レール表面の転がり疲労状態の材料解析

車輪と転がり接触するレールが受ける転がり疲労による塑性変形状態の定量化解析技術を研究しています。

1.はじめに

レールの上を列車が通過すると、レールは車輪と転がり接触を起こし、転がり疲労を受けます。転がり疲労とは材料の疲労現象の一つです。この転がり疲労を受けるとレール表面の塑性ひずみが増加し、レール表面の金属組織に変化が起きます。レールは主にパーライトと呼ばれる鋼の金属組織を有しています。パーライトとは、フェライトと呼ばれる鉄の結晶と、セメンタイトと呼ばれる鉄と炭素の化合物の結晶が層状に重なり合ったものです。レールの金属組織は、このパーライトが多数集まって構成されています。

転がり疲労で金属組織に変化が起きると、レール表面で金属組織の微細化やそれが一方向に流れているように見える塑性フローが観察されます。また、光学顕微鏡観察で白色に見える金属組織の白色層が確認されることもあります。この転がり疲労による塑性ひずみがレール表面で増加し続けると、レール損傷が発生します。この転がり疲労を起因としたレール損傷にシェリング、ゲージコーナき裂やきしみ割れ等があります。

レール損傷を効率的に抑制していくには、転がり疲労を受けた金属組織の変化を評価し、その転がり疲労状態を定量的に把握することが重要です。また、この解析がレール損傷の機構を解明に資すると期待されます。

2.転がり疲労を受けたレール表面の材料解析

図1に転がり疲労を受けた実際のレール表面の材料解析の一例を示します。転がり疲労状態を定量的に解析するために、X線フーリエ解析を適用しました。X線フーリエ解析とは、X線回折測定を用いた材料解析の一種で、転がり疲労によるレールの塑性変形状態をX線結晶粒径と転位密度という指標で定量的に分析する手法です。X線結晶粒径とは、この手法で得られる結晶の大きさを表す指標で、小さくなると転がり疲労の影響が大きくなります。転位密度とは、塑性変形した際の結晶の変形度合を示す指標で、大きくなると転がり疲労の影響が大きくなります。図1(a)に示すように、全体的な傾向として、レール表面で転がり疲労の影響が最も大きく、内部になるにつれてその影響が小さくなっていることがわかります。また、図1(b)に示すように、これまで実施してきた電子線回折測定の結果をみても、レール表面で金属組織の微細化が最も促進され、X線フーリエ解析で得られた結果の傾向と類似していることがわかります。今後、この解析手法を有効に活用し、レール損傷の抑制に資する情報を提供できるようにしたいと考えています。

図1 レールに形成された転がり疲労層の定量化と結晶方位解析

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参考文献

  1. Motohide MATSUI, Yuji KAMIYA:Evaluation of material deterioration of rails subjected to rolling contact fatigue using x-ray diffraction, Wear, Vol.304, Issues 1-2, pp.29-35, 2013
  2. 佐藤幸雄、松井元英、岩渕研吾:最新の結晶方位解析技術のレール表面への適用、RRR、Vol.62、No.10、pp.6-9、2005.10
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