第374回 鉄道総研月例発表会

日時 2025年03月12日(水) 13:00~17:10
場所 日本工業倶楽部会館2階 大会堂
主題 軌道技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容


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事前登録期間:2025年2月12日(水)10時から3月10日(月)18時まで

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13:00~13:10
軌道の施工およびメンテナンスの省人化に向けた最近の研究開発

 人口減少や少子高齢化による労働力不足が進む中、鉄道ネットワークを発展・維持させるため、軌道の分野では施工やメンテナンスにおける省人化を図る必要がある。新設線の建設における施工の簡略化・自動化、既設線のメンテナンスにおける検査へのデジタル技術・AIの導入に加え、効果的な補修技術の開発等を進める必要がある。ここでは、これらの省人化に向けた研究開発について概説する。

発表者
軌道技術研究部長  桃谷 尚嗣

13:10~13:30
軌道保守の経済的効率性を考慮した軌道管理手法の開発

 労働人口減少が進展する中、軌道保守に関するリソースの有効活用および適切な配分がより一層求められている。このような状況においては、安全性の確保を前提としつつ、各線区の輸送条件や軌道構造を考慮して、より効率性の高い軌道保守や設備投資を実施する必要がある。そこで、経済的な評価指標により線区の特性や軌道保守の効率性を考慮した軌道管理手法を提案した。また、軌道保守・改良計画と軌道変位の将来予測値を考慮して、線区に応じた軌道変位の目標保守管理レベルを検討するツールを開発したので報告する。

発表者
軌道技術研究部 軌道管理研究室 主任研究員  松本 麻美

13:30~13:50
携帯情報端末を用いた簡易な列車巡視支援方法

 保線係員が列車前頭の運転台に添乗して線路の保守状態や沿線環境の変化など線路全般の状況を確認する列車巡視は、人的負担が大きく、また熟練技術者の減少により、線路状態の判断に個人差が生じる。そこで、携帯情報端末を用いた操作性の高い列車巡視支援アプリ(Train Patroller)を開発し、これを用いた簡易な列車巡視支援方法を提案した。本発表では、開発アプリのローカル線での試験適用を実施し、提案方法の有用性や効果について検討したので報告する。

<参考文献>
・田中博文,趙博宇,蘇迪,長山智則:携帯情報端末を活用した低コストな列車巡視支援方法の開発,鉄道総研報告,Vol.39,No.1,pp.21-27,2025

発表者
軌道技術研究部 軌道管理研究室 主任研究員(上級)  田中 博文

13:50~14:10
列車前方画像を活用した軌道部材状態評価システムの開発

 鉄道における軌道部材の維持管理業務は、一般的に保線技術者が現地に出向くことで行われており、保線の現場に大きな負担がかかっている。本研究では、軌道部材の維持管理業務の効率化を目的に、木まくらぎの劣化度判定モデル、まくらぎやレール締結装置種別を識別可能な識別モデルを構築した。また、キロ程推定精度向上を目的に、軌道検測車の測定データの位置補正に使用されるデータデポを活用したキロ程補正手法を構築した。さらに、これら手法を組み合わせた「軌道部材状態評価システム」を開発したので報告する。

<参考文献>
・加藤爽,坪川洋友,長峯望,合田航,前田梨帆,糸井謙介:列車前方画像を用いた木まくらぎ劣化度判定システム,鉄道総研報告,Vol.37,No.4,pp.33-38,2023

発表者
軌道技術研究部 軌道管理研究室 副主任研究員  高原 恵男

14:10~14:20
休憩(1)

14:20~14:40
凍害予測のための日射を加味したスラブ軌道断面温度分布解析

 寒冷地のスラブ軌道の一部で、凍結融解によるてん充層の劣化が生じている。凍結融解は日射の影響を強く受けるが、レールや防音壁による日陰等を含む日射の詳細な評価方法は確立されていない。本発表では、日射量とスラブ軌道断面の熱伝導の連成解析からスラブ軌道断面の温度分布を推定する手法を提案し、測定結果との比較から解析精度を検証した。さらに、延長250kmの実線路の位置情報データと1kmメッシュ気象データを用い、冬季3ヵ月間のスラブ軌道の温度と凍結融解回数を1km毎に算出したので報告する。

<参考文献>
・浦川文寛,渡辺勉:周辺地物からの放射熱を考慮した夜間のレール温度予測法の開発,鉄道総研報告,Vol.38,No.3,pp.25-33,2024
・浦川文寛,渡辺勉,木村成克:GISデータを使用した広域レール温度予測法,鉄道総研報告,Vol.34,No.4,pp.53-58,2020
・浦川文寛,渡辺勉:地形・建物データと気象予報情報からレール温度を予測する,RRR,Vol.78,No.3,pp.12-15,2021

発表者
鉄道力学研究部 軌道力学研究室 主任研究員  浦川 文寛

14:40~15:00
地盤振動および波状摩耗を低減可能なフローティング弾直軌道の開発

 列車走行時の地盤振動を積極的に低減することを目的とする場合、フローティングスラブ軌道が採用される事例が多い。同軌道は優れた振動低減効果を示すが、一部の急曲線区間ではPCまくらぎ直結軌道等と同様に、内軌だけではなく外軌のゲージコーナー部にも波状摩耗が発生する事例が報告されている。そこで、弾性まくらぎ化により波状摩耗に対する低減効果を付与するとともに、発泡EPDM製等の低廉な防振材を適用して低コスト化を図ったフローティング弾性まくらぎ直結軌道を開発したので報告する。

<参考文献>
・渕上翔太,渡辺勉,田中博文,高橋貴蔵:フローティング弾性まくらぎ直結軌道による地盤振動および波状摩耗の低減効果,鉄道総研報告,Vol.38,No.2,pp.17-23,2024
・渕上翔太,枡田吉弘,高橋貴蔵:フローティング弾直軌道における防振材の材料特性および軌道構造の振動特性の評価,鉄道総研報告,Vol.39,No.2,pp.1-7,2025

発表者
軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 主任研究員  渕上 翔太

15:00~15:20
新幹線用PCまくらぎの状態基準保全に基づく維持管理手法

 新幹線用PCまくらぎの一部には、近年長手方向のひび割れ(縦ひび割れ)の発生が確認されている。これらのPCまくらぎに対する現状の維持管理では、主に目視による定性的な基準により行われており、より効率的かつ定量的な検査手法が求められている。本研究では、既設PCまくらぎを含む合計200本のPCまくらぎに対する実態調査を行い、縦ひび割れ長さと埋込栓引抜耐力を指標とした定量的な健全度判定指標を提案した。さらに、深層学習を活用した画像解析によるひび割れ抽出手法を開発したので報告する。

発表者
鉄道力学研究部 軌道力学研究室 主任研究員  箕浦 慎太郎

15:20~15:40
既設アスファルト路盤上における新幹線用既設線省力化軌道の開発

 アスファルト路盤上に敷設された新幹線バラスト軌道の落雪対策、軌道保守のコスト削減を目的として、360km/h走行に対応したプレパックドコンクリート道床を用いた既設線省力化軌道の開発が求められていた。そこで、プレパックドコンクリートおよび経年変化を考慮したアスファルト混合物に対する曲げ疲労試験等により材料特性を評価するとともに、既設線省力化軌道の実物大模型に対する繰返し載荷試験により耐荷性能を確認し、既設線省力化軌道に対する設計法を開発したので紹介する。

発表者
軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 主任研究員  伊藤 壱記

15:40~15:50
休憩(2)

15:50~16:10
高速用分岐器における新たな軌道変位整備基準値の検討

 分岐器基準線側を速度120km/hで通過する高速用分岐器の軌道変位は、その他の分岐器と比べ、厳しい整備基準値で管理されているが、この値は過去の走行試験を基に経験的に定められたものである。そこで、技術的根拠に基づく整備基準値の設定に向け、本研究では軌道変位が分岐器部材及び車両運動に与える影響を評価可能とする分岐器走行シミュレーションモデルを構築し、これを用いた検討を行ったので報告する。

発表者
軌道技術研究部 軌道構造研究室 副主任研究員  塩田 勝利

16:10~16:30
押抜き工程を不要とする低圧縮量レールガス圧接工法

 レールガス圧接法では圧接部の余盛を専用の機材で押抜いているが、押抜き作業を省略し機材の運搬を不要にできれば、作業の軽減や施工時間短縮に貢献できる。本研究では、圧縮量の低減による押抜き工程の省略および装置の軽量化を目的として、種々の加圧パターンを適用したレールガス圧接の数値解析および実物レールを用いたガス圧接試験を実施した。その結果、圧縮量を従来の1/4となる6mmとしても実用上十分な強度を有する新たなレールガス圧接工法を開発したので報告する。

<参考文献>
・伊藤太初,小納谷優希:変圧法を用いた低圧縮量レールガス圧接工法の開発,鉄道総研報告,Vol.38,No.12,pp.15-20,2024
・伊藤太初,山本隆一,相澤宏行,井筒宏樹,岩崎幹大:レールガス圧接の加熱変形解析手法の構築,鉄道総研報告,Vol.36,No.3,pp.47-50,2022

発表者
軌道技術研究部 レールメンテナンス研究室 主任研究員  伊藤 太初

16:30~16:50
無螺締板ばね式レール締結装置の開発

 ボルトと板ばねでレールを固定する螺締板ばね式レール締結装置は、定期的にボルトの緩みを検査し、締め直す必要があるため、保守に労力を要する。一方、ボルトを使用しない無螺締線ばね式レール締結装置が開発されているものの、螺締式を無螺締式に置き換える際には、既設まくらぎの交換が必要となる。そこで、既設まくらぎの交換が不要で、無螺締線ばね式への置き換えよりも低コストにボルトの締め直しが不要となる無螺締板ばね式レール締結装置を開発したので報告する。

<参考文献>
・山岡大樹,弟子丸将,玉川新悟:既設PCまくらぎに適用可能な無螺締板ばね式レール締結装置の開発,鉄道総研報告,Vol.38,No.12,pp.1-6,2024

発表者
軌道技術研究部 軌道構造研究室 主任研究員  玉川 新悟

16:50~17:10
一般区間におけるバラスト軌道の沈下再発の要因分析と対策施工

 同一構造区間のバラスト軌道において、つき固め作業後に軌道変位が元の形状に戻るバラストメモリが生じる場合がある。バラストメモリの発生メカニズムを検討するため、バラスト軌道の1/5縮尺模型を用いたつき固め作業後の移動載荷試験や不連続体解析を実施した。その結果、こう上量が大きいほど、つき固め作業後のバラスト密度が小さくなることがバラストメモリの原因であることがわかった。沈下対策となるつき固め作業法を提案したので、バラストメモリの発生メカニズムと共に報告する。

発表者
軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 研究員  廣尾 智彰

司会:高橋 貴蔵(軌道技術研究部 軌道・路盤研究室長)


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