15. 狭隘箇所における急速施工に適した盛土構造

 都市部の複線化工事など、狭隘な箇所での盛土の建設工事では、小型の施工機械や人力による
締固め作業が必要となるため、工期が長くなり、また多くの人工を要するため、急速化や省力化
が求められています。これに対し、施工時は流動性が高く、かつ盛土構築時特有の締固め作業が
不要な、流動化処理土(建設発生土にセメントと水を混合した材料)の適用が考えられます。し
かし、流動化処理土で構築した盛土の列車荷重支持性能が不明なうえ、乾燥により強度が低下す
るため、これまでは鉄道盛土としての使用実績はありませんでした。

 そこで、乾燥から流動化処理土を保護するために、表面を砕石の保護層で被覆する構造を提案
し(図1)、保護層による列車荷重の分散を考慮して、流動化処理土の必要強度(600kPa 以上)
等の要求性能を明らかにしました。また、施工時は高流動で、固化後は高強度という流動化処理
土の特徴を活かし、狭隘箇所における盛土構築を対象に袋体型枠と定着用補強材からなる急勾配
化型枠(図2) を用いて施工時・供用時の安定化を図ることで(図3)、通常の盛土よりも急速施
工が可能になるとともに、のり面の急勾配化により用地幅を縮小できます。

 狭隘箇所での鉄道盛土は、従来は、プレキャスト擁壁などを用いて構築していましたが、高さ
3m、天端幅7.5m の盛土を建設する条件において、提案構造を活用することにより、従来構造よ
りも盛土構築に要する作業期間を20%、人工を10% 削減可能なことを確認しました(表1)。

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