第334回 鉄道総研月例発表会

日時 2019年11月20日(水) 13:00~16:50
場所 大阪 毎日新聞ビル オーバルホール
主題 材料技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:00~13:15
材料技術に関する最近の主な研究開発

鉄道用材料は、屋外での長期間にわたる使用や摩擦・摩耗を生じる環境での使用等、厳しい条件で用いられるものが多く、これらを安全かつ低コストで供用する技術が求められる。これらを含めた種々の新たなニーズに応えるためには、鉄道の現場で生じている現象の解明、新材料の開発ならびに鉄道への応用が必要である。ここでは、鉄道総研が取り組んでいる材料技術に関する研究開発の方向性について、本日の発表および展示件名を踏まえつつ概説する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.11 「材料技術に関する最近の研究開発」

発表者
材料技術研究部長 上田 洋

13:15~14:00
【特別講演】複合材料の破壊と疲労 -基本概念と最新の動向-

複合材料は軽くて強く剛性の高い優れた材料であり、重量の軽減とエネルギー消費削減の観点から、航空、鉄道など交通機械の構造材料として極めて重要である。その力学特性は極端な異方性を有し、尖った(ややバランスに欠ける)材料でもある。そのため、設計や損傷許容性評価の観点においても、従来の金属材料とは異なった観点からの追加検討が必要である。また、引張り特性と圧縮特性が大きく異なるなど、その試験評価も極めて難しい。ここでは、複合材料の力学特性の基礎を概説するとともに、上記課題の最新動向について解説する。

発表者
京都大学 大学院工学研究科 機械理工学専攻 教授 北條 正樹

14:00~14:20
散水試験を用いたコンクリートの吸水抵抗性の目視評価

鉄道高架橋などの建設材料に用いられるコンクリートには、一定の強度が求められるだけでなく、内部に埋め込まれた鉄筋を腐食から保護するための吸水抵抗性が求められる。そこで、実際の構造物に対して手動式のスプレー器具で散水を行い、測定者が目視でコンクリートの吸水抵抗性を判定できる試験・評価方法として「散水試験」を開発した。また、散水試験をカメラで撮影した動画に対して機械学習を適用し、自動判定システムが実現可能であることを確認したので紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.30 No.6 「散水によるコンクリート表層品質の簡易評価」
 鉄道総研報告 Vol.28 No.2 「コンクリート表層品質の簡易な非破壊評価手法の開発」
 RRR Vol.74 No.2 「コンクリートの品質を診断する」
 鉄道総研月例発表会 「コンクリート表層部の物質透過性に関する非破壊評価技術」

発表者
材料技術研究部 コンクリート材料研究室 主任研究員 西尾 壮平

14:20~14:40
可変パッド用新規樹脂材料の開発と損傷低減対策仕様の提案

寒冷地のスラブ軌道への適用などを目的として、低温時の可撓性が高く、耐衝撃性の優れたレール高低調整用可変パッドを新規に開発した。開発品は環状オレフィン系液状樹脂を現場注入して硬化させるもので、低温時の可撓性に加えて高温時の機械的強度にも優れることから、低温から高温までの幅広い温度領域において耐久性の向上が期待できる。耐衝撃性などの材料特性評価の結果などと併せて、新たに提案する可変パッドの仕様について紹介する。

発表者
材料技術研究部 防振材料研究室 主任研究員 鈴木 実

14:40~15:10
休 憩

15:10~15:30
超電導き電ケーブルの適用に関する冷却時の応力緩和手法とその評価

鉄道用超電導き電ケーブルは、直流電気鉄道の電力システムの合理化および省エネルギー化に有効な技術である。超電導ケーブルを極低温に冷却すると、熱応力によりケーブル自体が収縮するため、特に長尺の超電導ケーブルを敷設する際には、このことを考慮して冷却、運用する必要がある。本発表では超電導き電ケーブルの冷却時の応力緩和手法およびその評価について報告する。
 RRR Vol.74 No.8 「超電導き電ケーブルの冷却時の内部変化を解明する」

発表者
材料技術研究部 超電導応用研究室 副主任研究員 赤坂 友幸

15:30~15:50
鉄道車両用材料の燃焼性および燃焼ガスの経時変化評価

国内省令で規定されている燃焼試験は、海外の燃焼試験と比較すると、簡便かつ迅速に結果が得られるが、材料に負荷する熱量が小さいことに加えて、評価に定性的な面がある。この課題を解決するため、大火源を想定した試験としてコーンカロリーメータ燃焼試験を導入し、国内で使用実績のある鉄道車両用材料の定量的な燃焼特性を把握できるようにした。また、コーンカロリーメータ試験装置にガス分析装置を併設し、鉄道車両用材料の燃焼ガスに含まれる成分の経時変化を定量的に評価した事例について紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.32 No.10 「大火源下における鉄道車両用材料の燃焼性の検討」

発表者
材料技術研究部 防振材料研究室 研究員 山中 翔

15:50~16:10
潤滑特性を向上させた新幹線用焼結合金すり板の開発

新幹線ではパンタグラフ停止位置におけるトロリ線の摩耗率が高いため、低速におけるトロリ線の機械的摩耗を低減させることを目的として、潤滑成分を4割以上増量した鉄系焼結合金すり板を開発した。開発材で定置摩耗試験を行った結果、低速ではトロリ線摩耗率は現用材よりも小さく、高速ではすり板とトロリ線の摩耗率は現用材と同程度であったため、開発材を用いた現車試験を行った。新幹線に開発したすり板を搭載して摩耗限度まで使用した結果、すり板の摩耗率は現用材と同程度であることを確認したので紹介する。

発表者
材料技術研究部 摩擦材料研究室 副主任研究員 宮平 裕生

16:10~16:30
低温流動性を向上した新幹線車両用ギヤ油の開発

寒冷地を走行する新幹線車両における低温起動性能の向上を目的として、低温流動性に優れた新幹線車両用ギヤ油を新規に開発した。開発したギヤ油では、高度精製鉱油を主とした基油の採用、粘度指数向上剤の配合により、現行のギヤ油からのコストの増加を小さく抑えながら、低温流動性の大幅な向上を実現した。また、実車歯車装置を用いた低温での起動試験、新幹線車両を用いた現車走行試験を実施し、開発ギヤ油が十分な性能を有することを確認したので紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.32 No.10 「低温流動性を向上した新幹線車両用ギヤ油の開発」

発表者
材料技術研究部 潤滑材料研究室 副主任研究員 木川 定之

16:30~16:50
踏面ブレーキ車輪における車輪踏面の形状変化メカニズム

踏面ブレーキ車両で発生する車輪踏面の凹摩耗について、発生条件を解明し、実車の車輪状況を把握する手法を検討した。踏面凹摩耗の発生機構は温度上昇時のレールとの転動接触による塑性変形であり、踏面温度を一定に保った台上試験により、踏面摩耗率の温度依存性を把握した。さらに、実車の凹摩耗について、踏面摩耗率の部位ごとのばらつきに着目し、凹摩耗の要因が塑性変形か、制輪子の切削現象にともなう異常摩耗かを判別する手法を示した。これにより、踏面摩耗の原因把握と対策策定が可能になったので紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.31 No.8 「踏面ブレーキ車輪における車輪踏面の形状変化メカニズム」

発表者
材料技術研究部 摩擦材料研究室 主任研究員 半田 和行


関係研究部

材料技術研究部