20. 低周波空力音の測定評価手法の開発および発生源の解明

沿線環境を維持しつつ新幹線の高速化を実現するうえで、明かり区間走行時の圧力変動を抑えることは重要な課題の1つです。この圧力変動は、空力的な現象に起因して列車の中間部分から発生する成分(低周波空力音)と構造物振動に起因する成分から構成されます。しかし、低周波空力音については適切な測定評価方法が確立されておらず、発生源も不明でした。そこで、低周波空力音の評価に適した現地試験条件を選定するとともに、音源分離(リニアマイクロホンアレイ)にもとづく測定・評価手法を新たに開発しました。防音壁のない平地区間における現地試験にて、開発した本手法を適用した結果、16列車以上の測定本数を確保すると±1dBの精度で音源分離が可能になるとともに空間的な同定精度も上がることがわかりました。また、低周波空力音の発生源は車両の台車部付近に局在することが明らかになりました(図1)。

さらに、列車模型を高速で発射する模型実験を用いて、台車部付近の低周波空力音を実験的に再現する方法を開発しました。現地試験において開発した測定・評価手法を適用し、現地試験で観測されたものと同様の低周波空力音が台車を収納する車体下部の空間(キャビティ)から放射されることを明らかにしました(図2)。

本成果により台車部から発生する低周波空力音に対して、具体的な低減対策を模型試験で実験的に検討できるようになりました。また、実際の車両に低周波空力音の低減対策を適用した場合に、その効果の有無を現地試験で検証できるようになりました。