第367回 鉄道総研月例発表会

日時 2024年03月13日(水) 13:00~17:00
場所 日本工業倶楽部会館2階 大会堂
主題 鉄道構造物の建設・改良に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

関係研究部  構造物技術研究部

13:00~13:10
鉄道構造物の建設・改良に関する最近の研究開発

 都市内の新線建設や新幹線建設、あるいは連続立体交差化事業に代表される既設鉄道の高架化工事や地下化工事、既設鉄道駅のリニューアル工事など、鉄道構造物の建設・改良が関わる場面が数多く見られ、そこには設計や施工の技術課題が存在する。ここでは、鉄道構造物の建設・改良に関する最近の研究開発の方向性を、本日の発表件名の研究開発事例を示しつつ、概説する。

発表者
構造物技術研究部長  神田 政幸

13:10~13:30
RCラーメン高架橋の柱はり接合部の耐力評価

 RCラーメン高架橋の柱はり接合部では、構造細目を遵守することで、具体的な照査は省略されるが、この構造細目に従うと過密な配筋となることがある。また、施工の制約や高強度鉄筋の使用など、構造細目を遵守できない事例に対し、接合部の耐力等を評価可能な方法が求められている。本発表では、実験および有限要素解析により、柱はり接合部の耐力評価を行い、これに基づく接合部の帯鉄筋量や曲げ内半径に関する構造細目を新たに提案したので報告する。

<参考文献>
・中田裕喜,渡辺健,田所敏弥:RCラーメン高架橋の柱はり接合部の構造細目が耐力に及ぼす影響,鉄道総研報告,Vol.37,No.1,pp.29-35,2023

発表者
構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 主任研究員  中田 裕喜

13:30~13:50
BIM/CIMモデルを活用した鉄道コンクリート構造物の照査手法

 鉄道構造物の建設産業では、労働者人口の減少に伴う作業の労力軽減が求められており、国土交通省は情報通信技術の導入等により生産性向上を図るi-Constructionを推進している。そこで、構造物の三次元モデルに寸法や材料強度等の属性情報を含めた情報モデル(BIM/CIMモデル)を活用している既往の設計手順に対し、設計工程でBIM/CIMをさらに有効活用することで、作業時間を低減可能な鉄道コンクリート構造物の設計手順を検討したので報告する。

発表者
構造物技術研究部 コンクリート構造研究室長  渡辺 健

13:50~14:10
鉄道長大橋における混合構造の接合部の設計方法

 不均等な支間割の連続桁においては、合成桁とPC桁を直列に配置した混合構造とすることで、各支点の
反力のバランスを調整でき、構造を合理化することが可能となる。そこで、この混合構造を鉄道橋に適用することを目的として、合成桁とPC桁の接合部についてFEM解析と試設計により検討し、力の伝達機構を明らかにし、実用的な設計方法を提案した。さらに、動的シミュレーションにより混合構造における衝撃係数の算定方法も検証したので報告する。

発表者
構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室 副主任研究員  笹田 航平

14:10~14:25
休憩

14:25~14:45
高力ボルト摩擦接合のエネルギー吸収を利用した落橋防止装置

 既設鋼鉄道橋における支承部の耐震補強は、鋼製支承の補強や強固な移動制限装置の設置等が一般的である。しかし、これらの方法は慣性力の増加によって桁や橋脚の損傷につながる点が課題となっている。また、ダンパーを用いて慣性力の軽減を図る方法もあるが、一般に高コストとなる点が課題となっている。そこで、コストを抑えつつ桁や橋脚への慣性力を軽減することを目的に、高力ボルト摩擦接合継手のすべりによるエネルギー吸収を活用した落橋防止装置を開発した。本発表では開発装置について報告する。

発表者
構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室 研究員  二宮 僚

14:45~15:05
耐風性に優れたコンパクト型旅客上家

 プラットホーム上に設置されるコンパクト型旅客上家は、風荷重が支配的となることが多く適切な耐風設計が重要であるが、コンパクト型旅客上家の形態と風荷重の関係は充分に整理されていなかった。そこで、コンパクト型旅客上家の形態の違いが風荷重による躯体の応力へ与える影響を調べ、その結果を元に、従来の形態に比べ風荷重による応力の低減が期待されるコンパクト型上家形態を提案したので報告する。

<参考文献>
・石川大輔,清水克将,鈴木実,野口雄平:小型地平ホーム上家の風圧力及び部材応答に対する壁面の開口の影響,鉄道総研報告,Vol.37,No.6,pp.23-29,2023
・石川大輔,山本昌和,土井一朗:駅ホームの上家の耐風性能を高める,RRR,Vol.80,No.3,pp.32-37,2023

発表者
構造物技術研究部 建築研究室 研究員  土井 一朗

15:05~15:25
流動化処理土の鉄道土構造物への適用方法

 鉄道分野では、列車荷重が作用する条件下における流動化処理土の適用は、トンネルインバート部に限定されていた。施工時に流動性があり、締固め不要という流動化処理土の特性を活かして、盛土や列車荷重を受ける部位への埋戻し土を対象とした土構造物への適用にあたっての必要仕様を設定した。更に流動化処理土の特徴を踏まえた盛土構造物の急速施工法を提案した。本発表では、提案仕様における列車荷重作用時の挙動や試験施工の内容を報告する。

発表者
構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 副主任研究員  倉上 由貴

15:25~15:45
埋設型枠を用いた補強土擁壁の施工法

 補強土擁壁は、優れたコストパフォーマンスから多くの鉄道工事に活用されている。一方で、近年では都市部の改良工事や複線化工事など、狭隘箇所での施工を強いられる場合もあり、施工性を向上させるためにも新しい施工法が求められていた。本発表では、埋設型枠を活用して施工速度を向上させ、施工用地が制約された条件でも補強土擁壁の建設を可能とする新しい施工法を提案したので、その内容を報告する。

発表者
構造物技術研究部 基礎・土構造研究室長  中島 進

15:45~16:00
休憩

16:00~16:20
都市部の掘削工事における地盤改良体による盤ぶくれ対策工

 被圧層を含む地盤で掘削工事を安全に進めるためには、盤ぶくれ等に対して底盤安定を確保することが重要となる。盤ぶくれ対策工のひとつとして、底盤改良があり、円柱状の地盤改良体を連ねて底盤に改良層を造成する。そのため工期・工費を要する傾向があり、施工量を低減した対策工が求められていた。そこで本発表では、部分的な底盤改良に関する数値解析と、その知見に基づく盤ぶくれ対策工の簡易な評価法について報告する。

発表者
構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 主任研究員  牛田 貴士

16:20~16:40
既設トンネルに極近接するシールドトンネルの施工時影響解析法

 都市部の地下間は過密化が進み、トンネル同士の離隔が極めて小さい極近接工事が増加しているが、こ
れまでは、新設するシールドトンネルと極近接する既設トンネルの影響解析法が明確化されていなかった。そこで、実験により構造物間の相互影響を把握するとともに、既往の理論を発展させることにより、地盤を相互影響ばねでモデル化しつつ、構造物には3次元モデルを用いることで簡便かつ精緻に行うことのできる新たな解析法を提案した。本発表では、提案手法の概要や、試設計結果について報告する。

発表者
構造物技術研究部 トンネル研究室 主任研究員  仲山 貴司

16:40~17:00
シールドトンネルの耐震設計における継手部の回転特性の設定方法

 シールドトンネルのセグメント継手には、施工性のよい軸方向挿入型継手の採用例が増加している。軸方向挿入型継手の回転特性は、ボルト継手用の設定手法を準用して設定されており、設計条件によっては応答値が過大になり特殊で高価なセグメントを選択せざる得ないことがあった。そこで、適切な応答値の算定により一般的なRCセグメントの適用を拡大するため、継手曲げ試験とFEMを用いた回転特性の設定法を提案した。本発表では、提案法の概要について説明するとともに、シールドトンネルの耐震設計に適用した例について報告する。

発表者
構造物技術研究部 トンネル研究室 副主任研究員  木下 果穂


関係研究部

  構造物技術研究部

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