第37回 鉄道総研講演会

鉄道の持続的発展を目指して-省人化と自動運転-

日 時:2024年10月18日(金)13:00〜17:20
場 所:有楽町朝日ホール(有楽町マリオン11F)
主 催:公益財団法人鉄道総合技術研究所

概要

 日本の生産年齢人口は減少を続けており、鉄道分野においても要員の確保が困難になりつつあり、今後も鉄道がさらなる持続的な発展を続けていくためには、省人化に関する技術が重要な役割を果たすと考えられます。
 そこで、本講演会においては、鉄道の運行を支える車両や地上設備のメンテナンス・建設における省人化、列車の自動運転等に関する研究開発の取り組みについて紹介するとともに、省人化に対応した維持管理体系や自動運転のあるべき姿、それを踏まえた技術基準のあり方、社会実装に向けての鉄道事業者全体での技術連携の重要性等、今後の方向性について展望します。

プログラムと講演概要

13:00~13:10 開会の挨拶

                                 会長  向殿 政男


13:10~14:10 特別講演
 人にやさしい軌道交通自動化技術
 ~安全で快適な旅の提供と働き手が安心できる職場を目指して~

           東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻 教授  古関 隆章 様

 人口減少・高齢社会において、自動化をめざす賢いDX推進が多様な分野の研究開発の重点項目となっている。旅客輸送の主たる役割は人(旅客)に安全かつ快適な移動サービスを提供することであり、貨物輸送でも貨物そのものが自律的に移動するわけではないため、これらの輸送を支えるためには人の役割が不可欠である。
 公共交通の自動化は無人化ではなく、経済合理性を追求する中で、働き手が長く安心して働ける「人中心の省力化」を目指すものである。本講演では、無人化も視野においた国際的DXの趨勢のもと、日本流の省力化がどうあるべきか、近年の自動運転実用化等を具体例に展望する。


14:10~14:50 基調講演
 鉄道の持続的発展を目指して-省人化と自動運転-

                                理事  曽我部 正道

 日本の生産年齢人口は減少を続けており、労働力不足などに伴う社会・経済の諸課題が深刻化していく傾向にある中、今後も鉄道がさらなる持続的な発展を続け、社会に貢献していくためには、省人化に関する技術が重要な役割を果たす。
 本講演では、鉄道総研が取り組むべき技術開発の一部として、メンテナンスの省人化や自動運転の高度化に関する研究の内容と、先端技術の社会実装に向けての支援やデータ連携を促進するための基盤づくりなど、鉄道総研が果たすべき役割について展望する。


14:50~15:10 休 憩


15:10~15:35 講演
 車両・電気分野の省人化技術

                           車両技術研究部長  瀧上 唯夫

 車両や電気設備に関わる業務の省人化に向けて、画像やAI等を活用した車両や架線の検査・診断技術や、台車部品の非破壊検査技術などの研究開発事例について紹介する。また、今後の取り組みにおいて、異常検知や診断にAIの活用をめざす際の課題や、研究開発の方向性について述べる。


15:35~16:00 講演
 軌道分野の省人化技術

                           軌道技術研究部長  桃谷 尚嗣

 軌道における敷設やメンテナンスの省人化に向けて、施工の効率化・プロセスの簡略化や、画像・AIを活用した軌道部材の検査・診断技術などの取り組みについて紹介する。また、今後の取り組みの方向性として、劣化予測によるRBMの実現、統合プラットフォームの構築による情報の利活用、検査修繕における自動化といった軌道メンテナンスのあるべき姿について述べる。


16:00~16:10 休 憩


16:10~16:35 講演
 構造物分野の省人化技術

                          構造物技術研究部長  田所 敏弥

 鉄道構造物の建設やメンテナンスの省人化に向けて、性能設計に基づいた設計や施工の省人化技術や画像等を用いた定期検査等のメンテナンスの省人化技術を紹介する。また、今後の取り組みの方向性として、各種検査の自動化や性能予測に基づいた検査周期延伸について、技術基準の体系化を踏まえたメンテナンスのあるべき姿について述べる。


16:35~17:00 講演
 自動運転の高度化

                           信号技術研究部長  新井 英樹

 列車運行の省人化・低コスト化に向けて、車上での自動的な運行判断などの研究開発の取り組みを紹介する。また、一般線区での自動運転の普及に向け、低コストなGOA2.5自動運転システムの開発や、既存の鉄道システムを活用した自動運転システムの基盤となる前方監視技術といった自動運転の高度化の方向性について述べる。


17:00~17:10 提言
 省人化・自動運転技術の社会実装に向けて

                           研究開発推進部長  室野 剛隆

 建設・メンテナンスの省人化や自動運転の社会実装を促進し、持続可能な鉄道事業を目指すためには、技術開発の推進と、それを社会で活用できる仕組みが必要である。前者については各講演でその方向性が示された。後者については、鉄道事業者などの組織の枠組みを超えた連携や協力が重要であり、鉄道総研の役割を明らかにするとともに、仕組みのあり方について提言する。


17:10~17:20 閉会の挨拶

                                理事長  渡辺 郁夫

司会  専務理事  芦谷 公稔