第327回 鉄道総研月例発表会

日時 2019年02月20日(水) 13:30〜16:40
場所 東京 日本工業俱楽部 大会堂
主題 人間科学に関する最近の研究開発 

プログラムと発表内容

(関係研究部 人間科学研究部

13:30~13:45
人間科学に関する最近の研究開発

鉄道総研人間科学研究部では、鉄道システムに関わる人の視点から安全で、便利で、快適な鉄道を考えるヒューマンファクター研究を行っている。ここでは,最近の取り組み全体を概観しながら、ヒューマンエラー防止のための教育訓練手法,ヒューマンエラー分析手法および鉄道の安全を脅かす部外要因への対策研究などのいくつかの代表的成果について紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.30 No.9 「人間科学に関する最近の研究開発」
 鉄道総研報告 Vol.31 No.11 「人間科学における安全のための研究開発」
 鉄道総研報告 Vol.33 No.1 「鉄道における最近の人間科学研究」

発表者
人間科学研究部 部長 小美濃 幸司

13:45~14:05
運転士の支援に向けた眠気検知手法

列車運転中の運転士の眠気の度合いを推定し、ある程度の眠気が発生した場合に警告情報を出力し、運転士を支援するシステムについて検討した。運転シミュレータを用いて眠気試験を行い、画像解析により、被験者の瞬目特徴量から、眠気度の推定式を作成した。また、スペクトル解析により眠気発生時には顔の微細な上下動揺が生じており、この周波数特徴が活用できる可能性を示した。システムを試作し、所内試験線において、データ取得が可能であることを確認した。これらについて報告する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.1 「運転士の支援に向けた眠気検知手法の開発」

発表者
人間科学研究部 人間工学研究室 室長 水上 直樹

14:05~14:25
生理指標による運転士の状態モニタリング

運転作業時の生理心理変化を客観的手法で捉えることを目的として、脳波を含む生理指標・行動量を同時計測可能な大規模計測システムを構築した。この測定システムを用いて、運転シミュレータ実験を行い、運転作業時の生理変化を調査した。その結果、脳波において、突発事象(例:線路内の倒木発見)による心理的動揺が生じた時に、特徴的な脳波変化がみられることが分かった。また、心理状態に応じた生理変化パターンにおいて、個人ごとに再現性があることを見出したので、報告する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.1 「生理指標を活用した運転士状態推定の基礎的検討」

発表者
人間科学研究部 人間工学研究室 主任研究員 中川 千鶴

14:25~14:45
運転シミュレータ訓練における視線データの解析

視線データを用いた運転シミュレータ訓練手法を開発するために、異常事象を発見できた運転士とできなかった運転士の注視行動の違いを明らかにした。高速走行では一回ずつの注視時間の平均値が長く、標準偏差が大きい方が異常事象を発見しやすいことがわかった。低速走行では注視点の移動範囲が広い方が異常事象を発見しやすいことがわかった。注視行動という観点から教育するための、これらの知見について報告する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.1 「異常事象に気付く運転士の注視行動」
 人間科学ニュース No.210 「運転士の注視行動と異常事象の発見」

発表者
人間科学研究部 人間工学研究室 副主任研究員 鈴木 大輔

14:45~15:05
駅係員とお客様のトラブルの実態把握と教育用VR映像の開発

駅係員とお客様とのトラブルは、ときに暴言や暴力行為に進展する場合がある。そこで、報告事例の分析や駅係員への調査に基づくトラブルの実態把握を行い、その結果を踏まえて駅係員の対応能力の向上のため、暴言や暴力に進展しやすい対応場面を体験できる、教育用VR(バーチャルリアリティ)映像を試作した。本発表では、トラブルの実態把握の結果と、試作した教育用VR映像を紹介する。
 鉄道総研技術フォーラム2018リーフレット 「駅係員向けお客様トラブルVR教材」

発表者
人間科学研究部 安全性解析研究室 研究員 岡田 安功

15:05~15:20
休 憩

15:20~15:40
列車衝突事故時のロングシート乗客の被害推定と対策

列車事故時のロングシート乗客の安全性評価を目的として、鉄道総研で開発した乗客挙動解析手法に用いるロングシート端部の袖仕切りを有限要素でモデル化した。構築したモデルを用いて、過去に踏切で発生した重大事故時の平均衝突速度で大型自動車に衝突する事故を想定したケーススタディを実施した。その結果、ロングシート乗客は袖仕切りから2席目と3席目に着座している条件で頭部の傷害発生リスクが高くなることが明らかになった。安全性を高める車内設備の設計例と効果について報告する。
 鉄道総研報告 Vol.26 No.1 「通勤列車の踏切事故時の乗客挙動シミュレーション」
 鉄道総研報告 Vol.33 No.1 「列車事故時の乗客挙動解析によるロングシート乗客の被害推定と対策」

発表者
人間科学研究部 人間工学研究室 副主任研究員 中井 一馬

15:40~16:00
列車乗降時の踏外し要因の推定に向けた基礎研究

列車乗降時の踏外しを防止する知見を得るため、列車とホーム間の隙間を模擬した実験装置を作成して、鉄道利用者のべ74名の乗降時における足運びを計測し、隙間の大きさ、段差、カントを模擬した車体傾斜角度、乗降ドアへのアプローチ方向の足運びに与える影響を明らかにした。ホーム側の足がホーム縁端に近づいたり、隙間に対して靴が斜めになって有効寸法が小さくなったりするなど、踏外しの可能性を高めると考えられる要因について知見を得たので報告する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.1 「列車乗降時の踏外し要因の基礎研究」

発表者
人間科学研究部 人間工学研究室 主任研究員 斎藤 綾乃

16:00~16:20
通勤車両内の横流ファン送風が乗客の温熱快適性に及ぼす効果

現在,都市部のほとんどの通勤車両には横流ファンが設置されており,特に梅雨から夏季の蒸し暑い季節において,乗客の温熱快適性の確保に貢献している。ただし、横流ファン送風が乗客の温熱快適性に及ぼす影響に関する知見は極めて少ない。そこで、乗客の快適性を考慮した横流ファンの送風設計に資する知見獲得を目的に、実車両を用いた体感実験を実施した。本発表では、横流ファン送風による車内風速の特徴、および、被験者の温冷感・快適性への影響に関して、得られた知見を報告する。

発表者
人間科学研究部 人間工学研究室 主任研究員 遠藤 広晴

16:20~16:40
旅客設備の接触部位の衛生環境評価

旅客設備をより快適に利用して頂くため、利用者が触れることのある駅設備に対し、利用者の意識調査と微生物(細菌)の実態調査を実施した。利用者意識では、トイレ便座、エスカレータ手すり等に「触りたく無い」理由として「汚い、菌がいそう」が過半数以上を占めた。一方、設備表面の細菌数は、携帯電話表面に存在する細菌数より少ない傾向がみられた。このように利用者意識と実態の間には乖離がみられたことを紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.1 「駅トイレの温水洗浄機能に対する利用者意識」

発表者
人間科学研究部 生物工学研究室 主任研究員 川﨑 たまみ


関係研究部

人間科学研究部