第332回 鉄道総研月例発表会

日時 2019年08月05日(月) 13:00~16:15
場所 東京 日本工業倶楽部 大ホール
主題 信号・情報通信技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:00~13:15
運行管理・保安制御のシステムチェンジに向けた研究開発

鉄道総研では、鉄道固有の技術と最新のICTを融合させることにより、現状の課題を解決しつつ、将来のシステムチェンジにつながる技術の研究開発に取り組んでいる。本発表では、信号・情報通信分野における研究開発の概況を述べたのち、近年海外でも議論が活発化している将来の列車運行制御の自律化に向けた研究開発の構想を紹介する。また、システムチェンジを実現するための重要な要素技術の一つである移動体通信や情報セキュリティに関する技術動向と課題についても述べる。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.7 「信号通信技術に関する最近の研究開発」
 RRR Vol.76 No.1 「列車運行の自律化と利便性・効率性の向上」

発表者
信号・情報技術研究部 部長 川﨑 邦弘

13:15~13:40
コンクリート信号機柱の維持管理手法 ※

コンクリート信号機柱は、1950年代以降信号保安設備の改良に伴い、多くの箇所で建植された。一部は現在、50年以上の経年にあると推定されるが、取替計画策定のための評価手法は確立されていない。我々は、信号機柱の劣化評価手法を確立するため、外観検査で認められる変状から残存強度を推定して更新を判断する手法を開発した。本発表では開発した強度評価法を含む、コンクリート信号機柱の維持管理手法について紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.7 「コンクリート信号機柱の強度評価法の開発」

発表者
信号・情報技術研究部 信号システム研究室 副主任研究員 潮見 俊輔

13:40~14:05
高い安全性を要する用途への汎用モバイル端末の適用 ※

スマートフォン等の汎用モバイル端末を高い安全性が要求される用途へ適用するためには、端末がフェールセーフ構成でないことと端末の供給期間が短いことが課題であり、端末を含むシステム全体で安全を確保するとともに端末の更新・置き換えを考慮する必要がある。そこで、汎用端末を用いたシステムの安全要件と、端末の入出力および処理のフィードバック診断手法、安全関連系システムの構成手法をまとめた。構成手法と診断手法の適用例として、汎用端末による列車接近警報システムについて試作を行ったので紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.7 「高い安全性を要する用途への汎用モバイル端末の適用」

発表者
信号・情報技術研究部 列車制御研究室 副主任研究員 祇園 昭宏

14:05~14:30
90GHz帯ミリ波による対列車通信システム ※

鉄道における新たな周波数資源の獲得を目指して提案した、90GHz帯ミリ波と光ファイバ無線(Radio over Fiber : RoF)技術を組み合わせた対列車通信システムを紹介する。さらに、プロトタイプシステムを試作して実フィールドにおける実証試験を実施し、90GHz帯ミリ波により、地上と時速約240kmで走行する列車との間で、約1.5Gbpsの伝送速度でデータ通信が可能あることを世界で初めて実証したので紹介する。
 RRR Vol.76 No.1 「鉄道のためのICT基盤技術」
 RRR Vol.74 No.7 「電波を光に乗せて列車に伝送する」

発表者
信号・情報技術研究部 ネットワーク・通信研究室 室長 中村 一城

14:30~15:00
休 憩

15:00~15:25
複数センサによる車載型前方監視

鉄道における車上からの前方監視の実現に向けて、カメラとセンサを用いたセンサフュージョンによる検知装置の研究を行っている。運転台に取り付けた単眼のカメラ映像から、画像処理アルゴリズムとしてディープラーニングを用いることで線路内にいる人物について、検知距離300mでの検知の実現に向けた可能性が得られた。本発表では、取組みの概要、アルゴリズム、フィールド試験の結果を合わせて紹介する。

発表者
信号・情報技術研究部 画像・IT研究室 主任研究員 長峯 望

15:25~15:50
列車運行を考慮した地上蓄電装置の最適制御手法 ※

近年、省エネルギー化等を目的とした地上蓄電装置の導入が進んできている。省エネルギー化のためには,回生絞込みができる限り発生しないよう、蓄電装置を充電させるような制御が求められる。そこで、計画ダイヤ通りの列車運行を実施した場合に、始発から終電までの全変電所の供給電力量合計を最小化する手法を開発した。本発表では、開発した制御手法の概要、および、ケーススタディを通した成果の活用事例を紹介する。
 第314回月例発表会 「列車運行電力シミュレータの開発」

発表者
信号・情報技術研究部 運転システム研究室 主任研究員 武内 陽子

15:50~16:15
割引商品の発売上限数に着目したイールドマネジメント手法 ※

鉄道事業の維持・発展を図る上で、収益性の向上は重大な課題である。これに対する1つの策として、航空業界等で導入が進んでいるイールドマネジメントの導入が挙げられる。この手法は、鉄道においても、指定席の販売戦略策定に適用可能と考えられる。そこで我々は、割引商品の発売上限数の制御に着目し、鉄道事業者の収入を最大にする発売上限数を算出できる手法を開発した。本発表では、この手法と、実際の販売に適用した社会実験の結果について報告する。
 鉄道総研報告 Vol.31 No.10 「幹線鉄道の輸送計画策定支援に向けた旅客需要波波動の予測手法」
 鉄道総研報告 Vol.32 No.12 「優等列車の割引商品選択に関する実態および要因分析」

発表者
信号・情報技術研究部 交通計画研究室 副主任研究員 中川 伸吾

※印がある発表は、技術交流会での展示物に関係するものです。