鉄道車両用長寿命空気ホース

1.はじめに

鉄道車両では多数のゴム製空気ホースが使用されています。空気ホースは正常な車両運行を保持する上で重要な部品です。これまでは一定期間使用した外面ゴムにクラックが発生するなどの理由から、3~4年程度で交換するなど、そのメンテナンスに多大な労力を要していました。そこで、外面ゴムに耐候性、耐熱老化性に優れた合成ゴムを適用するなどによって、従来の交換周期より2倍以上もの長期間にわたり使用可能にした長寿命空気ホースを開発しました。

2.長寿命空気ホースの種類と材料構成

鉄道車両用ゴム製空気ホースとしては、電車(在来線、新幹線)などの一般箇所で使用する一般用ホース、気動車のエンジン周りで使用する耐油性ホースの2種類があります。今回はこれら2種類の長寿命ホースを開発しました(図1)。従来ホースの劣化評価試験を行った結果、一般用、耐油性ともに3~4年間の使用で外面ゴムにクラックが発生し、ホースの長寿命化のためには外面ゴムの耐久性向上が鍵となっていることがわかりました。そこで今回開発する長寿命ホースには、外面ゴムに対し耐久性に優れた合成ゴムを適用しました。

また、空気ホースでは一般用、耐油性ともに、車両走行中小石等が衝突し破損に至る場合もあり得ます。したがって、空気ホースの長期使用に際しての信頼性向上のために、一般用、耐油性ともに、補強布には強度・耐久性に優れた合成繊維(ポリエステル)を適用することとしました。

3.長寿命空気ホースの耐久性評価

促進劣化試験等により、長寿命空気ホースは一般用、耐油性ともに10年間以上の使用に対しても良好な耐久性を有することが示されました(図2)。両長寿命空気ホースは、現在、JRの営業車両に導入されています。

*長寿命空気ホースの開発には(株)十川ゴムの協力を得ました。

参考文献

  1. 半坂征則、間々田祥吾、鈴木実:耐油性長寿命空気ホースの開発、鉄道総研報告、第18巻、第10号、pp.25-30、2004.10
  2. 半坂征則、畦地利夫、崎畑康典、伊藤幹彌:鉄道車両用空気ホースの開発特性、鉄道総研報告、第14巻、第3号、pp.19-24、2000.03