19. 沿線騒音予測に基づく車輪踏面管理法

 新幹線車両の車輪踏面に偏摩耗(周方向に長さ 300mm 程度で発生する凹み)が発生した場合、主に構造物騒音の増加により沿線騒音が増加することがあります。偏摩耗による沿線騒音の増加量は、個々の車輪の偏摩耗の深さ(偏摩耗量)だけでなく、編成内での偏摩耗の発生部位や発生数に大きく影響されます。
 そのため、沿線騒音を一定以下に管理するためには、編成全体の車輪踏面を効率的に管理する方法が望まれます。
 そこで、概ね100km/h以下で列車が走行する低速区間のレール振動から個々の車輪の偏摩耗量を推定し、さらに、概ね200km/h以上で列車が走行する高速区間の沿線騒音を予測する手法を構築しました。

 車輪の偏摩耗部分がレールと接触する位置は毎回変わるため、レールに設置された1つの振動センサが検知する値は毎回大きく変動します。
 そこで、3点のレール振動データを合成することにより、偏摩耗がレール振動に与える影響を精度良く評価する手法を構築しました(図1)。
 合成したレール振動から、個々の車輪の偏摩耗量を推定できます。
 さらに、従来の新幹線沿線騒音予測手法を拡張し、列車が低速区間を通過した時の台車ごとのレール振動の変化を、高速区間の構造物騒音のパワーレベルに台車ごとに反映させ、沿線騒音を予測する手法を構築しました(図1)。
 沿線騒音の予測値と実測値の差は約±1dB以内であり、低速区間走行時のレール振動から高速区間走行時の騒音予測が可能であることを実証しました(図 2)。

 本手法による高速区間の騒音予測結果は、編成全体としての車輪踏面状態を表しており、環境基準などと比較することで、車輪転削時期の適正化などの車輪踏面管理に活用することができます。