施設研究ニュース
2019年7月号
高架下コンコース天井の騒音低減対策
1.はじめに
高架下コンコース等では,列車走行時に大きな列車騒音にさらされる場合があり,駅利用者の快適性の観点から列車騒音を低減する対策が必要となります.列車騒音の内で固体伝搬音に対しては,天井吊りボルトへの防振ハンガーによる騒音対策が従来用いられています.しかし,防振ハンガーは天井下地全体の剛性が下がるために耐震性が低下することが考えられます.また,天井の耐震改修のために耐震ブレースを設ける場合には,耐震ブレースを介して鉄道振動が天井材に伝搬するために,防振ハンガーの防振効果を低下させることも考えられます.そこで,近年適用の多いアルミスパンドレル等の金属天井(以下,スパンドレル天井)を対象として,防振ハンガーに代わる列車騒音低減対策方法について,実駅測定による騒音伝搬経路の検討および音響実験による検討を行ったので報告します.
2.列車騒音の伝搬経路
高架下コンコース等における列車通過時の騒音は,空気のみを伝わり階段・エスカレータ等から伝搬する空気伝搬音と,軌道スラブで発生した列車振動が軌道スラブ下面・床・壁に伝搬して放射される固体伝搬音に分類されます.この固体伝搬音は,軌道スラブ下面にスパンドレル天井のような仕上げがある場合には,さらに,列車振動が吊りボルトを介して天井仕上げに伝搬して放射される騒音(以下,天井固体伝搬音)と,軌道スラブ下面から放射された騒音が天井仕上げを透過する騒音(以下,天井透過音)および天井仕上げの隙間を伝搬する騒音(以下,天井隙間伝搬音)に区分できます(図1左側).つまり,前述した防振ハンガーは,主に天井固体伝搬音への対策方法となります.
3.スパンドレル天井の遮音性能測定
スパンドレル天井の遮音性能を検討するため,実駅(A駅)のコンコースに設置したスピーカから音を放射し,コンコースと天井裏の音圧レベル差を測定しました.測定概要を図1右側に示します.
A駅の測定結果とアルミ板(厚さ1.2mm)の透過損失値1)を比較した結果を図2に示します.この結果,A駅の音圧レベル差は,500Hz帯以上においてアルミ板よりも小さいことが分かります.スパンドレル天井は,スパンドレルを嵌合して天井を構成しているため,嵌合部に隙間が生じる構造となっています.そのため,この嵌合部の隙間から天井隙間伝搬音が伝搬していることが理由の一つとして考えられます.したがって,嵌合部の隙間を無くすことにより,500Hz帯以上の天井隙間伝搬音による騒音を低減できる可能性があることが分かりました.
4.隙間を塞ぐ騒音低減対策の効果に関する音響実験
前章の実駅測定により,スパンドレル天井の嵌合部の隙間を塞ぐことで騒音低減できる可能性を示しました.そこで,嵌合部の隙間を防振材(以下,パッキン)で塞いだスパンドレル天井の騒音低減効果について音響実験により検討しました.実験方法は,「JIS A 1418 建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法」に準拠し,上下階残響室にて実施しました.実験概要を図3に示します.実験ケースは,ケース0が天井を設けないRCスラブのみの条件,ケース1が騒音対策を施さない天井のみの条件,ケース2が従来の騒音対策である防振ハンガーを用いる条件,ケース3が防振ハンガーを用いずにスパンドレルの嵌合部の隙間をパッキンで塞いだ条件です.標準重量衝撃源を音源とした測定結果を図4に示します.
250Hz帯以上ではケース1が,ケース0を含む他の条件よりも高いレベルとなっています.また,ケース2および3は,ケース1よりも低いレベルとなっており,騒音対策の効果があることが分かります.ケース3は,ケース2よりも500Hz帯以上で低く,1kHz帯以上では他の条件に比べて最も低いレベルとなっています.これは,パッキンにより嵌合部の隙間を塞いだことで,天井隙間伝搬音が低減した効果が表れたものと考えられます.以上により,アルミスパンドレルの嵌合部に設置するパッキンは,従来対策である防振ハンガーと同等の騒音低減効果が得られる可能性があることが分かりました.
5.おわりに
高架下コンコースの実駅測定により,スパンドレル天井の隙間を塞ぐことで騒音低減できる可能性があることを示しました.そして,騒音対策方法としてスパンドレルの隙間を塞ぐパッキンの効果を音響実験により検証し,従来の対策方法である防振ハンガーと同程度の騒音低減効果があることを示しました.なお,パッキンは,天井仕上げ面に対策を施すことから,これまで困難とされてきた,従来の補強工法である耐震ブレースや,天井裏空間の狭い天井への鋼管を用いた補強工法2)等の耐震改修工法との両立が可能な騒音低減対策方法となっています(図5).
参考文献
1) 前川:建築・環境音響学,共立出版,1997
2) 清水他:吊り長さの短い駅舎天井の耐震改修工法,施設研究ニュース,No.340,2018.12
執筆者:構造物技術研究部 建築研究室 清水克将
担当者:構造物技術研究部 建築研究室 山田聖治
火山灰質土の含水変化に起因した降雨・地震時の斜面崩壊機構
1.はじめに
近年我が国では度重なる降雨や地震により,自然斜面の崩壊事例が多く報告されています.この中には火山地域での災害も多く発生しており,例えば2013年10月15日から16日かけて発生した伊豆大島での台風に伴う豪雨災害や,2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震での厚真町を中心とした斜面崩壊などが該当します.このような火山地域での災害は,火山の噴火によって降り積もった火山灰が地盤を形成していますが,火山灰質土の脆弱性が災害発生を招いたと考えられています.鉄道沿線にも火山灰質土からなる斜面は多く存在し,降雨や地震に対する安定評価や対策工の検討を行う必要があります.
火山灰質土は地盤工学分野では「特殊土」として扱われており,一般の地盤材料にはない様々な特徴を有しています.また,上記の斜面崩壊の多くは,斜面表層の数十cm ~数mの浅い層ですべりが生じる表層崩壊(図1)が多いのですが,この場合は火山灰質土層のわずかな含水状態の変化が災害発生に大きく影響します.本研究では,火山灰質土の含水変化に伴う強度や変形特性の変化に着目し,実際の水理・力学特性を室内土質試験で明らかにすると共に,このような挙動を表現できる数値解析モデルを構築し,実際の斜面安定の評価を行った事例を紹介します.
2.火山灰質土の降雨・地震に伴う含水変化
火山灰質土には様々な特徴がありますが,その一つに緩く堆積していることが挙げられます.一般に地盤の多くは降雨や河川水等の水の影響を受け運搬・堆積を繰り返しながら形成されるのに対して,火山灰質土の場合は火山噴火に伴って噴出した火山灰が斜面に降り積もり,そのまま年月の経過を経て地盤となっているため極めて緩い状態のものが多く存在します.
さて,このような緩く堆積した火山灰質土が降雨や地震の際に示す挙動の概略図を図2に示します.この図は土が土粒子,間隙水,間隙空気の3相構造から成る状況を模式的に表したものとなっています.降雨時には浸透水の影響で間隙中の空気の割合が減少し,間隙水に置き換わっていきます.一方,地震時には地震動が繰返し作用する影響を受け,間隙のうち空気の領域のみが減少していきます.降雨・地震いずれの場合にも間隙における水の割合が増加し,このことで斜面の安定性の低下につながることが考えられます.
3.不飽和三軸試験装置を使った火山灰質土の強度・変形特性の変化の把握と構成モデルの構築
上述のような降雨や地震を受けることでの火山灰質土の含水変化による強度・変形特性の変化を明らかにするために,不飽和三軸試験装置を使って含水状態の変化に応じた土の強度・変形特性の変化を明らかにしました.不飽和三軸試験では,間隙水および間隙空気の載荷中の圧力変化や吸排水量を計測することで,載荷前から終了までの含水変化に起因した土の力学挙動を明らかにすることができます.
図3は一例として火山灰質土の不飽和三軸圧縮試験で得られた応力~ひずみ関係を示します.盛土材料など密に締固められた材料の場合は一般にピークに到達後に残留強度に至る挙動を示すことが多いですが,火山灰質土では緩い構造に起因して発揮される強度が小さく,明確にピーク強度が現れません.また,含水状態の大きさに応じて発揮される強度が異なっています.
同様な試験を繰返し載荷についても実施いたしました.図4にはサクション(間隙空気圧と水圧の差)の大きさが同じ状態での盛土材料と火山灰質土を対象に,繰返し載荷で得られた有効応力とせん断応力の関係図を示します.繰返し載荷に伴って,有効応力が減少する挙動を示しますが,同じ初期状態であっても盛土材料と火山灰質土で挙動が異なることがわかりました.
また,このような挙動を数値解析で表現するために,火山灰質土を対象とした構成モデルを構築し,実験挙動を再現できることを確認いたしました.
4.火山灰質土から成る斜面の安定評価の例
上述の火山灰質土の挙動を表現できる構成モデルを,土の変形と間隙水・間隙空気の圧力変化を同時に解くことのできる数値解析手法に導入し,火山灰質土から成る斜面を対象に降雨時の安定評価を行った事例を紹介します.
図5には,火山灰質土とこれより透水性が小さい粘土層から成る互層構造の斜面に対して,図中の降雨履歴を与えた時の降雨開始から15時間後の飽和度およびせん断ひずみの変化のコンター図と,火山灰質土層での飽和度および安全率の変化の時刻歴を示しています.降雨に伴って斜面全体で飽和度が高まり,表層の火山灰質土の部分でせん断ひずみが増加しています.その結果斜面の安全率が低下し,1を切る状況となることがわかります.
ここでは降雨に対する事例を示していますが,地震時を対象とした安定評価を行うことも可能です.
5.おわりに
火山灰質土の特殊性に着目し,含水変化に伴う強度・変形特性の変化の解明と,この挙動をモデルに採り入れた安定評価事例を紹介しました.このような実験・解析による評価によって,火山灰質土から成る斜面の安定評価や対策工の検討を行うことが可能となります.
執筆者:構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 松丸貴樹
地域鉄道に適したロングレール軌道構造の開発
1.はじめに
地域鉄道のような閑散線区では,軌道の弱点であるレール継目が多数存在するため,保守に苦慮しています.そのため,ロングレール化を低コストで実現できればレール継目が除去され,保守費を大幅に削減できます.しかし,従来のロングレールは基幹線区向けに設計されており,導入コストが高いため地域鉄道への適用は困難でした.そこで,本研究では地域鉄道のコスト削減及び安全・安定輸送の支援を目的として,従来の1/2以下のコストで導入可能なロングレール構造を開発しました.
2.開発した構造
細粒土が混入したバラスト道床,40kgNレール,木まくらぎ・犬くぎ締結が大部分を占める地域鉄道の軌道構造を低コストで改良する工法として,図1に示すロングレール構造を開発しました.コンセプトは以下の通りです.
(1)40kgNレールは継目付近の不良部を切断および除去した上で再利用し,縦移動させて除去した隙間を埋めて溶接します.
(2)PCまくらぎへの交換本数を削減するため部分的に交換します.
(3)残った木まくらぎのレールふく進抵抗力はアンチクリーパで確保します.
(4)将来的に木まくらぎを全てPCまくらぎに置き換えることを想定し,図1(b)に示すように,まくらぎ間隔を拡大して本数を減らしたうえで全てPCまくらぎ化する構造とします.
(5)バラストの交換は必要最小限度とし,必要な道床横抵抗力は細粒土混入バラストにセメントを添加して締め固めることで道床肩部を強化して確保します.
3.道床横抵抗力の確保
木まくらぎ区間を3本に1本の割合でPCまくらぎ化した軌道で犬くぎの締結不良を想定した条件下で,軌道座屈安定性を解析しました.その結果,14.7kN/本の道床横抵抗力を部分交換したPCまくらぎで確保できれば,最低座屈強さに相当するレール温度上昇量が35℃を上回り,従来の温度管理基準でのロングレール化が可能となることがわかりました.
必要道床横抵抗力を確保するため,既設のバラストを活用し,環境負荷の低減,処理費用の削減を目的とした低コストな道床横抵抗力の増強工を開発しました.増強工は,細粒土が混入した既設バラストにセメントを10%添加したセメント安定処理土を用いて道床肩部を強化するものです.実施工における手順を図2に示します.増強工による効果は,まくらぎ1本分の実物大軌道模型を用いた道床横抵抗力試験で確認しました.試験では,強化幅の延長と,道床安定剤と座屈防止板も併せて検討しました.試験結果を図3に示します.図3より,セメント安定処理土による増強工では,道床肩部の強化幅1200mmのケースにおいて道床横抵抗力14.7kN/本を満足することを確認しました.
4.性能確認試験
開発したロングレール構造の妥当性を確認するため,延長65mの実物大の軌道模型を製作し,レール加熱装置によりレール温度を上昇させることで座屈試験を実施しました.座屈のきっかけとなる不整については,通り変位(波高30mm,波長10m)と,浮きまくらぎを設定し,木まくらぎの場合は犬くぎの締結不良を想定して締結せず,アンチクリーパのみを設置しました.試験は図1(a)の木まくらぎ区間を3本に1本の割合で部分的にPCまくらぎ化した軌道と,図1(b)の全PCまくらぎ化した軌道を用いて行い,部分PCまくらぎ化した軌道では,比較用に道床横抵抗力の増強工を施工しない条件でも行いました.
試験結果を図4に示します.道床横抵抗力の増強工を施工しない条件では座屈が発生しました(図4(b)).しかし,増強工を施工した条件では座屈せず,レール温度上昇量約70℃相当でも軌道が安定していることを確認しました(図4(a)).
次に,開発したロングレール構造を国立研究所構内の試験線へ試験敷設し,施工効率を確認しました(図5).試験敷設の結果,道床横抵抗力の増強工は,低コストで施工可能であることを確認しました.なお,本試験敷設は,ロングレールおよびレール締結装置の性能照査を満たさない条件ですが,実際より非常に厳しい供用条件を模擬して安全性を確認する目的で急曲線区間を対象としました.
5.おわりに
本研究では,地域鉄道のコスト削減及び安全・安定輸送の継続を支援することを目的として,従来の1/2以下のコストで導入可能なロングレール軌道構造を開発しました.なお,本コストは別途開発した低廉な伸縮継目の代替構造を用いることが前提となります.今後,本構造を幅広く普及させていくため,営業線への敷設を行い,種々の施工箇所における具体的な設計・施工方法をまとめていく予定です.
本研究は,国土交通省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施しました.
執筆者:軌道技術研究部 軌道構造研究室 西宮裕騎
担当者:軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 伊藤壱記
構造物の非線形化を考慮した地震時走行性の評価手法
1.はじめに
既設構造物に対する地震時の脱線・逸脱対策工の導入を進める上で,地震時走行安全性の弱点箇所を精度よく迅速に抽出することが求められています.しかし,既設構造物はL1地震時において非線形化する場合があり,その際には現行の設計標準に示される手法が適用できませんでした.このため,地震時走行安全性の評価は,詳細な数値解析を実施する必要があり,検討期間や費用の拡大が課題でした.
本研究では,車両と構造物の動的相互作用解析により,構造物の非線形挙動を考慮した脱線限界について,車種,列車速度,構造物の振動特性,地震動種別等の影響を網羅的に検討し,構造物の振動変位(加速度)と構造物境界の不同変位(角折れ)の連成の影響を考慮した評価手法を開発しました.
2.車両/構造物の動的相互作用解析による車両の脱線限界評価
図1に,振動変位および不同変位の概念図を示します.地震時列車走行性は,構造物の振動変位および不同変位に大きく影響を受けますので両者を精度良く評価すること重要です.
図2に,地震波入力により車両が脱線する限界時の構造物天端の最大加速度 (peak structure acceleration, PSA)と構造物の卓越振動数 を示します.図は,新幹線車両と鉄道構造物との動的相互作用解析プログラムDIASTARS IIIを用いて算出したPSAです.ここでは,構造物,車両をそれぞれ1自由度,31自由度の非線形要素でモデル化し,入力は設計地震動6波と観測地震動8波としています.図から,限界PSAは降伏震度の低下と共に低下する傾向にありますが,地震時走行性が低くなる0.5≤fs≤1.5程度の周波数領域では,降伏震度が低い場合でも限界値の変化が小さいことがわかります.
図3に,先述のPSA,構造物天端の最大速度PSV,最大変位PSD,および従来から用いられているSI値を各指標とした場合の限界値の変動係数を示します.図は,構造物を線形,非線形(降伏震度が0.3,0.7)とした全解析ケースの結果です.図から,SI値は,fs>1.6Hz程度の領域では,全4指標の中で最も変動係数が小さいですが,PSAに着目すると,fs<0.5Hz程度の領域において変動係数が5~10%程度,一般的な構造物の卓越振動数の範囲である0.5<fs<1.6Hz程度の領域において変動係数が最も小さく10~20%程度,fs>1.6Hz程度の領域において変動係数が30~50%程度ですので,構造物の非線形挙動を考慮した場合には,PSAが実構造物の評価に適していることが分かります.
図4に,振動変位と不同変位(角折れ)が連成した場合の脱線限界を示します.縦軸は,振動変位と不同変位が連成時の加速度alimを振動変位単体時の限界値alim0で無次元化した値A ,横軸は,折れ角θlimを不同変位単体時の限界値 で無次元化した値θです.図から,(A,θ) がA0.7+θ1.8=1を超過すると脱線が発生する場合が多いことが分かります.この脱線限界曲線により,多様な角折れ形状の連成時でも概ね90%の確率で脱線を安全側に評価できます.
3.構造物の非線形挙動を考慮した地震時走行安全性評価手法の提案
図5に,提案する構造物の非線形挙動を考慮した地震時走行安全性評価手法を示す.開発した評価手法の新規性は,降伏震度が低い既設構造物で問題となりやすい非線形性を考慮していること,これを実現するために新しく構造物天端の加速度を評価指標としていること,非線形化が発生した際に影響が大きくなる不同変位の連成を考慮していることが挙げられます.
図6に,提案手法の適用例を示します.図上段は,調整桁式ラーメン高架橋及び桁式高架橋,およびラーメン橋台を有する架道橋等で構成される約5km程度の実新幹線区の構造物高さです.中段の構造物寄与度は,黒棒で示す振動変位の寄与度(αr/αlim)0.7,緑棒で示す不同変位の寄与度(θr/θlim)1.8の和で,従来の設計法は振動変位と不同変位の影響を独立に評価するものでしたが,提案手法ではこれらのそれぞれの寄与度が評価できます.図下段から,詳細解析と提案手法による脱線限界倍率の比較により両者が概ね一致しており提案手法の妥当性が確認できます.提案手法に地盤種別や構造物の等価固有周期といった設計図書の情報を導入することで,各事業者内で担当者が従来法では評価できなかった既設線区の弱点箇所の抽出や優先順位付けが可能となり,対策工の選定に活用することができます.
4.おわりに
本研究では,降伏震度が低い既設構造物にも適用可能となる,構造物の非線形挙動を考慮した地震時走行安全性の評価手法の提案を行いました.本研究の成果が一助となれば幸いです.
執筆者:鉄道力学研究部 構造力学研究室 徳永宗正
担当者:鉄道力学研究部 構造力学研究室 徳永宗正,成田顕次,池田学