車両と構造物の動的相互作用解析

車両と構造物の動的相互作用について詳細な検討を行うために、解析プログラム(DIASTARS)を開発しました。

1.新幹線車両と線路構造物との動的相互作用解析プログラム(DIASTARS)

車両と構造物の動的相互作用について詳細な検討を行えるように開発されたのが、新幹線車両と線路構造物との動的相互作用解析プログラム Dynamic Interaction Analysis for Shinkansen Train And Railway Structures(DIASTARS)です。

DIASTARSでは、車両は、車体、台車枠、輪軸を三次元質点とし、これをバネとダンパーで結合してモデル化します。構造物は、梁要素等のFEMにより任意構造形式をモデル化することができます。車輪とレール間では、両者の幾何学的形状を考慮して接触点と接触角を求め相互作用力を計算します。

具体的には、鉛直方向の構成則では、車輪とレールの接触力をHertzの接触バネを用いて評価するとともに、車輪のレールからのジャンピングも考慮することができます(図1)。

図1 解析プログラムの構成則

水平方向の構成則では、車輪フランジとレールとの距離が遊間以下の時には、両者の接触面の接線方向にクリープ力が、車輪フランジとレールとが接触する場合には、レール小返バネに基づく接触力(フランジ圧)が接触面法線方向に働きます。

また、脱線後の車輪と逸脱防止ガードを含む軌道構造とを台形や直方体で近似する剛体断面モデルをDIASTARSに組み込むことで、脱線後の車両挙動解析を行うことが可能となりました。

2.可視化システム(GVS)

数値解析における、微小な時間増分ごとの時刻歴データは通常膨大なものとなり、全ての解析結果を俯瞰して、その現象を適切に理解することには多くの困難が伴います。このため既存のCG技術を活用した可視化システムを構築しています。

具体的には、車両や構造物等のオブジェクトの作成、可視化空間でのオブジェクト配置、カメラ設定、光源指定、レンダリング(描画)、画像圧縮等は、幾つかの既存モジュールを組み合わせて処理し、解析結果のモーションキャプチャー、可視化空間座標へ変換、応答の拡大率の調整等を行うモジュールをこれに追加してシステム化しています(図2)。

図2 可視化システム概要

DIASTARSの他、車両運動シミュレータVDS(車両力学研究室開発)、構造物の非線形解析プログラムRESP等の解析結果の可視化に利用されています。(動画1)

動画1 車両と構造物との動的相互作用(エクストラドーズド橋)

3.脱線後の車両挙動解析

脱線後の車両と逸脱防止ガードを含む軌道構造とを台形や直方体で近似する剛体断面モデルをDIASTARSに組み込むことで、脱線後の車両挙動解析を行うことが可能となりました。これにより、逸脱防止対策の一つである逸脱防止ガードの効果を定量的に評価できます。また、車両、軌道、構造物の相互作用を考慮した総合的な対策効果の検討も可能です(図3~5、動画2)。

図3 脱線後の車輪と逸脱防止ガードの力学モデル
図4 脱線後の車両挙動解析例
図5 脱線前から脱線後までの車両挙動
(青色が逸脱防止ガード)
動画2 車両と構造物との動的相互作用(高架橋)

4.構造物上の地震時車両脱線被害発生確率の算出法

連続する鉄道構造物全体の地震時車両走行性や対策効果を総合的に検討するためには、線区全体を対象とした精度の高い被害発生確率算定手法の確立が重要となります。

本研究では、数十kmの長大な構造物を疑似的な境界を用いて複数の解析区間に分割し、複数のCPUを用いて並列処理する解析手法を構築しました(図6)。本手法により、車両の諸元、車両の速度、構造物の諸元、地震動の種類、震源の方向、各種対策工の効果等の様々なパラメータの影響を解析することができます。

図6 解析手法の概念図

トンネル、盛土、高架橋からなる延長20kmのモデル線区に対し被害発生確率を求めた例では(図7)、トンネル内や盛土上では大規模地震に対しても車両の脱線は生じ難い結果となっていること、構造物群上に架道橋等の弱点箇所が存在すること等が分ります。また本手法による解析結果に基づき、被害発生確率を、簡易な関数で近似的に表す手法についても併せて提案しました。

図7 モデル線区の解析結果の例

5.走行車両と地上設備の接触解析

大規模地震時には脱線した車両が地上設備(例えば、電車線設備や信号設備、下路桁・ホームなどの構造物)に接触し被害が拡大する可能性があります。本研究では、マルチボディー車両モデルに配置した任意の接触検知点と、構造物側FEM情報から構成した接触面との動的相互作用力をペナルティー法により計算する手法を新たに構築し(図8)、地上設備との接触を考慮した地震時の車両挙動を表現することを可能にしました。これにより、走行車両と地上設備の接触の可能性の検討や、車両側逸脱防止装置等の脱線対策工の効果を評価することができるようになりました。

走行車両と地上設備の接触モデルの概念図
図8 走行車両と地上設備の接触モデルの概念図

解析事例として、①車体と下路桁の接触解析(動画3)、②ギアケースとレールの接触解析(動画4)を示します。どちらの解析事例においても車両と地上設備の接触を表現できていることが分かります。

動画3 車体と下路桁の接触解析

動画4 ギアケースとレールの接触解析
PAGE TOP