第351回 鉄道総研月例発表会

日時 2021年10月21日(木) から
場所 ウェブ配信(視聴無料)
主題 気象災害および耐震技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

(関係研究部 防災技術研究部 鉄道地震工学研究センター

アンケートとご質問は締め切らせていただきました。
お忙しい中ご協力いただいた皆様に、御礼申し上げます。


気象災害に関する最近の技術開発

未曾有の強雨による甚大な土砂災害や、大型で強い台風の上陸による強風災害など、近年気象災害が激甚化する傾向がみられる。これらの災害への対策として、ソフト対策の重要性がこれまで以上に増すと考えられる。本発表では、ソフト対策の中心をなす様々な災害要因の評価手法に関して、鉄道総研で現在進めている研究開発の概要を報告するとともに、今後の防災技術について展望する。

 鉄道総研報告Vol.35No.1「防災技術に関する最近の研究開発」

発表者
防災技術研究部長 太田 直之


沿線の建物環境を考慮した風速評価手法

強風時の運転規制は、規制区間内に配置された規制用風速計で観測された風速に基づいて実施されている。規制用風速計は、規制区間を代表する強風箇所に設置されているのが通例であるが、その一方で、規制区間内の線路沿線環境は宅地、ビル群、田園など多様であり、必ずしも規制用風速計で得られた風速が規制区間内全域にわたって同様に吹いているとは限らない。本発表では建物面積・階数分布情報を用いて、沿線の建物によって風速が弱められることを考慮して、規制区間内の風速を面的に評価する方法を検討した結果を報告する。

 鉄道総研報告Vol.35No.1「建物による低減効果を考慮した沿線の風速評価手法 」

発表者
防災技術研究部 気象防災研究室 研究員 高見 和弥


広域データを用いた鉄道沿線における倒木災害の要因分析

鉄道沿線で発生する倒木災害の件数は自然災害の中で最も多い。しかし、倒木災害の要因について定量的に分析した事例はなく、広域に渡る鉄道沿線から倒木災害の危険箇所を効率的・効果的に抽出する方法もない。そこで、倒木災害の危険箇所の抽出方法を開発することを最終的な目標とし、本発表では広域データとして地形データや航空写真データ、および風速解析結果を用いて倒木災害の要因について分析した結果を報告する。

発表者
防災技術研究部 地盤防災研究室長 布川 修


風化による岩石の強度低下速度の評価

岩盤斜面の安定性の評価や、落石等の発生時期予測のためには、岩盤の経時的な安定性の変化を考慮する必要がある。岩盤の安定性を経時的に低下させる要因として、風化作用による岩石の強度低下が挙げられるが、風化による岩石の強度低下速度は明らかでない。そこで本発表では、掘削後の経過年数が既知ののり面から採取した試料の物性値の測定結果と、乾湿繰返しなどによる強制劣化試験の結果を基に、強度低下速度を試算した結果を報告する。

 鉄道総研報告Vol.35No.1「風化を模擬した強制劣化試験における岩石の物性評価 」

発表者
防災技術研究部 地質研究室 研究員 河村 祥一


地震レジリエンス向上に向けた最近の技術開発

鉄道の地震レジリエンスを高めるためには、地震に対する強さと回復力の向上を目指した個別の技術開発とともに、これらを抜けなくバランスよく組み合わせる視点が必要となる。本発表では、関連する最近の研究開発成果の具体例を紹介し、地震レジリエンスの観点からこれらの位置づけと今後の研究開発の方向性について概説する。

 鉄道総研報告Vol.35No.5「地震レジリエンス向上に向けた最近の研究開発 」

発表者
鉄道地震工学研究センター長 山本 俊六


損傷過程を追跡可能な盛土の耐震性能評価手法

盛土の耐震性能照査で広く用いられているニューマークの滑り土塊法は、円弧滑り破壊を前提としている。しかし、実際の盛土、の破壊は必ずしも円弧滑り破壊でないこともあり、適切な耐震性能評価を実施することが困難な場合がある。本研究では、盛土が破壊に至るまでの損傷過程を過去の被害分析や遠心振動台実験によって明らかにすると共に、得られた損傷過程を再現可能な応答値算定手法を用いた性能照査の方法を構築したので報告する。

 鉄道総研報告Vol.35No.12「損傷過程を追跡可能な盛土の耐震性能評価手法 」

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震動力学研究室 副主任研究員 土井 達也


変位センサーによる支承部の地震後損傷検知

近年の地震では、構造被害が比較的軽微であっても、運転再開のための目視点検に時間を要する場合がある。特に橋梁上の高所・挟あいな箇所にあり目視困難な支承部の点検には多大な労力を必要としている。本発表では、センシング技術を活用して支承部の地震後点検の効率化や時間短縮の支援を目的として、センサーによる支承部の地震後損傷検知手法を開発したので報告する。

 鉄道総研報告Vol.35No.5「変位センサーによる支承部の地震後損推定手法の開発 」
 鉄道総研報告Vol.35No.5「鉄道地震災害シミュレータの開発 」

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震応答制御研究室 研究員 小野寺 周


鉄道ネットワークの損失輸送量に基づく地震対策効果の評価


地震時における鉄道のレジリエンスの向上を目的として、地震対策の効果を鉄道ネットワークの損失輸送量の観点から一元的に評価できるシステムを開発し、検証と適用を行った。用いたシステムは、地震時に低下した鉄道ネットワークの輸送量の回復過程を、損失する輸送量が最小となるように最適化計算によって求めるものであり、地震対策の効果を定量的に評価することができる。本発表は、ハード対策やソフト対策などの地震対策効果を一元的に比較した結果を紹介する。

 鉄道総研報告Vol.35No.1「鉄道ネットワークの損失輸送量に着目した地震対策効果の定量的評価」
 RRRVol.78No.6「鉄道ネットワークを考慮して地震の対策効果を明らかにする 」
 鉄道総研報告Vol.34No.2「大規模災害発生後の鉄道輸送の復旧戦略決定支援手法の基礎検討」

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震解析研究室長 岩田 直泰


関係研究部

(関係研究部 防災技術研究部 鉄道地震工学研究センター


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