18. ひび割れの幅と発生位置に応じたコンクリート構造物の補修方法

 鉄筋コンクリート構造物に発生したひび割れから水分が浸透すると、劣化が進行する可能性
があります。これまでは、ひび割れの幅が大きいほど影響は大きく、ひび割れからの水分浸透
を抑制する補修材の注入と表面被覆を組み合わせて補修する必要があると考えられてきまし
た。そのため、特に橋りょうの下面に発生したひび割れの補修の際には足場を設置するなど、
大きな労力とコストを要していました。

 一方、コンクリート内部の可視化技術を用いて調査したところ、下面に発生したひび割れ
からの水分浸透量は上面や側面に比べて少なく、また下面に発生した1mm 幅と0.2mm 幅の
ひび割れを比較すると、前者の方が水分の浸透量が少なく、浸透する範囲も狭いことがわか
りました(図1)。さらに、下面に表面被覆材を施工すると、水分の蒸発が抑制されて内部の
水分量が増加し、むしろ鉄筋の腐食等を進行させるリスクがあることがわかりました(図2)。

 以上のことから、下面に発生したひび割れに対しては、水分浸透を抑制する補修より剥落
防止に重点を置き、上面側のひび割れには、水分浸透対策を優先した補修計画が有効となり
ます(図3)。

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