施設研究ニュース

2022年7月号

ストッパー埋込み部の耐力算定法

1.はじめに

 近年の地震で,橋りょうのストッパー埋込み部に損傷が生じました(図1).これは,1995年の兵庫県南部地震を経て改訂された基準を適用して設計された橋りょうにおいて生じた損傷で,橋脚く体の損傷はひび割れ程度でしたが,ストッパー埋込み部に浮きや剥落を伴う損傷が多数発生しました.また,桁端の桁遊間部に損傷が生じた場合には,復旧に時間と費用がかかるため,ストッパー埋込み部の損傷箇所や損傷程度を制御可能な設計手法が求められていました.  兵庫県南部地震を経て,橋脚く体の耐力の算定精度は向上し,損傷が制御できるようになった一方で,ストッパー埋込み部の耐力算定式の精度や破壊のメカニズムについては明確とはなっていませんでした.これに対して,ストッパー埋込み部の破壊のメカニズムに基づいた耐力算定式を提案し,地震時に支承部が損傷する場合においても,損傷を制御することで支承部の復旧性を向上することを可能にしました.

2.破壊形態と設計水平耐力算定式

 ストッパー埋込み部の破壊形態は,ストッパー埋込み部の補強鉄筋とストッパーの位置関係lrd, lrhや,補強鉄筋の形状に応じて,( i )~( iii )となります1)(図2).
 ( i ) 70°のひび割れで形成される破壊面に補強鉄筋が交差せずに最大荷重に至る(図2(a)).
 ( ii ) 70°のひび割れで形成される破壊面に交差する補強鉄筋が降伏せずに,補強鉄筋の折り曲げ付近を跨ぐひび割れが
   発生して最大荷重に至る(図2(b)).
 ( iii ) 70°のひび割れで形成される破壊面に交差する補強鉄筋が降伏して最大荷重に至る(図2(c)).
 破壊形態( i ), ( ii )と( iii )の耐力算定式を,各々式(1),式(2)のように定式化し,式(1)と式(2)の算定値の小さい方を設計水平耐力とすることとしました.
(1)破壊形態( i ), ( ii )に対する耐力算定式(式(1))
 破壊形態( i ), ( ii )では,ストッパーから生じるひび割れが,補強鉄筋の載荷軸に平行な部分を避け,補強鉄筋の折り曲げ付近を跨ぐひび割れが生じます.そのひび割れ角度が70°より小さいほど,コンクリートのせん断強度が増加するとして式(1)で表すこととしました.
           Hcd0 = η・ξ・Hcd     (1)
ここに,η = 1.66・ √(lrd/lrh),ただし,1≦ η ≦3.2,Hcd = fpod・Aτfpod = 0.15・√(f'cd')Hcd:補強鉄筋を用いない埋込み部の設計水平耐力(kN),fcd:コンクリートの設計圧縮強度(N/mm2),Aτ:破壊面の投影面積(mm2),lrd, lrh:ストッパー外縁から補強鉄筋までの距離(mm),ξ:補強鉄筋以外の鉄筋の影響等を表す係数
(2)破壊形態( iii )に対する耐力算定式(式(2))
 破壊形態( iii )では,補強鉄筋が降伏して耐力に至るため,コンクリートの分担分Hcdと鉄筋の分担分Hrdの和で表すこととしました.
           Hpod = Hcd + Hrd     (2)
ここに,Hrd = Ar・fsyd・cosθrHrd:補強鉄筋により受け持たれる埋込み部の設計水平耐力,Ar:補強鉄筋の面積(mm),fsyd:引張降伏強度(N/mm2),θr:補強鉄筋が設計水平力の作用軸となす角度(°)
 従来の算定式では,補強鉄筋の形状に関わらず耐力を単一として評価していましたが,提案する設計水平耐力算定式は,鉄筋の形状に応じた3つの破壊形態を捉えて耐力算定式で評価可能です(図3).また,非線形FEMで得られた一般的な諸元のストッパー埋込み部の耐力を,概ね精度良く評価できることを確認しています(図4).

3.提案する設計水平耐力算定式の適用効果2)

 支承部を模擬した試験体を製作し,提案した設計水平耐力算定式を用いて桁座と桁端に耐力差を設け,桁端に対して復旧が容易な桁座を先行して損傷させることにより,復旧が困難な桁端の損傷を抑制することが可能であることを確認しました(図5).これより,提案する設計水平耐力算定式を用いることで,地震時に支承部が損傷する場合においても,損傷部位を事前に把握し,また制御する設計が可能となることで,確実な復旧計画の策定など,支承部の復旧性を向上することができます.

4.おわりに

 提案した設計水平耐力算定式は,改定予定の鉄道構造物等設計標準・同解説(支承構造編)に導入される他,設計プログラムや手引き等において整備を進めています.
 本研究の一部は,国土交通省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施しました.

<参考文献>

1) 平野悠輔,轟俊太朗,田所敏弥:実橋モデルを用いた鋼角ストッパー埋込み部の損傷に関する検討,コンクリート工学年次論文集,Vol.43, No.1, pp.679-684, 2021.
2) 森勇樹,轟俊太朗,田畑勝幸,田所敏弥:補強鉄筋の配置の変更による鉄道橋りょうの鋼角ストッパー埋込み部の損傷の抑制に関する一考察,コンクリート工学年次論文集,Vol.44, No.2, pp.67-72, 2022.

執筆者:構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 田畑勝幸
担当者:構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 轟俊太朗,森勇樹,渡辺健

豪雨や地震で被災した基礎・抗土圧構造物と河川橋りょうの洗掘対策工の変状・措置の事例集

1.はじめに

 近年,異常な豪雨による水害が全国的に続発しており,また近い将来には南海トラフ巨大地震などの大規模地震の発生が危惧されています.これらの外力によって構造物に措置を要する変状が生じた場合,変状の程度や原因に加えて周辺環境や列車運行への影響度といった制約条件等を考慮した上で,措置の方法を判断する必要があります.措置の判断においては過去の被災・復旧事例が参考になりますが,制約条件等までが整理された事例集はありませんでした.また,豪雨や地震による被害自体を防止するためには予防保全が有効ですが,地震に対しては耐震補強,豪雨に対しては防護工による対策が一般的です.近年多発する河川橋りょうの洗掘災害に対しては洗掘対策工によって予防保全が図られますが,洗掘対策工に関する変状や措置に関して整理された事例集も存在しませんでした.
 以上の背景から,「豪雨や地震で被災した基礎・抗土圧構造物と河川橋りょうの洗掘対策工に関する変状・措置の事例集」(以下,基礎・抗土圧構造物の変状・措置の事例集あるいは本事例集と称する)を作成しました.

2.基礎・抗土圧構造物の変状・措置の事例集の概要

 本事例集は,鉄道の基礎・抗土圧構造物における豪雨や地震に関する被災・復旧事例,加えて河川橋りょうの洗掘対策工に関連する変状・措置の事例ならびに健全度判定例を取りまとめたものです.本事例集は「1章 事例集の概要」,「2章 豪雨による基礎・抗土圧構造物の被災・復旧事例」,「3章 地震による基礎・抗土圧構造物の被災・復旧事例」,「4章 河川橋りょうの洗掘対策工に関する変状・措置事例ならびに健全度の判定例」の4章構成になっています.各章の概要は後述しますが,本事例集の特徴は,可能な限り具体的な事例を示すために,①被災(変状の発生)から復旧(措置の実施)に至るまでの一連のプロセスを網羅的に整理,②周辺環境や付帯構造物の変状などの詳細な情報を記載していることです.以降では,各事例の概要と期待する活用方法を記します.
(1)豪雨による基礎・抗土圧構造物の被災・復旧事例
 2章では,豪雨によって,洗掘や侵食あるいは桁冠水が生じて河川橋りょうの橋脚や橋台(翼壁含む)が被災した事例と,背面地盤の流出を伴って土留壁・土留擁壁が崩壊した事例,計33事例を掲載しています.近年の河川橋りょうにおける洗掘災害の続発を踏まえて,洗掘や侵食による河川橋りょうの橋脚・橋台の被災事例に重点を置きました.事例ごとの整理項目の例を図1に示しますが,検査や措置に関する情報に加えて,構造や河川の諸元といった基本情報や被災時の降雨・水位情報など被災を誘引した外力情報についても記載しています.また,図2に被災状況の概略図の例を示しますが,被災状況が把握しやすいように図等を多く用いました.
 これらの事例は,構造物全体の変状の発生状況や周辺環境を考慮して措置方法を検討する場合に参考にして頂けるものと考えています.
(2)地震による基礎・抗土圧構造物の被災・復旧事例
 3章では,地震によって,橋りょうや高架橋,土留壁・土留擁壁が被災した事例,計18事例を掲載しています.基本的な掲載内容は,2章の豪雨による事例と同様であり,構造物の諸元から変状の種類,被災要因や措置に関する情報を網羅的に掲載しています.図3には盛土部の土留壁に食い違いが生じ,ロックボルト工で復旧した事例の概略図を示しますが,2章と同様に,図等を多く用いています.
 これらの事例は,2章の豪雨による事例と同様の活用方法を期待しています.
(3)河川橋りょうの洗掘対策工に関する変状・措置事例ならびに健全度の判定例
 4章では,河川橋りょうの洗掘対策工に関する変状・措置事例ならびに健全度の判定例を計18事例掲載しています.洗掘対策工の検査や措置の方法については,2021年6月に公開された「鉄道河川橋りょうにおける基礎・抗土圧構造物の維持管理の手引き(以下,手引きと称する)」において基本的な考え方の解説と健全度判定例がまとめられています.図4に事例ごとの整理項目の例,図5には変状の発生状況ならびに健全度判定の例を示しますが,本事例集では,検査や措置の具体例を示しており,手引きを活用する際の参考にして頂けるものと考えています.

3.おわりに

 本稿では,「豪雨や地震で被災した基礎・抗土圧構造物と河川橋りょうの洗掘対策工の変状・措置の事例集」の概要についてまとめました.特に基礎・抗土圧構造物の措置方法を検討する場合に活用して頂くことを期待していますが,目視による検査時の着眼点の理解などとしても活用して頂けるものと考えています.
 本事例集は鉄道技術推進センターのホームページ上で公開されています.今後1年間は試験公開としており,皆様にご活用いただきながらご意見を頂戴して内容を更新した上で,来年度以降に最終版を発刊する予定です.
 本事例集の作成にあたっては鉄道事業者の皆様から大変多くの貴重な情報をご提供いただきました.末筆ではありますが,ここに感謝の意を表します.

執筆者:構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 萩谷俊吾
担当者:構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 中島進,佐名川太亮
    防災技術研究部  地盤防災研究室   渡邉諭

スラブ軌道てん充層の劣化予測

1.はじめに

 図 1に示すスラブ軌道はメンテンナンスの省力化を目的として開発されましたが,寒冷地に敷設された一部の区間では,軌道スラブを支持するてん充層で圧縮強度の低下や軌道スラブ-てん充層間の隙間の発生といった劣化が確認されています.今後,スラブ軌道の長期的な補修計画を策定するためには,てん充層の劣化予測が必要になります.そこで,てん充層の圧縮強度の低下範囲および軌道スラブ-てん充層間の隙間の範囲を予測することが可能な劣化予測方法を開発しましたので,紹介します.

2.てん充層の劣化メカニズム

 てん充層の劣化の原因の一つとして,凍害が挙げられます.凍害は,材料内部の水分が凍結と融解を繰り返すことでひび割れが進展する劣化現象であり,てん充層に用いられているCAモルタルでも凍害によるひび割れの発生が確認されています.このような凍害を受けたCAモルタルでは,圧縮強度の低下や繰返し載荷による変形量の増加が報告されています.
 そのため,図 2に示すようなてん充道の欠損や軌道スラブ‐てん充層間の隙間は,以下に示すような現象が毎年繰り返されることで進展すると考えられます.
① てん充層の外周部で凍結融解作用が繰り返される.
② 凍結融解作用による凍害が生じた範囲で圧縮強度が低下する(圧縮強度が十分低下した範囲で欠損が生じる).
③ 列車荷重が繰り返し作用することで強度が低下した範囲のCAモルタルの変形が進み,軌道スラブとてん充層の間に隙間が生じる.
 なお,営業線のスラブ軌道では,てん充層の外周部から隙間が広がっています.この原因の一つとして,軌道スラブのそり変形が考えられます.日中の時間帯,軌道スラブ上面の温度が上昇することで,軌道スラブは図 3のように上に凸の形状にそり変形します.この状態で列車が通過すると,てん充層の外周部に圧縮応力が集中することで,隙間が生じると考えられます.

3.てん充層の劣化予測方法

 2章で示した劣化メカニズムを考慮したてん充層の劣化予測方法を開発しました.劣化予測のフローチャートを図 4に示します.
① 有限要素法による非定常熱伝導解析により,スラブ軌道の解析モデルに対して表面温度を変化させ,てん充層に伝わる温度を計算します.解析では,3日分の表面温度を与え,3日目におけるてん充層の最低温度を求めます.
② 数値解析で得られたてん充層の最低温度と凍結融解回数を,実験結果に基づいた推定式に入力することで,てん充層の圧縮強度を算定します.なお,現地測定データに基づいて気温が-4℃以下となり,その後1℃以上となる場合に凍結融解回数を1回として数えています.
③ 有限要素法による非定常熱伝導解析と構造解析の連成解析により,軌道スラブにそり変形を生じさせた状態で列車荷重(1台車分)を載荷し,てん充層の圧縮応力度を計算します.非定常熱伝導解析では実測値等に基づいて設定した-5℃,±0℃,+10℃の温度差を軌道スラブの上下面に与えることで軌道スラブにそり変形を与え,構造解析では列車荷重の通過によって生じるてん充層の最大圧縮応力度を求めます.
④ てん充層の圧縮強度に対する圧縮応力度の比と繰返し回数(通過軸数)を,実験結果に基づいた推定式に入力することで,てん充層の塑性ひずみ量を算定します.求めた塑性ひずみ量に相当する変形を解析モデルのてん充層に与え,隙間を作成します.
 供用開始時のてん充層の圧縮強度を5.0N/mm2,凍結融解回数を22回/年,通過軸数を370万回/年とした条件での劣化予測の結果を図 5に示します.上述した劣化予測のフローを繰り返し実施することで,図 5に示すようにてん充層の圧縮強度の低下範囲および軌道スラブ-てん充層間の隙間の範囲を予測することができます.

4.おわりに

 スラブ軌道のてん充層の劣化予測には,CAモルタルの供用開始時の圧縮強度,通過軸数,凍結融解回数が必要になります.CAモルタルの初期強度は工事誌や過去の文献に記載されている圧縮強度等に基づいて設定することができます.通過軸数は通過トン数から図 6に示すように,凍結融解回数は気象庁が公開している温度データから図 7に示すように地域ごとに設定することができます.
 今後は,補修したてん充層も劣化予測できるように,劣化予測法の改良を行う予定です.

執筆者,担当者:軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 高橋貴蔵

支承の免震化による橋りょうの地震時走行安全性と復旧性の向上

1.はじめに

 新設の長大橋や耐震補強が難しい既設の河川部等の橋りょうにおいて,低コスト化のために支承を免震化するニーズがありますが,橋りょうの橋軸直角方向の免震化による地震時の列車走行安全性については未解明な部分が多く,免震化の適用が敬遠される場合が多い状況にありました.そこで,鉄道橋りょうの橋軸直角方向の免震化による地震時列車挙動の基本メカニズムを解明し1),地震時走行安全性が向上する免震化の適用範囲,地震時走行安全性と復旧性の両方が向上する免震構造を提案したので紹介します.

2.地震時走行安全性が向上する免震化の適用範囲の提案

 地震時走行安全性が向上する免震化の適用範囲を提案するために,車両/橋りょうの非線形動的相互作用解析を行いました.ここでは,橋脚の振動特性と支承の性能に着目し,通常の橋りょう(非免震)と免震橋りょうの場合の地震時走行安全性を比較し,免震化の適用範囲を提案しました.
 図1に,車両/橋りょうの非線形動的相互作用解析で用いたモデルの概要図を示します.本モデルは,橋脚-支承-桁で構成し,支承および橋脚に非線形ばねを与えモデル化しました.橋脚,支承にはそれぞれトリリニア型,バイリニア型の骨格曲線,標準型の履歴特性を与えました.桁は弾性梁要素としました.橋脚の降伏震度,固有周期,支承の降伏震度,剛性をパラメータに,列車の走行位置,入力地震動を種々設定して網羅的に解析を行いました.入力地震動は,鉄道設計標準の設計地震動を用いました.入力地震動の加速度を段階的に増加させて入力し,最初に脱線が生じたケースの入力地震動の最大加速度を脱線限界入力加速度として,地震時走行安全性を評価しました.
 図2に,5径間連続PC桁(橋長400m)について,通常の橋りょうと免震橋りょうの地震時走行安全性を比較した結果を示します.橋脚の振動特性として橋脚の固有周期,支承の性能として軌道面の卓越周期に着目しました.
 図2(a)から,橋脚の固有周期が1.0秒以上で,脱線限界入力加速度が向上します.これは,支承が免震化することで軌道面の加速度が低下したためです.一方で,橋脚の固有周期が1.0秒以下では,支承が免震化することで軌道面の周期が車両の固有周期に近づくため脱線限界入力加速度は向上しません.
 図2(b)に,通常の橋りょうと3種の剛性の異なる免震支承の軌道面の卓越周期と脱線限界入力加速度の関係を示します.図から,軌道面の卓越周期が車両の固有周期に近い1.0秒付近では地震時走行安全性は向上せず,軌道面の卓越周期が2.0秒以上で,脱線限界入力加速度が大幅に向上します.
 以上から,支承の免震化により地震時走行安全性を向上させるための適用範囲は,橋脚の固有周期1.0秒以上,軌道面の卓越周期2.0秒以上,支承を橋脚より先行降伏かつ,L1地震時弾性であることを明らかにしました.

3.地震時走行安全性と復旧性が向上する免震構造

 図3に,地震時走行安全性と復旧性が向上する免震構造として,EF免震,EM免震を示します.EF免震は,中間部の支承は免震,端部の支承は非免震とするため,境界部の角折れ・目違いの対策は不要です.一方で,EM免震は,端部の支承も免震とするため,角折れ・目違いによる地震時走行安全性の低下を抑える境界部の対策が必要です.そこで,ダブルベアリング構造(図3(c)),角折れ緩衝軌道(図3(d))を提案しました.
 図4に,5径間連続PC桁(橋長400m)について,通常の橋りょう,EF免震,EM免震の地震時走行安全性と復旧性の比較を示します.ここでの復旧性は,橋脚の損傷程度に着目し,橋脚の最大応答塑性率で評価しました.図4(a)から,地震時走行安全性は,通常の橋りょうと比較して,EF免震は同程度以上,EM免震は大幅に向上しています.また,図4(b)から,L2地震時の橋脚の塑性率は,通常の橋りょうに比べて,いずれの免震構造とも5割程度であり,損傷が軽減されることがわかります.

4.おわりに

 本研究では,鉄道橋りょうの橋軸直角方向の免震化による地震時走行安全性と復旧性の両方の向上を目的とし検討を行いました.提案した適用範囲,免震構造を用いることでL2地震時においても地震時走行安全性の確保と復旧性の向上の両立が図れます.

<参考文献>

1) 成田顕次,徳永宗正,池田学:支承の橋軸直角方向の免震化による連続 PC 桁の地震時走行安全性の検討, 土木学会論文集 A2 (応用力学), Vol.77, No.2, I_551-I_562, 2021.

執筆者,担当者:鉄道力学研究部 構造力学研究室 成田顕次

発行者:中村 貴久 【(公財) 鉄道総合技術研究所 施設研究ニュース編集委員会 委員長】
編集者:塩田 勝利 【(公財) 鉄道総合技術研究所 軌道技術研究部 軌道構造】