第346回 鉄道総研月例発表会

日時 2021年03月15日(月) から
場所 ウェブ配信(視聴無料)
主題 人間科学に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

(関係研究部 人間科学研究部


人間科学に関する最近の研究開発

鉄道総研では、鉄道システムに関わる人の視点から安全で、便利で、快適な鉄道を考えるヒューマンファクター研究を行っている。最近の取り組みとしてはヒューマンエラー事故防止、労災事故・トラブル防止、輸送障害対策、利用環境改善に関する研究開発がある。本稿では、この中からそれぞれ代表的な研究テーマの成果について報告する。
 鉄道総研報告 Vol.34 No.1 「鉄道における最近の人間科学研究」
 鉄道総研報告 Vol.33 No.1 「鉄道における最近の人間科学研究」
 鉄道総研報告 Vol.31 No.11 「人間科学における安全のための研究開発」

発表者
人間科学研究部長 小美濃 幸司


鉄道作業場面における判断傾向評価手法

作業後に自分の作業の結果を今一度確認しないなど、慎重さに欠き、作業安全を脅かしかねない判断をしがちな心理傾向を評価するための手法を開発した。意思決定を「状況の認識」や「選択後の見直し」など、複数の段階からなる一連の行為として捉えた意思決定スキルモデルを提案し、その各段階を阻害する心理要因の影響を評価可能なソフトウェアを開発した。さらに、ソフトウェア使用中の脳活動をfMRI(磁気共鳴機能画像法)によって測定し、その生理的妥当性を明らかにしたので、報告する。
 鉄道総研報告 Vol.35 No.2 「鉄道作業場面における判断傾向評価手法」
 鉄道総研報告 Vol.31 No.11 「判断ミス防止訓練に向けた意思決定課題の基礎的評価」

発表者
人間科学研究部 安全心理研究室 主任研究員 北村 康宏


運転情報記録を活用したヒューマンエラーの発生予測手法

ヒューマンエラー防止を支援するために、運転情報記録装置に蓄積された膨大な運転実績データから運転士によるエラーの発生可能性を定量的に算出する学習モデルを構築した。「ブレーキ緩解の使用率」や「停車200m手前地点の走行速度のばらつき」など、エラー発生の予兆を示す変数を抽出し、エラーを起こしやすい運転士やエラーが発生しやすい駅の特徴を明らかにした。運転実績データをヒューマンエラー防止に活用するための、これらの知見について紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.35 No.1 「駅停車に関わるエラー防止のための運転情報記録の解析」
 鉄道総研 人間科学ニュース No.217 「停車時の運転記録の解析」
 主要な研究開発成果(2019年度) 「音声メッセージと遮断タイミングによる踏切警報中の歩行者の侵入防止」

発表者
人間科学研究部 人間工学研究室 副主任研究員 鈴木 綾子


鹿忌避音装置の開発

鹿との衝撃事故が増加傾向にあり、事故防止のための新しい対策が求められている。鉄道総研では、鹿との衝撃事故対策として忌避音の開発を行っている。本発表では、営業車両での鹿忌避音吹鳴試験の概要とその解析結果を紹介する。走行車両からの忌避音吹鳴は沿線にいる鹿の逃走を促進し、衝撃事故につながる危険行動を低減させる効果があることを見出した。また、車両からの忌避音吹鳴に必要な吹鳴システムの設計・試作・試行を実施したので紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.31 No.11 「忌避音による鹿接触事故防止技術の開発」
 鉄道総研報告 Vol.29 No.7 「車両接近時の鹿の行動と音による行動制御の可能性」
 RRR Vol.74 No.3 「鹿の行動特性を利用して事故対策を行う」

発表者
人間科学研究部 生物工学研究室 主任研究員 志村 稔


音声メッセージと遮断開始タイミングによる踏切警報中の歩行者の進入防止

従来の踏切事故対策は自動車に対するものが多く、また、踏切歩行者への意識調査を行ったところ、警報鳴動中に進入し、遮断完了までに踏切から出られず取り残された経験がある人の61%が本来「進入禁止」を伝える警報の意味を「注意」と認識していた。そこで、「進入禁止」を伝える警報音への音声メッセージの追加と遮断開始タイミングの早期化を検討した。本発表では、これらの対策の効果の検証結果を紹介する。
 RRR Vol.77 No.7 「鉄道利用者の安全性向上」
 主要な研究開発成果(2019年度) 「音声メッセージと遮断タイミングによる踏切警報中の歩行者の侵入防止」

発表者
人間科学研究部 安全性解析研究室 副主任研究員 鏑木 俊暁


ロービジョン者の視認性に配慮した駅トイレ内の輝度コントラスト評価

駅トイレは視覚障害者にとって利用が難しいと言われている。視覚障害者の大半は残存視力を有するロービジョン者(弱視者)であることから,トイレ内の視環境整備が重要である。本発表では,ロービジョン者による駅トイレの使用実態調査に基づいて,ロービジョン者に必要な視環境について述べる。また,トイレ内設備の視認性評価実験の概要を紹介し,輝度コントラストの評価手法について報告する。
 鉄道総研報告 Vol.34 No.1 「ロービジョン者による駅トイレの使用実態に関する基礎調査」
 RRR Vol.77 No.11 「ロービジョン者に配慮してトイレの色彩を計画する」

発表者
人間科学研究部 人間工学研究室 主任研究員 大野 央人


異なる清掃方式の駅トイレ床表面に付着する細菌の調査

利用者に快適に駅トイレを利用してもらうためには、より効果的な駅トイレ清掃を実施することが求められている。環境中の微生物は、美観を損ねたり、臭気の要因になり得るとの報告がある。そこで、駅トイレの床構造の違いに応じた異なる清掃方式(乾式清掃、湿式清掃)をそれぞれ実施する駅トイレ床面に対し、培養法による細菌量調査と、遺伝子解析手法による細菌の定性調査を実施し、清掃方式別の細菌量と細菌種属の特徴を整理したので紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.35 No.2 「清掃方式の違いによる駅トイレ床面の細菌の定量・定性評価」

発表者
人間科学研究部 生物工学研究室 主任研究員 川﨑 たまみ


関係研究部

 人間科学研究部