第375回 鉄道総研月例発表会

日時 2025年05月21日(水) 13:30~16:35
場所 日本工業倶楽部会館2階 大会堂
主題 鉄道地震工学に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容


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入場無料です。
受付は12:30から開始いたします。
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事前登録期間:2025年4月21日(月)10時から5月19日(月)18時まで

13:30~13:45
鉄道地震工学に関する最近の研究開発

 本年は、兵庫県南部地震の発生から30年の節目を迎える。同地震で受けた甚大な被害を再び生じさせないよう、2度にわたり耐震標準が改訂されるとともに、多くの大規模地震の経験も踏まえ、構造物・地盤の耐震対策工法の開発、軌道・車両・電化柱の地震対策、早期地震警報システムなど、より安全な鉄道システムの実現のための取り組みがソフト・ハードの両面から継続的に行われている。今後の耐震標準の改訂も見据え、これらの中から最近の代表的な取り組みについて紹介する。

発表者
鉄道地震工学研究センター長  豊岡 亮洋

13:45~14:10
巨大地震時の地盤の液状化挙動評価手法

 比較的硬い砂地盤の液状化挙動は非常に複雑で、液状化により剛性が低下した後、サイクリック・モビリティという現象により剛性が回復し、更に変形が進むと一定の応力状態で変形が進行することが知られている。この現象は定常化と呼ばれているが、未解明な部分が多く、有効な評価法が構築されていない。南海トラフ地震のような巨大地震時には、砂地盤が定常化に至り、構造物に影響を及ぼす可能性がある。そこで、定常化のメカニズムを実験的に解明し、評価可能な有効応力解析手法を開発したので報告する。

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震動力学研究室 研究員  小野寺 智哉

14:10~14:35
建設地点毎の継続時間特性を反映した設計地震動の算定法

 鉄道構造物等設計標準・同解説(耐震設計)では、設計地震動(L2地震動)を強震動予測手法に基づき建設地点ごとに算定することが推奨されている。この際、建設地点ごとに異なる揺れの大きさ(サイト増幅特性)と継続時間の特性(サイト位相特性)を考慮する必要があるが、これまでの手法ではサイト位相特性を十分に評価出来ていなかった。今回、サイト位相特性の新しい評価法を構築し、地震基盤位置における強震動波形のデータベースを組み合わせた地震動算定法を提案したので報告する。

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震動力学研究室 研究員  杉山 佑樹

14:35~15:00
鉄道構造物の危機耐性の実務的評価法の開発

 鉄道構造物の耐震設計では、東北地方太平洋沖地震などを契機として、設計を上回る事象に対して破滅的な状態に陥らないため、「危機耐性」に優れた構造物の設計を推奨している。これを踏まえ、危機耐性の定量評価法が提唱されているが、危機耐性の性能項目として整理されている冗長性やロバスト性を実務的に評価できる手法は確立されていない。そこで、冗長性やロバスト性を設計実務で評価できる手法を構築し、鉄道構造物の危機耐性の実務的評価法を開発したので報告する。

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震応答制御研究室 主任研究員  和田 一範

15:00~15:20
休憩

15:20~15:45
路線全体の地震被害推定を行うインベントリー法の信頼性評価

 鉄道構造物の地震被害を推定することは効果的な耐震補強や地震後の早期運転再開をするために重要である。一般的な鉄道橋りょう・高架橋ではインベントリー法を用いることで少ない情報から効率的に地震被害を推定可能である。一方、情報の多寡に応じた推定精度やその推定精度を効率的に向上させるために必要な情報が不明確であった。そこでインベントリー法の信頼性評価手法を開発し、推定精度を明示した地震被害推定が可能となったので報告する。

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震応答制御研究室 副主任研究員  小野寺 周

15:45~16:10
マグニチュード推定式の改良による早期地震警報の即時性向上

 新幹線の早期地震警報システムで使用されるマグニチュード推定式を改良し、推定の即時性を高める手法を提案した。この手法では、従来は一定だったマグニチュード推定式の係数を、P波開始からの時間によって変化させる。これを導入することにより、警報出力頻度は従来に比べ約1.2倍増加となるものの、平均2.6秒早く新幹線を緊急停止させることが可能となる。JR各社の新幹線早期地震警報システムにおいて、使用を開始した本手法について報告する

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震解析研究室 主任研究員  野田 俊太

16:10~16:35
光センシング技術(DAS)を活用した鉄道地震観測網の提案

 地震時の鉄道の安全性・安定性の向上を目的に、光センシング技術(DAS;Distributed Acoustic Sensing)の活用法を提案した。新幹線沿線の既設光ファイバーケーブルにDASを適用した地震観測網を構築し、構造物の種別や地盤の揺れやすさを反映したひずみ波形を高密度(5m毎)に観測した。さらに、鉄道用の早期地震警報の高精度化に対し、DASの高密度観測網で取得したリアルタイムデータを活用した震源決定手法を開発し、単独観測点のデータを用いる現行手法に比べ、震央位置を高精度に決定することが可能となったので報告する。

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震解析研究室 副主任研究員  片上 智史

 
司会:鉄道地震工学研究センター 地震解析研究室長  是永 将宏


都合により、プログラム(タイトル、発表順など)を変更することがあります。
 


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