第336回 鉄道総研月例発表会

日時 2020年01月30日(木) 13:00~17:00
場所 東京 日本工業倶楽部 大ホール
主題 地震・防災技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:00~13:10
地震に対するレジリエンス向上に向けた最近の研究開発

地震に対する鉄道のレジリエンスを向上させるためには、ハード・ソフト両面からの多角的な地震対策や、「危機耐性」に代表される新たな概念の導入が重要と考えられる。本発表では、上記に関連する最近の研究や技術開発成果について、その概要と位置づけを紹介し、今後の研究開発の方向性について報告する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.12 「中小地震から巨大地震までを対象とした地震対策技術」

発表者
鉄道地震工学研究センター長 山本 俊六

13:10~13:30
実地震動データを利用した鉄道沿線の地震動詳細評価手法

鉄道では、地震発生時に列車運行を安全に再開させるために、線路沿線に数10km間隔で設置されている地震計の観測値を基に徒歩等による巡回点検を実施している。しかし、地震計間の地震動は一様ではなく、地震時にその空間変化を詳細に把握することができれば、巡回の効率化、早期運転再開につながると期待される。そこで、鉄道沿線での臨時地震観測記録から高密度、高精度な信頼性の高いサイト増幅特性と地震動分布を評価する手法を提案した。本発表では、提案手法とともにその適用性と効果の検討結果について報告する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.12 「近接サイト特性比を用いた鉄道沿線の地震動分布評価手法」

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震解析研究室 主任研究員 是永 将宏

13:30~13:50
地震基盤波形データベースに基づく設計地震動評価

平成24年の耐震設計標準では、設計地震動の考え方が変更されており、構造物の安全性照査に用いるL2地震動を、地点依存の強震動予測手法により算定することが原則となっている。地震動評価において、震源特性や波動伝播特性は地点によらず標準的な値を設定する。一方、地震基盤~耐震設計上の基盤面までの地震増幅特性は地点固有に設定する。これらの特徴を考慮して、地震基盤位置で全国共通の地震基盤波形データベースを構築することで、簡便に地点固有の設計地震動を評価する方法について報告する。

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震動力学研究室 副主任研究員 田中 浩平

13:50~14:10
自重補償構造と倒壊方向制御構造による高架橋の危機耐性向上

平成24年の耐震設計標準では、想定を超える地震に対しても破滅的な被害を防止する「危機耐性」の向上を求めている。こうした危機耐性の向上を実現する具体的な構造として、自重補償柱で構造物の完全な倒壊を防止する「自重補償構造」、および住居や道路等の方向への倒壊を防止し人命損失等の危機を回避する「倒壊方向制御構造」を提案して実用化を進めている。本発表では、これらの工法開発の概要、特に大規模振動台試験による実証試験結果、および既設・新設に対する設計法を紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.12 「高架橋の危機耐性を向上させる自重補償構造の振動台試験」
 鉄道総研報告 Vol.32 No.9 「高架橋の危機耐性を向上させる倒壊方向制御構造の振動台試験」

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震応答制御研究室長 豊岡 亮洋

14:10~14:30
小径杭と土のうを併用した鉄道構造物の地震時応答低減手法の開発

軟弱な地盤上に構造物を建設する場合、杭基礎が採用されることが多いが、杭基礎では杭頭をフーチングと剛結するため、杭頭の過密配筋や杭の大口径化がしばしば問題となる。一方、直接基礎では、フーチングの浮上りによる地震時応答の低減効果があるが、適用地盤の制約が大きい。そこで、小径杭と土のうを併用して基礎を構築し、構造物の地震時応答の低減や杭頭構造の省略を可能とする工法の開発を行った。本発表では、提案構造の地震時応答抑制効果のメカニズムを示すとともに、最適な土のう構造についても報告する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.12 「小径杭と土のうを併用して応答低減を図る新しい直接基礎構造」

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震動力学研究室 研究員 土井 達也

14:30~15:50
休憩・技術交流会コアタイム

15:50~16:00
気象災害に関する最近の研究開発

我が国の鉄道防災を進める上では、切迫する巨大地震と激甚化する気象災害、設備の老朽化、少子高齢化による就労人口の減少などの課題と向き合わなければならない。本発表では、これらの課題の実状を示した上で、鉄道総研で現在進めている雪氷災害、豪雨災害、強風災害、火山災害などを対象とした防災技術の開発状況について、その概要を報告する。

発表者
防災技術研究部長 太田 直之

16:00~16:20
融雪災害危険度判定システムの開発

多雪・山間線区では、融雪期に斜面積雪からの連続的に発生する融雪水に起因した斜面崩壊の危険性が高まる。本発表では、アメダスデータ等から任意地点の気象データを推定する手法を組込んだ融雪量推定モデルや、融雪量と積雪深を指標とした融雪災害危険度評価手法を概説するとともに、試作した融雪期の斜面安定度判断システムの紹介やその活用方法について報告する。
 RRR Vol.77 No.1 「AMeDASデータを利用して融雪期の斜面の安定性を評価する」
 鉄道総研報告 Vol.31 No.5 「融雪期の斜面災害に対する管理手法」
 鉄道総研報告 Vol.27 No.11 「融雪水の積雪底面流出量の推定手法」

発表者
防災技術研究部 気象防災研究室 研究員 佐藤 亮太

16:20~16:40
常時微動を用いた河川橋脚の固有振動数のモニタリング手法

橋脚基礎地盤の洗掘に対する健全性を評価する指標として、橋脚の固有振動数が用いられている。一般に固有振動数の測定には衝撃振動試験が用いられているが、常時微動を用いることで、加振作業の負担がなくなるとともに、常時モニタリングが可能となる。そこで、本発表では、河川橋脚の天端部両端での常時微動計測結果のみから固有振動数を自動的に同定する手法について報告する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.9 「河川橋脚の天端両端部での微動計測による固有振動数の自動算定手法」

発表者
防災技術研究部 地盤防災研究室 主任研究員  渡邉 諭

16:40~17:00
降灰が鉄道の電気設備に及ぼす影響と公的情報の活用

降灰による軌道回路の短絡不良やがいしのせん絡は、鉄道の安全に関わる事象であるが、発生条件に関しては体系的な検討はなされていない。また、ハザードマップや降灰予報などの公的情報が整備されつつあるが、鉄道の降灰対策における活用方法については整理されていない。そこで、短絡不良やがいしのせん絡が生じる条件を、実験的に明らかにし、その結果に基づいて公的情報の活用方法について検討を行ったのでその結果について報告する。
 鉄道総研月例発表会 「被災事例に基づく火山噴火が鉄道に与える影響の想定」
 鉄道総研報告 Vol.29 No.1 「国内の火山活動における鉄道の被災及び対策事例」

発表者
防災技術研究部 地質研究室 研究員 河村 祥一