第355回 鉄道総研月例発表会

日時 2022年03月11日(金) から
場所 ウェブ配信(視聴無料)
主題 車両技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

(関係研究部 車両構造技術技術研究部 車両制御技術研究部 鉄道力学研究部

アンケートとご質問は締め切らせていただきました。
お忙しい中ご協力いただいた皆様に、御礼申し上げます。


車両技術に関する最近の研究開発

車両技術に関しては、安全性の向上を中心に、低コスト化、環境との調和、利便性の向上につながる研究開発を中心に行っている。ここでは、最近の取り組みの中から、蛇行動発生の有無を分ける限界曲線を解析的に求める手法、温度変動に対応した車両用リチウムイオン電池の劣化予測手法の開発、曲線通過性能を向上するボギー角操舵システムの開発について紹介する。

 鉄道総研報告Vol.36No.2「周期解計算手法を用いた蛇行動安定性解析」
 鉄道総研報告Vol.35No.8「曲線通過性能を向上するボギー角操舵システムの開発」
 鉄道総研報告Vol.36No.2「温度変動に対応した鉄道車両用リチウムイオン電池の劣化予測手法」

発表者
車両構造技術研究部 部長 石毛 真


フェールセーフ性を向上したアクティブトーションバー式車体傾斜システム

振子式と空気ばね式の長所を両立するアクティブトーションバー式車体傾斜システムの開発について、実用化に向けた傾斜機構の改良とフェールセーフ性の向上に取り組んだ。本発表では、傾斜性能とフェールセーフ性を考慮した傾斜機構と車体支持装置を提案し、良好な傾斜制御性能を持つこと、ならびに制御電源遮断時でも特別な装備を追加せずに車体ロール支持剛性が確保できることを試作台車の定置傾斜試験結果により示す。合わせて実用化に向けたフェールセーフ性確保の考え方とシステム構成を紹介する。

 鉄道総研報告Vol.35No.8「フェールセーフ性を向上したアクティブトーションバー式車体傾斜システム」
 鉄道総研報告Vol.33No.3「アンチローリング装置を活用した車体傾斜機構」
 鉄道総研報告Vol.33No.10「空間フィルタを用いた線路曲率照合による自車位置検出システムの開発」

発表者
車両構造技術研究部 走り装置研究室 主任研究員(上級) 風戸 昭人


床下機器の高減衰弾性支持による車体上下振動低減手法の検証

車両の快適性向上を目的とした車体振動低減策の一つとして、床下機器を高減衰部材で弾性支持する手法の開発に取り組んでおり、新幹線型試験車両の床下質量を弾性支持するための防振ゴムを製作し、車体の上下振動低減効果を検証した。軌道変位を模擬した条件による加振試験を行い、車体上下振動が低減することを確認するとともに、床下機器を振動源とした条件による加振試験を行い、高周波振動の伝搬が抑制されることを確認したので報告する。

 鉄道総研報告Vol.36No.2「床下機器弾性支持質量の違いによる車体弾性振動低減効果の検証」
 鉄道総研報告Vol.29No.2「床下機器の高減衰弾性支持による車体弾性振動低減」

発表者
車両構造技術研究部 車両振動研究室 主任研究員 相田 健一郎


ヨーダンパを装備した車両の地震時走行安全性向上

新潟県中越地震以降、新幹線を対象に地震時走行安全性向上のための研究開発が行われている。一方、在来線も特に大都市圏においてはその輸送量から著大地震に遭遇した際に被害が大きくなる可能性がある。そこで、在来線特急用車両のようなヨーダンパを装備した車両を対象として、ヨーダンパ配置を変更することによる地震時走行安全性向上効果を、実台車加振試験および車両運動シミュレーションにより明らかにしたので報告する。

発表者
鉄道力学研究部 車両力学研究室 主任研究員 飯田 浩平


鉄道車両におけるモニタデータを用いた機器の異常検知

近年、一部の鉄道車両には車両機器の動作状態を常時記録できるモニタ装置が備わっている。車両機器の動作状態のデータ(モニタデータ)には車両機器の異常やその予兆が現れる可能性があるため、モニタデータを活用した異常検知を行うことで車両品質の向上が見込まれる。本発表では、ニューラルネットワークを基本として、時系列データの学習に適したLSTM (Long Short Term Memory)を用いた異常検知手法を開発し、気動車で記録されたモニタデータに対して適用した結果を紹介する。

 鉄道総研報告Vol.36No.2「鉄道車両におけるモニタデータを用いた機器の異常検知」

発表者
車両制御技術研究部 動力システム研究室 研究員 横内 俊秀


銅系焼結合金摩擦材の基材耐熱性が摩擦係数に与える影響評価手法

ブレーキ摩擦材には所定の運動エネルギーを受容する熱容量の確保に加え、熱的に安定した摩擦係数の確保が求められることから、新幹線のような高速列車のブレーキには、銅を主体とした基材と固体潤滑材や摩擦調整材などで構成された銅系焼結合金摩擦材が適用されている。本研究では、固体潤滑材として含まれている黒鉛の熱劣化を要因とした摩擦係数の変化に隠れ、これまで評価困難であった銅系焼結合金摩擦材の基材耐熱性と摩擦係数の関係を明瞭に評価する手法を考案したので報告する。

 鉄道総研報告Vol.32No.8「高温摩擦試験装置を用いたブレーキ摩擦材の評価手法」
 鉄道総研報告Vol.35No.8「銅系焼結合金摩擦材の基材耐熱性が摩擦係数に与える影響評価手法」

発表者
車両制御技術研究部 ブレーキ制御研究室 副主任研究員 西森 久宜


車軸の超音波探傷における反射点のずれによる影響の評価

鉄道車軸では斜角超音波による探傷検査が行われているが、車軸の平行部や車輪座などの境界面に超音波が斜角入射するとき、超音波の反射点が境界面に沿ってずれる「音束変位」が生じることが知られている。本発表では、超音波の境界面への入射角と音束変位との関係を理論および有限要素計算により確認したうえで、音束変位が車軸の超音波探傷結果に及ぼす影響について、きずと探触子の幾何学的な配置に注目して理論的に評価したので報告する。

 鉄道総研報告Vol.36No.2「車軸の超音波深傷における反射点のずれによる影響の評価」
 鉄道総研報告Vol.27No.12「車輪との接触面圧を考慮した車軸きずエコーの定量評価」
 RRR Vol.65 No.5「車両に潜むきずの検査法」

発表者
車両構造技術研究部 車両強度研究室 主任研究員 牧野 一成


台車挙動測定による走行安全性評価手法

鉄道車両の走行安全性を評価する輪重・横圧測定(PQ測定)では、専用輪軸の準備や台車への装架などの費用や労力がかかることが課題として挙げられる。本研究では、簡易に走行安全性を評価することを目的として、6軸センサーや変位計により比較的容易に測定可能な台車挙動データを用いて、輪重と横圧を推定する手法を検討した。そして営業線で走行試験を実施し、PQ軸で実測した輪重、横圧および脱線係数と、提案する推定手法による推定結果を比較することにより妥当性を検証したので報告する。

 鉄道総研報告Vol.34No.5「台車挙動測定による走行安全性評価手法」

発表者
車両構造技術研究部 車両運動研究室 主任研究員 飯田 忠史


軌道の平面性変位に対する車両の追従性能評価試験法

急曲線走行時の鉄道車両の乗り上がり脱線に対する走行安全性を確保するためには、車輪とレール間の作用力である輪重と横圧の大きさが重要となる。特に、車両が低速で走行する場合には、軌道の平面性変位に対して車輪がレールから離れず、輪重が極端に小さくならないことが求められる。通常、鉄道車両の走行安全性は走行試験によって評価するが、ここでは、軌道の平面性変位と車両の特性から生ずる輪重減少の関係を評価することが可能な、実物の1車両を用いた定置試験方法について紹介する。

 RRR Vol.78 No.4「急曲線での鉄道車両の走行安全性を評価する」

発表者
鉄道力学研究部 車両力学研究室 主任研究員(上級) 土井 久代
※PDF資料、動画中の発表者の肩書は収録当時のものです。

動画公開期間:6か月

の動画はGoogleが提供するYouTubeサービス上で公開しています。同サイトのプライバシーポリシーについてはGoogleの定めによります。