第344回 鉄道総研月例発表会

日時 2021年01月18日(月) から
場所 ウェブ配信(視聴無料)
主題 シミュレーション技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

(関係研究部 鉄道力学研究部


鉄道シミュレータに関する最近の研究開発

鉄道総研は、列車走行系、空力・環境系、事故・災害系、エネルギー系、電磁環境系、輸送系などのシミュレーション手法を開発してきた。「鉄道シミュレータ」は、それらを連携し、大規模並列計算などの高度な計算手法とシミュレーション間の連成計算機能を強化したものである。本発表では、列車走行系の動力学的なシミュレーション群で構成される「バーチャル鉄道試験線」を中心に、鉄道シミュレータの開発状況を紹介し、RESEARCH2025で新たに取り組む「シミュレーション技術の高度化」について概説する。
 鉄道総研報告 Vol.34 No.8 「鉄道シミュレータの構築」
 RRR Vol.77 No.7 「バーチャル鉄道試験線の構築」
 RRR Vol.77 No.7 「個別シミュレータ群の連携」

発表者
鉄道力学研究部長 上半 文昭


編成車両の床下流れの数値シミュレーション

鉄道車両の床下流れは、バラスト表面風速、車両の空気抵抗、台車付近への着雪、車両下部から発生する空力音、さらには、トンネル内車両動揺など、多くの鉄道の空力問題に関係する。ここでは、トンネル内車両動揺に関係する、編成車両全体に及ぶ大きな流れの構造に着目した数値シミュレーションを試みた。本発表では、編成車両の床下流れの数値シミュレーションの概要、特に、編成車両床下に生じる蛇行流れについての知見を紹介する。
 RRR Vol.75 No.11 「車両の床下流れを解明する」

発表者
鉄道力学研究部 計算力学研究室 主任研究員(上級) 中出 孝次


車両の着雪シミュレーション

列車が降雪地帯を走行すると、台車に雪が付着し成長する。着雪が走行中に台車から落ちると、線路上の地上設備や列車などに被害が発生することがある。このような着雪被害の対策検討のために、着雪の成長を再現する着雪解析手法の開発を行った。本発表では、鉄道車両モデルに着雪解析を行った結果が、降雪風洞を用いた着雪実験の着雪状況を再現できるようになり、鉄道車両モデルに着雪が進んでいく過程から着雪しにくい形状について考察した事例を紹介する。
 RRR Vol.77 No.4 「高速車両の台車周りの着雪を予測する」

発表者
鉄道力学研究部 計算力学研究室 主任研究員 室谷 浩平


車輪/レールの複雑な接触形状に対応した車両運動シミュレーション

車両運動シミュレーションで輪重や横圧を評価する際には、車輪/レール間の接触力の見積りが重要となる。摩耗した車輪/レールの接触等では、複雑な接触形状となる場合があるが、厳密に接触形状を見積もりながらの時刻歴シミュレーションは膨大な計算時間を要し、実用的ではない。そこで、複雑な接触形状に対応可能で、かつ低い計算コストで輪重や横圧を推定可能なシミュレーション手法を開発した。本発表では、開発手法の概要、ならびに現在行っている、本手法の妥当性検証・改良に向けた取り組みについて紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.34 No.8 「空気ばね装置の動作履歴を反映可能な曲線通過時準静的解析手法の開発」
 RRR Vol.76 No.4 「アイオワ大学との共同研究」

発表者
鉄道力学研究部 車両力学研究室 副主任研究員 田中 隆之


大規模並列有限要素法を用いた一台車モデルの曲線走行シミュレーション

車輪・レール間で生じる非線形な接触挙動は、車輪やレールの種々の損傷現象の要因となる。一方、車輪・レール間の作用力の大きさや方向など、詳細な接触状態を連続的に把握することは困難である。そこで、三次元大規模並列有限要素法を用いた、曲線走行が可能な車輪・レール間の動的転がり接触シミュレーション手法を開発した。本発表では手法の概要と、一台車モデルを用いた試計算による曲線走行時の輪重、横圧、車輪とレールの接触部の応力や接線力の分布などを示し、本手法の有効性や活用方法について紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.34 No.8 「大規模並列有限要素法による一台車モデルの曲線走行シミュレーション」
 RRR Vol.77 No.4 「車輪・レール間の接触挙動を再現する」

発表者
鉄道力学研究部 計算力学研究室 副主任研究員 坂井 宏隆


地理データと気象予報データを使用したレール温度予測シミュレーション

夏季にレール温度が過度に上昇すると、軌道座屈の危険性が高まるため、鉄道会社はレール温度を常時測定し、管理値を超過する場合は張出警備や運転規制を行う等、管理に多大な労力を費やしている。レール温度を事前に予測し、レール温度が高い時間帯と場所を限定できれば、安全性の向上と管理コストの削減に繋がる。本研究では、日中のレール温度を当日の朝に予測する、レール温度予測シミュレーションの開発に向けて、レール温度の実測値と、気象予報値からの予測値とを比較し、精度検証を行った結果を報告する。
 鉄道総研報告 Vol.34 No.4 「GISデータを使用した広域レール温度予測法」
 鉄道総研 施設研究ニュース No.363 「日陰の影響を考慮可能な広域レール軸力分布予測法」
 第329回鉄道総研月例発表会 No.4 「地理・気象データを活用したレール温度予測システムの開発」
 鉄道総研技術フォーラム2019 「建物の陰を考慮したレール温度の時空間分布の予測法」

発表者
鉄道力学研究部 軌道力学研究室 副主任研究員 浦川 文寛


地震時の橋りょうと車両の動的応答シミュレーション

近年の大規模地震動の頻発に対し、地震時の脱線・逸脱を防ぐために、鉄道システム全体で多角的な検討、対策が進められている。本研究では、鉄道車両の脱線前の車輪/レールの接触状態、脱線後の車両部材/地上設備の衝突現象を考慮した車両・構造物の動的挙動を表現可能なシミュレーション技術を開発した。本手法により、ダンパーブレースや角折れ防止工等の構造物を対象とした対策工に加えて、逸脱防止設備等の軌道、車両を対象とした各種対策工の効果を定量的に示したので報告する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.2 「MBDによる車体と軌道・構造物等の簡易な接触解析手法」
 鉄道総研報告 Vol.31 No.4 「MBDを用いた輪軸部材と軌道部材の簡易な接触解析手法」

発表者
鉄道力学研究部 構造力学研究室 副主任研究員 徳永 宗正


RCラーメン高架橋の構造物音シミュレーション

近年の速度向上により、鉄筋コンクリート高架橋においても、部材の動的応答の増大に伴う構造物音の発生が懸念されており、そのメカニズムや対策工の評価法が求められている。本研究では、構造物振動と音の伝搬を弱連成問題として扱い、沿線の構造物音を定量的かつ効率的に評価可能なシミュレーションを構築した。本手法により、構造物の振動モードが卓越する周波数帯において、構造物音が空力音等と同等以上に寄与する可能性や高架橋の補強により構造物音を低減できる可能性を定量的に示したので報告する。
 鉄道総研報告 Vol.34 No.8 「数値解析に基づくRCラーメン高架橋の構造物音評価法」

発表者
鉄道力学研究部 軌道力学研究室 主任研究員 渡辺 勉


関係研究部

 鉄道力学研究部