20. 省エネ施策評価のための列車運行電力シミュレーター

 消費エネルギー削減の観点から、地上設備や車両の各種省エネ施策が検討されていますが、それらの効果を予測するために、より精度の高いエネルギーシミュレーターが求められています。
 既に、複数車両と複数変電所間での電流・電圧の相互作用を詳細に計算し、電圧の変化による加速の変化を運転曲線に反映させる列車運行電力シミュレーターを開発しましたが、このシミュレーターに、営業時の平均的な運転操縦を再現する運転曲線作成機能を組み込み、さらに、複数線区、さまざまな車両形式など、営業路線を想定した実用規模の計算に対応可能としました(図1)。
 また、消費エネルギーの計算結果に大きな影響を与える補機電力、走行抵抗、ブレーキ扱い等のパラメータについては、従来は定格値・規格値等を使用していましたが、車両情報記録装置による車両大規模データを活用し、実態に近い値を設定する手法を開発しました。

 ある営業路線を対象として営業時間帯での消費電力量測定結果と本シミュレーターによる推定計算結果を比較し、これまでは20〜10%程度であった精度に対して5%以内の精度で実際の傾向を再現でき、大幅な性能向上を確認しました(図2)。
 これにより、列車運行電力シミュレーターを用いた各種省エネ施策の評価が可能となりました。

 本シミュレーターを用いて、ある営業路線での電力貯蔵装置の導入による省エネ効果を試算したところ、外気温や電力貯蔵装置の設置箇所によって、省エネ効果は0.7%〜3.3%まで変動することが明らかになりました(図3)。