21. 防除効果および施工性に優れた蒸気を用いた雑草防除手法

 軌道の外から用地境界までの鉄道用地における雑草防除では、雑草を短時間で除去できる刈払
いが広く行われています。一方で、夏季は短期間で雑草が再生してしまうほか、振動工具の使用
による健康障害防止のための作業時間の制限や、沿線に敷設された信号通信ケーブルの切断防止
対策などが必要でした。そこで、農業分野で用いられている、雑草に蒸気を吹き付け、その熱に
よりタンパク質に熱変性を起こして枯死させる方法(蒸気除草)に着目し、防除効果および施工
性に優れた、鉄道用地に適した雑草防除手法を開発しました。

 従来の蒸気除草では、上水道の使用を前提とした大型のボイラーを用いていたため、多量の水
を消費していました。本手法では、多量の水の確保が難しい鉄道用地で効率よく施工するため、
汎用スチーム洗浄機と新たに開発した手持ちノズルを用いる方式としました。これにより、1 時
間あたりの水の消費量を従来の約1000 リットルから72 リットルと1/10 以下に抑えながら、雑
草の枯死に必要な加熱性能を確保し、施工性を高めました(図1)。さらに、蒸気除草では刈払
いのような回転刃がないことから、信号通信ケーブルの切断防止対策も不要となります。

 大型雑草の繁茂箇所での現地試験の結果、施工約3 ヶ月後の大型雑草の再生が施工範囲の10%
程度に留まり、1 年後の大型雑草の再生株数も70% 減少することも確認しました(図2)。

 また、単位面積当たりの施工速度は44% 向上し、300m2 施工を想定して施工効率を試算した
結果、刈払いに比べて全体の所要時間が72 分から50 分へと30% 短縮できるとともに、必要作
業員数も5 人から3 人になり、60% に抑えられることを確認しました。

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