」や,「線路上空建築物における群杭効率の評価手法」により,保守の省力化や建設コストの低減に貢献できる研究成果を創出します.
(メンバー:中島進,松丸貴樹,佐名川太亮,佐藤武斗,笠原康平,倉上由貴,横山大智,山本剛史,曽我大介,阿部寿,町田将規,小松灯,丹羽祥矢,森裕昭,藤澤真一郎,天野友貴,松岡大地)

トンネル研究室(構造物技術研究部)

 トンネル研究室では,鉄道トンネルや線路下横断構造物の設計,施工,維持管理に関する研究開発を担当しています.今年度は,以下のような課題を中心に研究開発に取り組みます.
(1)技術基準類の整備
 「鉄道構造物等設計標準(トンネル)」については,冊子体の設計標準として,2021年に「鉄道構造物等設計標準・同解説(トンネル・開削編)」を,2022年に「同・シールド編」,「同・山岳編」を刊行いたしました.刊行にあわせて,対応する設計計算例,設計に関する手引きをホームページにアップし,皆様に試行して頂いています.このほか,「鉄道構造物等維持管理標準・同解説(トンネル)」に関連して,維持管理標準発刊以降のトンネルの維持管理業務に資する情報を,維持管理標準の補足としてまとめた技術資料の整備を行います.
(2)研究開発
 鉄道トンネルの建設・維持管理に関する研究を関連研究室と協力して実施しています.昨年度に続き,「線路下アーチカルバートの地盤特性の解明」において,線路下アーチカルバートの本設構造物としての設計に必要な、地盤抵抗の長期的な変動特性に関する研究開発を進めます.
 近年,地下利用の多様化に伴い,既設のトンネルに対して,それよりも大きな地下構造物を建設して一体化するような事例が増えておりますが、具体的な検討方法が示されていないため,経験的な判断で地盤条件によらず一律の対策を講じており,良好な地盤では対策が過大となるという課題がありました.そこで,施工過程を考慮した地盤特性の評価法・解析法を開発することにより建設コストの削減を目的として,新規テーマ「施工過程を考慮した地下構造物の構造解析法」を立ち上げました.
 昨年度までに,トンネル覆工表面撮影画像からAIにて変状を抽出して健全度判定し,現地で投影する技術を開発しました.しかし,打音判定の入力が必要となる剥落健全度の判定は自動化できていないという点が課題として残りました.このため,打音判定を自動化するとともに,ひび割れ情報等を用いて,要打音箇所を1mメッシュで自動抽出する手法を提案することを目的として,新規テーマ「トンネルの剥落健全度判定の自動化」を立ち上げました.
 この他,新幹線トンネルの設計・施工法や,既設トンネルの健全度評価と対策,近接施工の影響評価,トンネルの設計,施工,維持管理に関する様々な課題については,受託・コンサルティングを通じて随時対応していきます.
(メンバー:野城一栄,仲山貴司,嶋本敬介,牛田貴士,牛田智也,真鍋啓輔,三輪陽彦,木下果穂,鈴木雅之,大江敦哉,石井貴大,佐伯貴士)

建築研究室(構造物技術研究部)

 建築研究室では,駅を中心とした鉄道建築や設備の構造・計画分野において安全性,利便性の向上を目指した研究開発を担当しています.今年度は以下のような課題を中心に研究開発に取り組みます.
(1)旅客サービス分野
 今年度からの新規研究開発テーマ「プラットホーム上の乗降分布推定手法の開発」,「汎用センサを用いた旅客流動のリアルタイム把握手法」を実施し,昨年度開発した駅構内のOD交通量推計システムの知見も活用しながら,プラットホームの規模検討にも活用可能な乗降分布の推定手法を開発する他,旅客の過度な滞留を抑止するための誘導案内も視野に入れた,汎用センサ活用によるリアルタイム旅客流動把握手法の開発に取り組みます.
(2)安全分野
 昨年度に引き続き,研究開発テーマ「線路上空建築物における群杭効率の評価手法」を実施し,群杭および地盤を再現したFEM解析により複数の杭間に生じる相互作用を検討することで,線路上空建築物を対象とした杭頭固定度を考慮した群杭効率の評価手法を開発します.また,線路上空建築物を中心とした,推定地震動や建築物の諸元から簡易に振動特性や地震時応答を推定する手法の研究開発も継続して進めます.
 この他,鉄道建築や駅設備の構造安全性や旅客流動と駅計画に関わる様々な課題について,コンサルティングや受託等を通じて随時対応していきます.
(メンバー:山本昌和,柴田宗典,清水克将,石突光隆,対馬銀河,土井一朗,谷嶋航)

軌道構造研究室(軌道技術研究部)

 軌道構造研究室は,分岐器類,レール締結装置,伸縮継目,接着絶縁レールおよびロングレールなどに関する研究開発を担当しています.今年度は,以下の研究開発テーマを新規に設定して取り組みます.
(1)車上測定によるレール継目の保守の優先度判定
 レール継目部は軌道の不連続箇所であることから著大輪重が作用し,軌道の弱点箇所となっています.現状では部材が損傷した場合に交換するといった保守を実施しており,輸送障害の削減および保守管理の省力化に向けた取り組みが求められています.近年,車上で測定したデータを活用して軌道状態を把握する手法の実務への適用が進んでいます.そこで,車上データから応力状態を推定することで保守の優先度が高いレール継目部を抽出する方法を開発し,損傷前に部材を交換することで輸送障害を削減するとともに,効率的な保守管理の実現を目指します.
(2)分岐器における設計作用の算定法
 現行の分岐器における設計の考え方には経験的なものも含まれており,必ずしも力学的根拠に基づいたものではありません.そこで,本テーマでは分岐器の設計において必要となる設計作用の算定法の開発に取り組み,分岐器における車両と軌道の相互作用をシミュレーションにより明らかにするとともに,分岐器に作用する力を簡易に推定する手法を構築します.
 この他,合成まくらぎ直結分岐器における固定クロッシングの損傷抑制対策,電気絶縁性を向上したレール締結構造の実用化,中立温度の経時変化を考慮した座屈安定性評価法の開発なども行います.軌道構造に関することでご相談等がございましたらお気軽にご連絡ください.
(メンバー:及川祐也,西宮裕騎,玉川新悟,清水紗希,塩田勝利,大高亮輔,堀雅彦,上田将司,山岡大樹,松尾淳史,宮下綾乃,細見章人,佐藤弘規)

軌道・路盤研究室(軌道技術研究部)

 軌道・路盤研究室は直結系軌道(スラブ軌道,弾性まくらぎ直結軌道,既設線省力化軌道),バラスト軌道および路盤・路床を中心とした研究開発を担当しています.今年度は,以下の研究開発テーマを重点的に取り組みます.
(1)長寿命化対策後のスラブ軌道てん充層の状態評価
 設計耐用年数50年を迎えるスラブ軌道を,今後も長期にわたり供用していくため,耐久性に優れたてん充層補修材が必要となります.そこで,鉄道総研で開発したスラブ軌道てん充層の劣化進展解析プログラムを補修後の劣化も予測できるように改良し,劣化予測に基づいた新たな補修材を開発します.また,消雪用の散水や防振用のスラブマットの他,日射の影響等を考慮できるように劣化進展解析プログラムのバージョンアップも行います.
(2)道床バラストの破砕・細粒化を抑制するつき固め補修方法
 つき固め作業を行うことでバラストの破砕・細粒化が進行することを明らかにしてきましたが,タイタンパの形状や周波数等が破砕・細粒化に与える影響あるいはつき固め後のバラスト密度に与える影響については十分に明らかにされておりません.そこで,バラストの沈下量を従来と同等以下に抑えながら,バラストの破砕・細粒化を半減させることが可能な新たなつき固め方法を開発します.
 また,S型弾性まくらぎ直結軌道,超微粒子セメントグラウトを用いたてん充道床軌道,噴泥したバラストの低強度安定処理工法,発生バラストを活用した路盤改良工法,バラスト劣化状態検査装置(バラストチェッカー)等,既開発技術の普及も推進していますので,導入の際にはご連絡をお願いします.
(メンバー:高橋貴蔵,中村貴久,伊藤壱記,渕上翔太,野田遼斗,稲葉紅子,髙橋成汰,景山隆弘,北条優,廣尾智彰,田島史花)

軌道管理研究室(軌道技術研究部)

 軌道管理研究室は,「車両が軌道上を走行した際に発生する現象の把握・予測・改善」をキーワードに,軌道変位やレール凹凸等を測定する装置・システムの開発と,軌道状態に関する検査・確認(Check),診断・評価(Action),保守計画(Plan),保守(Do)に関わる研究開発を担当しています.
 今年度は,以下の研究開発テーマ等について重点的に実施する予定です.
(1) 軌道状態の測定,検査,診断技術の開発・実用化
 安全性の高い軌道の維持管理を実現するために,携帯情報端末を活用して列車巡視時等に安価かつ簡易に列車動揺と前方画像を取得することで異常箇所を検知する「列車巡視支援アプリTrain Patroller」および「簡易線路巡視システム」の開発を進めます.また,軌道の検査・診断業務を効率化するために,車上から撮影した軌道の画像から木まくらぎの劣化状態を診断するシステムの実用化とPCまくらぎやレール締結装置の状態診断への機能拡張,トロリー式の構内用軌道部材検査装置の開発,車両床下画像から軌道設備の健全度を評価可能な画像処理アルゴリズムの開発を行います.
(2)軌道検査データ管理の効率化による生産性向上
 軌道保守管理データベースシステム「LABOCS」をベースとした各種検査の分析法・実務への活用法の開発と,地域鉄道事業者への「LABOCS-MATE」の展開を進めます.また,数理的手法を用いたレール交換計画策定支援システムの開発に向けて,レール傷発生件数を推定可能なモデルの構築を進めます.
(メンバー:坪川洋友,田中博文,清水惇,吉田尚史,松本麻美,斉藤大樹,高原恵男,杉山祐耶,山根悠司,木村瞭太,大石知希)

レールメンテナンス研究室(軌道技術研究部)

 レールは車輪を直接支持,案内して列車を安全に運行させる非常に重要な部材であり,検査や交換・補修といったメンテナンスが欠かせません.このような中,レールメンテナンス研究室では,レール溶接法やレールきずの補修法,さらにレールおよびレール溶接部の検査,損傷検知技術を含むレールの維持管理全般に関する研究開発に取り組んでいます.今年度は,以下の研究テーマを重点的に実施します.
(1)施工コストを削減可能な自動レールガス圧接装置の開発
 少子高齢化に伴うレール溶接技術者の減少,およびレール溶接コスト削減の観点から,低コストで機動性の高い自動レールガス圧接機の実現を目的とし,昨年度までに提案した施工プロセスを簡略化したレールガス圧接手法を採用し,更にレール溶接作業の全工程の自動化を達成する自動レールガス圧接委および自動仕上げ装置を提案します.
(2)ガイド波を用いたレール頭部横裂検査システムの開発
 頭頂部に進展した水平裂の下側に存在する折損リスクの高いレール頭部横裂は,レール探傷車での検知が困難であるため,現地での二次検査に多大な労力を要しています.本研究では,二次検査の大幅な効率化を達成するため,ガイド波を用いた保守用車等で利用可能な頭部横裂検査システムを開発します.
(3)レール底部からの損傷を防止するための非破壊検査手法
 漏洩磁束等の電磁気学的非破壊検査技術に着目し,現行のレール頭頂面からの超音波探傷では検知が非常に困難となっているトンネルや踏切内での腐食によって生じるレール底部領域の損傷(疲労き裂や孔食,断面減少等)を検知する非破壊検査手法の適用可能性について検討します.
 その他,レールおよびレール溶接部の損傷原因調査,レール溶接技術者の技量検定試験,各種講習会を通じた技術支援,さらには,レール交換周期の適正化を目的としたレールの寿命評価も行います.
(メンバー:弟子丸将,寺下善弘,伊藤太初,細田充,佐野国光,水谷淳,髙𫞏 信貴,小納谷優希,髙山大陸)

気象防災研究室(防災技術研究部)

 気象防災研究室では,主として強風災害,雪氷害などの気象災害の防止・軽減に向けた研究開発を行っています.今年度,取り組む研究テーマについて以下に紹介します.
 将来指向課題:「強雨・強風時の運転中止判断手法」と「強雨・強風時の運転再開判断手法」では,面的風速評価手法により強風災害リスクをリアルタイムに評価するとともに運転規制後の運転再開時刻を評価できる手法の開発を進めています.また,「新幹線着落雪リスク評価手法の開発」では,走行中の着雪成長と落雪リスクを評価する手法の開発を進めています.
 研究開発テーマ:「雪崩警備の要否判定支援手法の開発」では斜面積雪の安定度評価手法を用いた雪崩警備手法の開発,「車輪巻き上げによる着雪メカニズムの解明」では基礎実験を通して車輪付近の着雪現象の解明,「偏波レーダー情報を用いた降雪密度の評価手法」では偏波レーダーを用いて密度情報を有する降雪量の面的評価手法の開発を進めています.この他,チャレンジングな研究として「衛星データを活用した斜面安定度モニタリング手法」で,衛星データによる地盤変動量の推定と斜面安定度評価手法を組み合わせたモニタリング手法の開発に取り組んでいます.
 このような研究開発の他に,風や雪・寒冷に起因した災害の調査に関する技術指導などのコンサルティング業務,鉄道沿線での気象観測,雪崩危険度評価などの現地試験などの受託業務を行っています.
 以上の研究開発や受託等は,新潟県南魚沼市にある塩沢雪害防止実験所の各種の試験装置を活用して進めています.ご相談等ございましたらお気軽にご連絡ください.
(メンバー:鎌田慈,飯倉茂弘,荒木啓司,福原隆彰,佐藤亮太,高見和弥,辻滉樹,栗原璃,京增顕文[国立],高橋大介[塩沢])

地盤防災研究室(防災技術研究部)

 地盤防災研究室では,斜面災害や河川災害に関する研究や土工設備,河川設備の維持管理技術に関する研究開発を進めています.以下に今年度実施する主な研究テーマをご紹介します.
 斜面災害関連のテーマとして,最終年度となる将来指向課題の子テーマ「強雨・強風時の運転再開判断手法」では,地形条件等を考慮して斜面と盛土の降雨耐力とともに,斜面からの土砂の到達危険性を一体的に評価し,降雨時の運転規制の早期解除を支援する手法の開発を目指します.また,新たな研究開発テーマ「旧式もたれ壁構造物等の維持管理方法の検討」では,旧式もたれ壁構造物等を対象として、背面地盤の状態把握に関する新しい調査手法を提案するとともに、地盤状態に応じたもたれ壁構造物等の安定性評価手法を開発することを目指します。その他,新たな研究開発テーマ「施工性を向上した低貫入抵抗型排水パイプの開発」にも取り組みます.
 河川災害関連のテーマとして,「河川橋脚の健全度判定システムの実用化」では,これまでに開発・改良してきた固有振動数同定手法を実装した総合的な洗掘危険度の判定が可能なシステムの実用化を目指します.
 当研究室では,研究開発以外に斜面崩壊,土石流等の斜面災害および橋りょうの局所洗掘,河川氾濫等の河川災害に関するコンサルティング,あるいは現地調査に基づく鉄道沿線の盛土・切土及び自然斜面の健全性評価および適切な対策工の提案,解析による広域的な斜面の耐降雨性評価等の受託業務を行っております.何時でもお気軽にご相談ください.
(メンバー:渡邉諭,高柳剛,加藤豊,飯久保雄太,馬目凌,藤原将真,入栄貴,西脇博也,赤塚洋介,鈴木亜季,小原慶吾)

地質研究室(防災技術研究部)

 地質研究室は,鉄道施設の建設・保守に関連した地形・地質的な課題に関する研究開発,受託,コンサルティングを行っています.具体的には岩盤斜面の安定性,トンネルの建設・供用時の地山の変状問題,土木工事に係る地下水問題,地盤振動の評価・予測,道床バラストの石質に関する問題などに取り組んでいます.今年度の主なテーマを紹介します.
 「地盤振動対策工の検討に用いる構造物と地盤の個別解析方法」では,地盤振動対策工の検討方法として現状よりも実務での適用性が高い方法を提案するため,PCで解析可能な構造物と地盤の個別解析の検討を進めています.岩盤斜面の落石ハザードマップの評価精度向上の基礎研究として,昨年度終了した「割れ目を含む岩石の強度低下予測手法」で得られた成果を受けて,今年度から「岩石中の割れ目の進展性評価手法」を開始しました.また,維持管理上問題となり得る地質・地盤リスク要因が分布する範囲を,地形情報等から抽出する方法の提案を目指して,同じく今年度からテーマ「地形情報等を用いた地質・地盤リスク要因の抽出方法」を開始しました.
 これらのテーマとともに,災害への迅速かつ的確な対応と受託研究の着実な実施を推進しますので,関連技術に関するお問い合わせを含め,お気軽にご連絡ください.
(メンバー:横山秀史,浦越拓野,西金佑一郎,野寄真徳,河村祥一,久河竜也)

軌道力学研究室(鉄道力学研究部)

 軌道力学研究室では,車両/軌道/構造物間の動力学(ダイナミクス)と車輪/レール間の接触力学(トライボロジー)を核とした研究開発を行っています.研究室は,土木工学,機械工学の専門家で構成され,現地試験,数値シミュレーション、室内試験等を活用し,軌道の諸問題の解決に取り組んでいます.今年度は,主に以下の研究内容に取り組みます.
(1)PCまくらぎ・縦まくらぎ関係
 「列車荷重の繰返し作用の影響を考慮したPCまくらぎの耐荷力評価」,「滞水箇所におけるPCまくらぎ底面の摩耗メカニズムの解明」の2件の新規テーマを開始します.これらのテーマは基礎研究テーマであり,経年や通トンの増加に伴うPCまくらぎの耐荷力低下や摩耗のメカニズムなど,基礎的な現象解明に取り組みます.また,昨年度レール継目部に敷設した縦まくらぎの動的応答測定等を継続し,レール継目部の軌道変位抑制効果を定量化します.
(2)レール損傷関係
 ゲージコーナき裂の予防対策法を提案するため,き裂発生予測モデルの構築に取り組みます.小型の二円筒試験機による転動疲労試験を実施し,摩耗進展とき裂発生を定量的に評価します.それらの結果をもとに,摩耗進展とき裂発生の競合を考慮した,き裂発生予測モデルを構築します.さらに,大型転動疲労試験による転動疲労試験を実施し,モデルの妥当性検証を行います.
(3)数値シミュレーションを用いた受託業務
 本研究室で開発した離散体シミュレーション手法による道床交換後の初期沈下に与える徐行速度の影響に関する検討や,大規模FEMによるPCまくらぎの損傷メカニズムの検証等を行っています.
(メンバー:渡辺勉,河野昭子,辻江正裕,浦川文寛,箕浦慎太郎,幸野真治)

構造力学研究室(鉄道力学研究部)

 構造力学研究室は,車両走行安全性向上,維持管理効率化,災害低減,環境調和,トータルコスト低減を可能とする構造物や軌道のあるべき姿を追求することを主な研究目的とし,これを実現させるために必要なシミュレーション技術,構造物のセンシング・モニタリング技術,新たな構造や評価法の開発等に取り組んでいます.今年度は,主に以下の業務に取り組みます.
(1)シミュレーション技術の開発
 地震時の構造物上の列車の挙動,特に脱線後の車両と軌道部材の接触を考慮した列車の脱線・逸脱挙動,列車通過時のPCまくらぎの動的挙動を評価できる解析手法の開発に取り組みます.
(2)車上計測データを用いた構造物の異常検知手法の開発
 車上計測データを用いた桁の列車通過時のたわみ推定や支承あおり検知手法を開発するため,数値解析による検討を進めとともに,車上計測データや現地試験による提案手法の妥当性の検証を行います.
(3)新たな構造や評価法の開発
 レール継目等の衝撃輪重発生時のPCまくらぎの動的応答現象の解明について検討を進めます.また,橋梁の地震時走行安全性向上のための低コストダンパーブレースの開発や,列車通過時挙動による洗掘要注意橋梁抽出のための基礎的なメカニズム解明の研究も行っていきます.
 また,構造物診断用非接触振動測定システム「UドップラーⅢ」の販売を開始しました.従来より測定時の操作性の向上を図っています.構造物の振動や変位等の測定にご活用いただけると幸いです.
(メンバー:池田学,後藤恵一,徳永宗正,松岡弘大,北川晴之,服部紘司)

地震解析研究室(鉄道地震工学研究センター)

 地震解析研究室は,鉄道の地震レジリエンスを高めるために,地震発生時や地震発生後の対応・対策について列車運転規制を中心とするソフト的なアプローチから研究開発業務,受託業務およびコンサルティング業務を行っています.
(1)地震発生時の対応・対策
 機械学習法の適用した精度の高い早期地震諸元推定手法や,近地地震に対する即時性の高い警報出力手法について研究開発を行っています.また,DASと呼ばれる光ファイバーを用いた新たなセンシング技術や海底水圧計情報の早期地震警報への適用に向けた検討も進めています.
(2)地震発生直後における対応・対策
 鉄道沿線の正確な地震動把握に向けて,地形・地盤条件を考慮した地盤増幅特性の評価に関する研究開発を行っています.また,DASによる計測により,鉄道沿線の地震動を詳細に把握する手法の検討も行っています.
(3)受託業務およびコンサルティング業務
 受託業務として,鉄道地震工学研究センターの他の研究室と連携を取り,事業者個別の鉄道地震被害推定情報配信システム(DISER)の開発等を行っています.また,事業推進部の地震防災システム課と連携して,早期地震防災システムの改修などを行っています.加えて,コンサルティング業務として,地震計の新設や移設の候補地評価や,地震時の列車運転規制の導入や運用法に関する技術指導などを実施しています.
 上記の(1)および(2)の成果は,新幹線の早期地震防災システムや,鉄道総研のDISERなどに反映していく予定です.地震解析研究室は,より適切な地震時の列車運転規制の実施に向けて,現場のご要望に対して迅速に対応していく所存です.
(メンバー:是永将宏,岩田直泰,野田俊太,片上智史,森脇美沙)

地震動力学研究室(鉄道地震工学研究センター)

 地震に対する鉄道構造物への影響を評価するには地震による地盤内の挙動を正確に求めることが重要となります.地震動力学研究室は「地盤」と「地震」をキーワードに,断層破壊から深層・表層地盤中の地震動の伝播,地下構造物や土構造物等の地震時挙動までの分野について,将来を見据えた先駆的な研究から実務的な技術開発まで幅広い研究開発活動を行っています.
(1)将来を見据えた研究開発
 特殊な地盤条件での構造物の耐震設計や地震対策では、有効応力解析などの高度な解析手法を適用する場合があります。ただし、解析結果が解析者のパラメータ設定に依存するなどの理由で信頼性が不明確であり、実務適用でのハードルとなっていました。そこで、解析手法の妥当性・信頼性を定量的に評価する手法の開発を本年度からスタートします。また、地点依存の設計地震動の算定おいて一つの地震観測記録から不確定性を考慮した多数の模擬地震動を作成する手法,機械学習を用いた地震発生直後の沿線地震動評価手法など,耐震設計・耐震対策に関する将来を見据えた研究開発を進めております.
(2)実務的な技術開発
 軟弱地盤における地震時の地盤挙動評価法や液状化判定法,特殊条件下の盛土の応答値算定法,不整形地盤における地震動評価法など,耐震設計に直結した技術開発にも取り組んでいます.近年,1~2m程度の薄い液状化層が存在する場合,盛土の沈下量算定やボックスカルバートの浮き上がり判定,基礎の液状化設計等で過剰な設計になる場合があることが分かってきました.このような薄層液状化層が各種構造物に与える影響について過去2年間で実験的な観察を進めており,解明したメカニズムを元に設計手法の合理化を進めます.また,低コストで合理的な液状化対策法(脈状地盤改良工法)について,更なる低コスト化を目指した研究開発を新たにスタートさせます。
(3)耐震設計等の技術支援業務
 鉄道技術推進センターや構造物技術研究部,鉄道力学研究部等とも連携を取り,設計地震動の設定や土構造・トンネル等の地震時挙動評価,耐震設計や耐震対策検討,復旧検討業務,全線評価等の技術支援も随時行っています.また,国外においても地下構造物の耐震設計や液状化判定に関する技術指導を実施しています.
(メンバー:井澤 淳,土井達也,月岡圭吾,伊吹竜一,杉山佑樹,小野寺智哉)

地震応答制御研究室(鉄道地震工学研究センター)

 地震応答制御研究室では,構造物や電車線路設備,車両など,鉄道システム全体の地震時安全性,復旧性,さらには危機耐性の向上に資する技術開発を行っています.
(1)耐震設計,耐震診断の高度化を目指した研究開発
 地震発生後,点検や復旧に伴う鉄道のダウンタイムを最小限に留め,早期に運転再開を行うことが社会的に強く求められています.また今後の耐震設計,耐震診断,耐震補強を考える場合には適材適所の合理的,経済的な設計・診断の実現が必要です.さらには想定を上回る事象の発生が否定できない現在,このような事態に対する備えも重要になります.
 これらの各課題の解決,高度化に資する研究開発を推進します.具体的には,耐震設計・耐震診断時の安全係数の適切な設定手法の開発,危機耐性の実務的評価法の構築,津波や断層変位といった地震随伴事象に対する構造物の性能照査法の確立等を実施します.これらの成果を統合することで,地震に対してより安全・安心な鉄道の実現を目指します.
(2)鉄道路線の地震時挙動シミュレーションの高度化
 最新の計算技術を最大限活用することで,これまで実現困難であった鉄道路線全体の地震時挙動の詳細な評価が可能になってきています.これにより,地震対策の優先順位付けや,弱点箇所の抽出,地震後の復旧戦略の策定などをより適切に実施可能となります.これに資する各要素技術の開発を引き続き推進します.それとともに,実施事例が増えてきている構造物等のモニタリングデータとシミュレーション結果を有機的に結合する技術の開発や,電化柱・車両を含めた統合シミュレーション技術の開発も実施していきます.
(3)耐震設計・耐震診断に関する各種技術支援
 特殊な箇所,特殊な構造物,特殊な状況における耐震設計や耐震診断・耐震補強など,耐震対策全般に関わる技術サポートも積極的に実施します.耐震設計・耐震診断・耐震補強等でお困りの際はお気軽にご相談下さい.
(メンバー:坂井公俊,葛田理仁,和田一範,近藤優一,久保大樹,田中仁規,山下大輝)

発行者:柴田 宗典 【(公財) 鉄道総合技術研究所 施設研究ニュース編集委員会 委員長】
編集者:稲葉 紅子 【(公財) 鉄道総合技術研究所 軌道技術研究部 軌道・路盤】