施設研究ニュース

2018年1月号

画像・IT研究室のご紹介

1.はじめに

 鉄道総研では、画像解析技術や、ビックデータ解析・ディープラーニングに代表されるITの活用に関する研究開発をより強力かつスピーディーに推進することで鉄道事業者のニーズに迅速に応えるとともに、さらに新しい技術を提案するため、信号・情報技術研究部に「画像・IT研究室」を新たに設置し、昨年12月1日から活動を開始しました。

2.研究室設置の目的

 より安全で可用性が高く、かつ少ない要員で運用できる鉄道システムの実現に向けて、ICTを活用した鉄道設備の監視・検査の省力化や自動化に関する研究開発が個々の技術分野で進められていますが、画像解析技術やITは高度化のスピードが速く、また分野横断的な取り組みの必要性が高まっています。

 そこで、施設分野をはじめ電気設備や車両、人間工学など個々の技術分野で蓄積してきた画像解析技術とITの活用に関する知見を結集させ、鉄道総研の技術力の最大化と研究開発のスピードアップを図るため、情報通信関連の研究開発を担当している信号・情報技術研究部に「画像・IT研究室」を設置することになりました。

3.画像・IT研究室が担当する技術分野と体制

 画像・IT研究室では、鉄道に活用するための画像解析処理技術およびITの高度化に取り組むとともに、施設の状態監視や列車運行時の乗務員支援への画像解析技術の適用と、保守の効率化や列車の運行制御等へのITの適用に関する研究開発を推進し、革新的な成果の創出にチャレンジします(図1)。

 画像・IT研究室には研究室長はじめ13名の職員が所属しています。このうち10名は関連する研究部からの兼務となっており、施設関係では構造物技術研究部(鋼・複合構造研究室)と軌道技術研究部(軌道管理研究室)から3名が画像・IT研究室兼務としてメンバーに加わっています。

 なお、この研究室は、研究室のメンバー同士はもちろん、画像やITに高い関心をもつ各技術分野の研究者ともオープンに議論できる場としても活動していきます。

 画像解析技術やITの活用に関する課題等がありましたら、主管研究部と当研究室とが協同で対応してまいりますので、お気軽にご相談下さい。

(メンバー:鵜飼[研究室長]、近藤[動力システム 本務]、小川[水素・エネルギー研究室 本務]、小林[鋼・複合構造研究室 本務]、松村[集電管理研究室 本務]、坪川[軌道管理研究室 本務]、清水[軌道管理研究室 本務]、長峯[JR課 本務]、山下[集電力学研究室 本務]、中川[人間工学研究室 本務]、鈴木[人間工学研究室 本務]、中曽根、向嶋)

(記事:信号・情報技術研究部  川﨑邦弘)

鉄道鋼構造物の検査・修繕の手引き

1.はじめに

 鋼橋りょうの維持管理は、平成19年1月に国土交通省鉄道局長より通達された「鉄道構造物等維持管理標準」(以下、維持管理標準)に基づき実施されています。維持管理標準では、検査から措置までの維持管理について性能規定化の流れに沿って体系化が図られているとともに、標準的な維持管理手法が示されています。一方で、鋼橋りょうについては構造詳細が多岐にわたるため、他の鉄道構造物と比べ検査箇所が多いうえに複雑であり、また多様な変状に対して適切な措置を選択することが難しいといった実情があります。このため、特に鋼橋りょうの維持管理に対しては、維持管理標準にくわえて個別具体的な検査及び措置の方法に対する情報が求められています。

 このような背景のもと、鋼橋りょうを効率的かつ効果的に維持管理することを目的として、平成25年度から平成27年度までの3年間にわたり、学識経験者、各鉄道事業者、鉄道総合技術研究所の関係者等で構成される「鉄道鋼・合成構造物の維持管理に関する委員会」を設置しました。「鉄道鋼構造物の検査・修繕の手引き」(以下、手引き)は、この委員会での審議を経て、鋼橋りょうの維持管理実務に資する情報を集約し、維持管理標準の補足としてまとめたものです。

2.手引きの概要

 手引きの目次を表1に示します。前述のとおり、鋼橋りょうの維持管理実務に資する情報を集約した手引きとなっているため、最初から最後まで順をおって読んでいく構成ではなく、場面に応じて必要な項目(表1)を参照して頂くような構成となっております。なお、手引きの章構成は,維持管理標準の章構成と同じにしており、例えば4章(No.4-1~4-4)については全般検査に関する内容がまとまっています。また、共通(No.共-1~共-4)については、いくつかの章に共通して関係する内容であり、付属資料(No.付-1~付-6)については、データ集となり得るものが配置されています。

 個々の項目の内容については、前記委員会での意見や、鉄道事業者の維持管理実務に携わる方へのヒアリングから得られた要望を基に選定しました。

3.項目の概要

 手引きは全部で400頁ほどもあり、概要であっても紙面の都合で表1の全ての項目を紹介できないため、一部の項目について以下に概要を示します。

【No.共-1 変状概要集】

 変状概要集では疲労き裂16種、腐食9種、支承部の変状5種について、それぞれ①変状の概要、②変状の原因、③検査の方法、④措置の方法、⑤参考文献を取りまとめています。①変状の概要では、さらに[変状の発生性状]、[変状が進行した場合の被害]、[変状が発生する箇所]について示しており、検査における変状の抽出や、健全度の判定に資する情報を集約しています。また②変状の原因については、原因を知る事によって、変状の発生しやすい箇所の理解を深めるとともに、措置の方法を選定する上での一助になることを狙っています。③検査の方法、④措置の方法については具体的な事例を示すとともに、その際の注意点についても示しております。なお、一つ一つの変状に対し概ね4頁ほどであり、かつ箇条書きを中心として記載しているため、読みやすい構成となっておりますが、全体では30種・120頁ほどのボリュームで,手引きの中での中心的な項目となっています。

【No.共-2 健全度の判定事例集】

 「鉄道構造物等維持管理標準・同解説(構造物編 鋼・合成構造物)」の付属資料3に掲載されている「健全度の判定事例集」を更新したものになります。判定例の一例を図1に示します。更新は大きく2種類実施しており、一つは判定区分の解説の追記です(図1の一番右の欄)。この解説では、「当該部材の役割」を記載することで変状によってその役割が消失した場合の被害を想定しやすくすること、「判定の違い」を記載することで極力迷わずに判定できることを狙いとしています。もう一つの更新は判定例の見直しで、近年の知見や被害事例などを踏まえて、より実情にあった判定ができることを狙いとしました。

4.おわりに

 手引きは、平成29年11月に国土交通省の地方運輸局から各鉄道事業者に配布されたところです。

ここでは紹介できなかった項目も含め是非ご一読頂いたうえで、検査や修繕の実務において活用頂き、手引きが鉄道鋼橋りょうの適切な維持管理の一助となって頂ければ幸いです。

(記事:構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室  小林裕介)

テルミット溶接部の流動・凝固解析モデルの構築

1.はじめに

 テルミット溶接は、るつぼ内での酸化鉄とアルミニウムの酸化還元反応(テルミット反応)によって発生した溶融鉄を、図1に示すようにレールとレールの間に取り付けたモールド(型枠)内に流し込む溶接法です。この溶接法は、良好な施工性と機動性を有し、日本で適用されている4つのレール溶接法1)の中で最も多く施工されています。JRグループにおける2015年度のテルミット溶接の施工数は約25,000箇所で、施工比率は44%を占めるに至っています。また、テルミット溶接部の最近10年間の折損率はわずか0.004%程度と年々減少しており、その信頼性は高く評価されるようになっています。

 その一方で、線路内における新品レールと頭部が摩耗した経年レールの高さが異なるレール同士の溶接施工において、表面きずやレール底部領域に凝固割れなどの内部きずが発生する事象が報告されています。鉄道総研では線路内での施工における溶接欠陥の発生事象を減少させるため、複数の溶接条件での溶接試験を実施することで、これらの溶接欠陥を再現して、発生要因を解明するとともに防止策を提案してきました2)、3)。しかしながら、溶接試験は非常に手間を要するとともに、得られる情報が断片的であるため、数値解析を利用して溶鋼の凝固形態などを予測する取り組みを開始しています。

2.解析モデル

 テルミット溶接における凝固解析には、高精度鋳造解析ソフトウエアProCAST(日本イーエスアイ株式会社製)を用いました。本検討では、溶接施工時の温度履歴から溶鋼の凝固形態を予測することとしましたが、そのためにはテルミット溶接プロセス全体を網羅する必要があることから、流動解析および熱解析モジュールによる解析手法を採用しました。また、多元系状態図計算ソフトウエアPandatの機能を取り込んだ材料物性値作成モジュールとProCASTの標準データベースを用いて、溶鋼、レールおよびモールドの温度依存性を有する材料物性値を決定しました。

 テルミット溶接の解析モデルは、図2に示すようにモールドとレールを一種の鋳型として、その隙間に注入される高温の溶鋼によってレールが溶融することを考慮する必要があります。しかしながら、ProCASTは、湯流れ・凝固のプロセスだけでなく、変形、応力、割れおよび組織変化などを取り扱うことが可能な鋳造解析ソフトウエアであるものの、鋳型の溶融現象についての検討事例はありません。そこで、本解析ではレールと注入される溶鋼の材料物性値にほとんど差がないことに着目し、レールと溶鋼を同一材料と見なして、レールと溶鋼間の熱伝達を考慮せずに熱抵抗をなくす(瞬間的に熱が伝わる)ことでレールの溶融を再現することとしました。

 図3に形状モデルを基にレール、モールドとプラグおよび溶鋼の各部材を設定した解析モデルを示します。メッシュサイズは、温度変化が大きくなる開先内およびレール端部(開先面近傍)で細かく、外側に向かうに応じて粗く設定しています。なお、計算時間短縮の観点から、1/4モデル形状としました。

3.解析結果および妥当性の評価

 図4に本解析結果で得られたレール開先面の温度履歴を、浸漬型光ファイバー温度計で測定した実測値と比較して示します。構築したテルミット溶接部の解析モデルによる温度履歴は、凝固が既に完了した1200℃以下の温度域で傾きがやや異なりますが、溶鋼の注入から凝固までの過程において、実溶接部の温度測定結果と概ね一致していることがわかります。

 図5に本凝固解析によって得られた溶鋼の流動状況(a図)および充填された溶鋼によって溶融したレール開先面の状況(b図)を示します。これより、プーリングプラグ上に流れ落ちた溶鋼は、モールドの形状に沿ってレールの頭部および腹部を溶融するように注入されていることが見てわかります。さらに、溶鋼がモールド内に充填される途中段階において開先面に注目すると、レール底部足部が溶融しにくいことが示唆されます。この部位は,図5(c)に示す過去にレールの予熱不足(予熱条件不良)などによって生じた融合不良の発生領域にほぼ対応しており、本解析モデルでテルミット溶接に関する溶融、凝固現象を可視化できていると判断します。

4.おわりに

 本検討では、テルミット溶接部の凝固形態を予測可能な解析モデルを構築しました。今後は、溶接残留応力を含むテルミット溶接現象を予測可能な解析モデルの構築を目指したいと考えています。

【参考文献】

(記事:軌道技術研究部 レールメンテナンス研究室  寺下善弘)

溝形鋼等から吊られた天井の設計用地震力算定法

1.はじめに

 鉄道駅は不特性多数の方が利用されることから、駅舎天井の耐震安全性を高めることは重要です。一方、東日本大震災において吊り天井の崩落事故が多数発生したことを受け、平成25年に建築基準法が改正され、一定条件(規模等)の天井に対する脱落対策の規定が追加されました。これに伴って、改正建築基準法の解釈や技術上の留意事項が取りまとめられた耐震設計法1)が示されました。しかし、駅舎天井にこの耐震設計法を適用するためには、駅舎天井が一般建物とは異なる天井支持構造形式となる点を整理する必要があります。その一つとして、図1に示すような橋上駅等で採用されることの多い、屋根折板を支持する下地材(母屋材)や天井用に独立して設置された溝形鋼等の横架材(以下、吊り元横架材)から天井を支持する場合があります。この場合には、吊り元横架材の性状によって吊り天井の地震時応答が低減するか、増幅するかが把握されておらず、耐震設計法に示されている設計用地震力算定法の適用が困難でした。そこで、吊り元横架材により支持された吊り天井における動的加振実験を行い、設計用地震力算定法を提案したので報告します。

2.振動台実験2)

 振動台上に設置した支持架構に、吊り元横架材と吊り天井で構成される試験体を作成し、振動台実験を行いました。試験体の概要を図2に示します。実験パラメータは吊り元横架材の断面形状(C-100×50×20×3.2、C-150×75×20×3.2)および吊り元横架材の端部支持条件(固定、ピン)です。実験により得られた天井面の最大加速度と加振方向の吊り元横架材のたわみ角の関係を図3に示します。天井面加速度が大きくなると吊り元横架材のたわみ角も大きくなっていることが分かります。同じ天井面最大加速度でたわみ角を比較すると、たわみ角は吊り元横架材断面が大きい方が小さく、また端部支持条件が固定の方が小さいことがわかります。2階建て橋上駅の2階部分を想定した設計荷重16.5m/s2に対するたわみ角の制限値を天井技術基準1)の設計例を参考に1/300以下とすると、制限値を満たすものは本実験では吊り元横架材C-150の固定支持条件のみであることが分かりました。

3.吊り元横架材から吊られた天井の設計用地震力算定法

3.1 算定方法

 天井単体の剛性が横架材の剛性に対して十分に大きな値の場合には、横架材の剛性が低いことによる吊り免震に近い挙動で応答性状を表現することができます。そのため、設計用地震力の算定では,吊り元横架材と天井の直列剛性と全質量による1質点として求めた設計用震度に、天井質量を乗じたものを天井の設計地震力とし、この震度に全質量をかけたものを吊り元横架材の設計用地震力とすることとしました。

算定方法の具体的な流れを以下および図4に示します。

① 吊り元横架材と天井を縮約した1質点系モデルを設定します。以下、MpおよびMcはそれぞれ吊り元横架材および天井の質量、KpおよびKcはそれぞれ吊り元横架材および天井単体の剛性を表します。

 ・ 質量:Mp+Mcとします。ここで、Mpは支持点間の吊り元横架材の質量です。

 ・ 剛性:KpとKcの直列剛性としますが、Kp<<Kcの場合はKpとしても良いです。

② 縮約1質点系に対して設計用震度Khを求めます。

③ 吊り元横架材の設計用地震力Qpを以下により求めます。

 ・ 縮約した1質点系モデルの固有周期T≦0.10sの場合:吊り元横架材と天井が剛である場合の設計用震度にMp+Mcを乗じます。

 ・ 上記以外の場合:Qp=Kh×(Mp+Mc)

④ 吊り天井の設計用地震力Qcは以下により求めます。

3.2 算定法の精度検証

 吊り元横架材から吊られた天井を模擬した振動台実験結果と、上記算定法によって算出した設計用地震力の比較を表1に示します。比較するにあたっては、振動台実験の天井支持架構の応答加速度を入力動と想定しています。算定法と実験値を比較すると、概ね近い層せん断力を評価できており、また、吊り元横架材のたわみ角について安全側に評価していることがわかります。

4.おわりに

 橋上駅等で採用されることのある吊り元横架材から吊られる天井の応答増幅効果を振動台実験により確認し、吊り天井の設計用地震力の算定法を提案しました。今後は、本検討の内容やその他の駅舎天井特有の事項の検討結果を併せて、駅舎天井の耐震設計に資する設計資料として取りまとめる予定です。

【参考文献】

  • 1) 国土技術政策総合研究所、建築研究所:建築物における天井脱落対策に係る技術基準の解説(平成25年10月版)、2013
  • 2) 山田聖治、清水克将、三木広志:母屋材を吊元とする天井の振動台実験 その1~3、日本建築学会大会(九州)学術講演梗概集、pp.875-880、2016

(記事:構造物技術研究部 建築研究室  清水克将)

耐震設計上の基盤面位置の自動判定手法の開発

1.はじめに

 路線全体を対象とした既設構造物の耐震補強を実施する場合には、各地点で将来発生する地震動の大きさや各構造物の耐力等の情報から路線全体での危険箇所を抽出することが重要です。この際に、各地点で発生する地震動の大きさに影響を与える要因として、耐震設計上の基盤面以浅の表層地盤の増幅特性があります。この増幅特性は、近年の新設構造物の設計時にはG0~G7の地盤種別によって整理されていますが、既設構造物では評価されていないことが多く、上記の危険箇所抽出にあたっては膨大な地盤調査結果の整理作業が生じます。特に、耐震設計上の基盤面の判定は熟練技術者の判断が必要なこともあり、作業コストがかかります。本検討では、この作業を自動化する手法を開発したので報告します。

2.耐震設計上の基盤面位置の自動判定の難しさ

 H24鉄道構造物等設計標準・同解説(耐震標準)には,耐震設計上の基盤面は砂質土でN値50以上、粘性土でN値30以上の連続地層の上面でその上層との剛性比が大きいことを確認することとなっています。図 1 に実測N値の深度分布の例を示しますが、例1、2のように上記の定義に従って判定ができるものばかりではありません。例3はN値60で調査が終了しており、連続地層を確認していませんが最下層を基盤と判定するのが一般的です。例4はN値が大きい地盤が連続しますが最深部でN値が急激に低下しており、調査不十分と判断します。例5は基盤候補が複数存在しますが中間層のN値が小さく、より深い候補を基盤とみなします。例6,7はN値50を満たさないが比較的大きい値が連続しており、これらを基盤の一部とみなします。例8はN値50を単発的に記録する結果が得られていますが、礫を打つ等が原因であるため、異常値として除去する必要があります。以上の例からも自動判定が上述の定義だけでは難しいことがわかり、これらの例外を取りこぼさないような手法を提案する必要があります。

3.自動判定手法の概要

 自動判定手法のフローを図2に示します。必要な地盤データは、N値の深度分布、層厚、土質分類です。処理は3段階で詳細は以下の通りです。なお、条件の詳細・設定値等は文献1)を参照下さい。

(1) 地盤データ整理:土質分類に依存しないN値に正規化、異常値の除去等を行います。

(2) 耐震設計上の基盤候補の抽出:整理データから基盤となりうる地層を抽出します。この抽出ではN値が45以上の層を基盤候補として抽出します。この抽出は図1の例5に示したように複数になることもあります。この時点で基盤候補が存在しない場合には、耐震設計上の基盤はなしと判定されます。

(3) 候補の絞込み・耐震設計上の基盤の判定:耐震設計上の基盤候補が複数ある場合には絞込みを行い、最終的に最下層のものを基盤候補とします。この絞込みでは、基盤候補に挟まれた中間層が基盤の一部とみなせるかを確認します。例えば図1の例5の深度20~40mの中間層はN値が小さいため、基盤の一部とみなしません。一方で、例6の深度30~60mは高いN値が連続であるため基盤の一部とみなします。ここで絞り込まれた基盤候補のうち、最下層まで達しているものを基盤と判定します。

4.自動判定結果

 自動判定手法を用いて、図1の各データに対して判定を行った結果を図3に示します。自動判定の妥当性を検証するために、技術者の目視判定による基盤も併せて示しています。判定が自明である例1、2だけでなく、従来の定義で判定が難しい例3~7のデータに対しても適切な評価ができました。

 続いて提案法を用いて、東京の地盤2)で公開されている16295本の地盤データに対して耐震設計上の基盤面深度を評価しました(図4(a))。深度は東側に向かって連続的に変化しており、適切な深度判定ができています。また、この結果から、耐震設計上の基盤面以浅の表層地盤の固有周期を評価し、地盤種別分布を評価しました(図4(b))。これらの結果を活用して鉄道構造物の地震危険度が評価できます。

【参考文献】

【謝辞】本研究の一部は、国土交通省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施しました。

(記事:鉄道地震工学研究センター 地震動力学研究室  田中浩平)