第373回 鉄道総研月例発表会

日時 2025年02月19日(水) 13:30~16:40
場所 日本工業倶楽部会館2階 大会堂
主題 鉄道構造物に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:30~13:40
構造物技術に関する最近の研究開発

 鉄道の安全・安定輸送のため、鉄道構造物のメンテナンスの重要性が益々高まっている。一方、近年の激甚化・頻発化する自然災害により、鉄道構造物に甚大な被害が生じる事例がある。このように鉄道構造物を取り巻く研究課題は、新設構造物の設計・施工における省力化・省人化対策から、既設構造物のメンテナンスにおける省力化・省人化対策、災害における早期復旧対策まで広範におよぶ。ここでは、鉄道総研が取り組む最近の研究開発の方向性を、本日発表の研究開発事例を示しながら概説する。

発表者
構造物技術研究部長  田所 敏弥

13:40~14:00
FEMを用いたRC構造物の照査と柱はり接合部の配筋合理化

 RCラーメン高架橋の柱はり接合部等では、構造細目を遵守することで具体的な照査が省略されるが、この構造細目に従うことで過密な配筋となることや、高強度鉄筋の使用の制限等の課題がある。このため、柱はり接合部等においても、照査を行うことで柔軟な設計を実現することが求められている。そこで、有限要素解析によりRC構造物の照査を行う方法を構築し、この方法を用いてRCラーメン高架橋の柱はり接合部の配筋合理化について提案したので報告する。

<参考文献>
・中田裕喜,渡辺健,田所敏弥:RCラーメン高架橋の柱はり接合部の構造細目が耐力に及ぼす影響,鉄道総研報告,Vol.37,No.1,pp.29-35,2023

発表者
構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 研究員  鈴木 瞭

14:00~14:20
レール継目における衝撃が鋼橋の疲労に及ぼす影響評価

 鋼橋ではレール継目近傍において疲労き裂が発生しやすい傾向にある。この疲労き裂は、列車の車軸通過時におけるレール継目での衝撃によって発生する桁全体や部材局部の振動が原因である。本件では、レール継目の条件などの違いが鋼橋の疲労に及ぼす影響を評価した結果と、レール継目での衝撃によって鋼橋の部材に累積する疲労を推定する新たな解析手法について報告する。

<参考文献>
・小林裕介,上山裕太,向井天:鋼橋の疲労の累積を予測する,RRR,Vol.81,No.1,pp.20-25,2024
・金島篤希,小林裕介,井上太郎,松岡弘大:レール継目における衝撃が上路プレートガーダーの疲労に及ぼす影響,鉄道総研報告,Vol.35,No.7,pp.35-40,2021
・小林裕介,井上太郎:レール継目での衝撃が箱断面上路鈑桁床組の疲労に及ぼす影響,鉄道総研報告,Vol.37,No.1,pp.21-27,2023

発表者
構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室長  小林 裕介

14:20~14:40
車上計測された軌道変位による桁たわみ推定法

 橋りょうの効率的なモニタリングを目的に、車上計測された軌道変位に基づき桁たわみの推定手法の開発を進めている。まず基本理論として、荷重条件の異なる2つの軌道変位の差分と桁たわみが線形関係であることを解明した。また、車両上からの軌道変位の計測方法により、桁たわみ推定に必要な処理が異なることを示したうえで、代表的な2つの計測方法(慣性法と差分法)で得られた軌道変位を利用した桁たわみ推定法をそれぞれ開発したので報告する。

発表者
鉄道力学研究部 構造力学研究室 研究員  服部 紘司

14:40~15:00
休憩

15:00~15:20
降雨により被災した鉄道盛土の安定性評価と運行再開可否判断手法

 降雨により鉄道盛土が被災した際の応急復旧は、点検者の経験によるところが大きく、被災した状態の盛土の性能が不明であることから、大掛かりな対策を要す場合が多い。そこで、被災後の盛土や応急復旧盛土を対象に、列車運行再開時を想定した安定や沈下に対する性能を明らかにし、被災盛土の列車運行再開を早期に判断できる手法を提案したので報告する。

<参考文献>
・佐藤武斗,松丸貴樹,伊藤壱記,尾崎匠:降雨で被災した鉄道盛土の安定性評価と運行可否判断手法,鉄道総研報告,Vol.38,No.11,pp.37-43,2024

発表者
構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 副主任研究員  佐藤 武斗

15:20~15:40
衝撃振動試験を活用した洗掘被災橋梁の緊急診断法

 近年、豪雨の発生に伴い河川橋りょうの洗掘被災事例が頻発している。しかしながら、地中部や水中部にある基礎の状態を目視により判断することは難しく、また洗掘により支持地盤の一部が流失した橋脚の支持性能を推定する手法も未整備出であった。そこで、衝撃振動試験を活用した洗掘被災橋梁橋脚の支持力推定手法を構築し、緊急診断法を提案した。本発表では、提案法の概要について報告する。

発表者
構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 主任研究員  佐名川 太亮

15:40~16:00
トンネル壁面の画像を用いた検査支援システム

 鉄道トンネルには建設後年数の経ったものが数多く存在する。現在は、経験豊富な技術者による検査により適切に維持管理されているが、今後、技術者の減少が見込まれており、デジタル技術の活用が求められている。トンネル壁面の画像から個々の変状を AI で抽出し、トンネル全体の健全度と重点的に調査すべき要注意箇所を特定するアプリケーションと、特定した要注意箇所を様々な形状のトンネル壁面に連続して投影できる、移動式のプロジェクションマッピング装置を開発した。本発表では、支援システムの概要について報告する。

発表者
構造物技術研究部 トンネル研究室長  野城 一栄

16:00~16:20
線路下横断工事中の地盤緩み検知による軌道変状推定システム

 線路下横断工事の角型鋼管の挿入時において、地盤の緩みが生じ、列車荷重の繰り返しにより軌道沈下となって現れることがある。沈下は列車の走行安全性に影響するため、予兆を事前に検知することが求められる。そこで、線路下横断工事中に、地盤の緩みを事前に検知し、軌道沈下量を推定できる小型の軌道変状推定システムを開発した。軌道沈下の兆候を早期に検知し、掘進長を見直すことで安全性が向上し、軌道整備に要するコストの削減も期待できる。本発表では、開発した推定システムの概要について報告する。

発表者
構造物技術研究部 トンネル研究室 主任研究員  仲山 貴司

16:20~16:40
防犯カメラを活用した駅構内のOD交通量推計システムの開発

 通路拡幅等の駅改良計画の検討に際し、駅構内各地点間の移動人数を表すOD交通量を把握するためには、多くの調査員を要する大規模な調査が不可欠であった。これに対し防犯カメラ映像を用いたOD交通量の計測システムを開発し、実駅で検証を行った結果、概ね10%以内の誤差で断面交通量を計測することができ、良好な精度でOD交通量の推計ができることを確認した。本発表では、開発したシステムについて報告する。

<参考文献>
・石突光隆,対馬銀河:駅改良のための構内における旅客の分布交通量推計手法,鉄道総研報告,Vol.35,No.7,pp.47-52,2021

発表者
構造物技術研究部 建築研究室 研究員  対馬 銀河

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