第340回 鉄道総研月例発表会

日時 2020年09月30日(水) から
場所 ウェブ配信(視聴無料)
主題 鉄道構造物に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

(関係研究部 構造物技術研究部


鉄道構造物に関する最近の研究開発(13分)

鉄道の安全・安定輸送のため、既設の鉄道構造物のメンテナンスの重要性は益々高まっている。一方、近年の激甚化する気象災害では、鉄道構造物に甚大な被害をもたらし、鉄道運行に支障を及ぼした。このように鉄道構造物を取り巻く技術課題は、新設の鉄道構造物の設計・施工段階の生産性向上策から、既設の鉄道構造物のメンテナンス段階の省力化策、災害対策と広範に及ぶ。ここでは、鉄道総研が取り組む鉄道構造物の研究開発の方向性を、本日の発表件名の研究開発事例を示しつつ、概説する。
 鉄道総研報告 Vol.26 No.4 「鋼桁・橋台・盛土一体化による旧式橋梁の耐震補強」
 RRR Vol.69 No.10 「構造変更による旧式鋼橋梁のリニューアル」

発表者
構造物技術研究部長 神田 政幸


ラーメン高架橋の柱梁接合部における機械式定着工法の適用法(13分)

過密配筋となっている柱梁接合部において、施工性を向上させるために軸方向鉄筋に機械式定着工法を用いることが考えられる。しかし、柱梁接合部のように、かぶりが小さい面への機械式定着工法の適用性は不明であった。そこで、載荷実験および解析から、柱梁接合部における軸方向鉄筋に機械式定着工法を用いた場合の定着性能を検討した。本発表では、柱梁接合部に機械式定着工法を適用できる箇所や条件を紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.34 No.6 「ラーメン高架橋の柱梁接合部における機械式定着工法の適用法」

発表者
構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 副主任研究員 中田 裕喜


ひび割れ画像を用いた既設コンクリート桁の劣化要因分析(12分)

RC構造物に発生しているひび割れの発生原因を推定することは、現在や将来の構造物の性能を評価し、また管理するうえで有用である。そこで、画像によりひび割れを自動抽出し、その抽出結果を非線形有限要素解析により再現することで、RC橋りょうに作用した要因の履歴や組合せを推定することを目的として研究を行った。本発表では、ひび割れ画像から主桁、高欄、軌道などの重量、列車走行による荷重、地域の温度およびコンクリートの収縮クリープの履歴の影響等の劣化要因を分析する手法について報告する。

発表者
構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 主任研究員 渡辺 健


3次元画像を活用した構造物目視検査支援システム(14分)

鉄道構造物の目視検査では変状箇所の写真と変状に関するコメントのみを記録していることが多い。そこで、構造物の3次元画像を活用し、構造物の状態や周辺環境をいつでも3次元で直感的に確認でき、かつシステムが変状抽出や記録の作成を支援することができる目視検査支援システムを開発した.目視検査をする際に自動で撮影した2次元画像から、Structure from Motion技術を用いて3次元画像を半自動で生成するシステムとなっている。本発表では、開発したシステムの概要について報告する。
 RRR Vol.77 No.9 「構造物の三次元モデル化により目視検査を支援する」

発表者
構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室 主任研究員 小林 裕介


駅火災時の避難安全性検証支援システム(11分)

駅の火災時における避難安全性は、一般的に建築基準法の仕様規定(避難口までの距離の制限など)を適用することで担保されているが、列車の発着に合わせて多くの利用者が移動・滞留する駅では、法律で定められた最低限のレベルではなく、設備・運用の両面からより安全な空間を目指す必要性がある。そこで、火災発生時の煙の拡散と旅客の避難状況を比較することで駅の安全性を検証するシステムを開発した。本発表では、開発したシステムの概要について紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.9 「火災発生時における駅構内の避難安全性検証システムの提案」
 RRR Vol.77 No.1 「VR技術を用いて鉄道駅空間の避難安全性を向上させる」

発表者
構造物技術研究部 建築研究室 副主任研究員 石突 光隆


吊り長さの短い駅舎天井の耐震改修工法(14分)

高架橋高さが低い場合等の吊り長さの短い高架下駅舎天井では、天井裏空間の確保の観点から一般的な耐震改修工法である耐震ブレースの適用が困難である。また、天井裏空間を阻害せずに安価に耐震改修可能な工法は存在しない。そこで、このような高架下駅舎天井に対して、施工が容易で安価に耐震改修可能な工法を開発したので紹介する。加えて、高架下駅舎空間の快適性向上のための列車騒音対策工法の効果についても紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.34 No.6 「吊り長さの短い駅舎天井の耐震改修工法」

発表者
構造物技術研究部 建築研究室 主任研究員 清水 克将


粘着力を有する背面地盤から擁壁に作用する地震時土圧の算定法(16分)

既設土留め構造物の背面地盤は粘着力を有する地盤材料で構築されている場合もある。こうした場合、L2地震の様な極めて大きな地震動に対して、粘着力の影響を完全に無視して構造物の耐震診断、補強を行うことは不合理となる場合もある。本発表では、模型実験により解明した粘着力による地震時土圧発現特性への影響メカニズムと、それを踏まえて提案した地震時土圧算定法、提案手法を用いた耐震補強設計のコストダウン効果について報告する。

発表者
構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 主任研究員 中島 進


のり面工と地山補強材による既設盛土の耐震補強設計法(16分)

近年都市部を中心に盛土の耐震補強が積極的に行われている。鉄道盛土は降雨対策を目的としてのり面工が施工されることが多いが、耐震補強設計時にはこの効果は十分には考慮されていない。本研究では、盛土ののり面工による降雨浸透の抑制効果、ならびにのり面工と地山補強材の連結による一体化の効果を明らかにするとともに、これらの効果を考慮した耐震補強設計法を提案し、併せて、耐震補強時に活用できる新しいのり面工構造を開発した。本発表ではこれらの概要について報告する。

発表者
構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 主任研究員 松丸 貴樹


モニタリングデータを用いたトンネル変状対策工の設計法(14分)

山岳トンネルでは、地山によっては地圧が作用して内空が縮小することがある。対策工として裏込注入、ロックボルト等があるが、これらの効果が定量的に評価されていないため、対策工を適切に設計することが難しい現状がある。本研究では、内空変位等をリアルタイムにモニタリングするシステムを構築するとともに、数値解析により対策効果を定量的に評価した上で、モニタリングデータに基づき対策工の効果を予測して対策工を設計するツールを開発した。本発表では、開発したシステムとツールの概要について報告する。
 RRR Vol.75 No.9 「無線センサーを用いてトンネルの動きを把握する」

発表者
構造物技術研究部 トンネル研究室長 野城 一栄


関係研究部

 構造物技術研究部